トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう

トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう

トレイルランと登山は、山を「走る」のか「歩く」のかという違いだけで、似たようなものだと思いがちですが、実はまったく異なるスポーツです。どちらも自然の中で行うアクティビティですが、コースや速度、必要な技術や装備、そしてリスクなどの点で大きな違いがあります。

そこでこの記事では、トレイルランと登山の違いについて解説します。

トレイルランとは?

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トレイルランの定義と特徴

トレイルランとは、山や森林、草原、海岸など自然の中を走るスポーツです。舗装された平坦な道を走るのとは違い、石や岩、木の根、階段などがある不安定で高低差のある道(トレイル)を走ります。

アメリカやヨーロッパで以前から人気のあるスポーツで、日本ではランニングや登山の人気が相まって2010年ごろから愛好者が増えました。

トレイルランのコース

トレイルランでは自然の中を走るため、コースが複雑です。急な登り坂や下り坂、石や木の根のある登山道はもちろん、コースによっては沢を渡ったり岩場を越えたりする場合もあります。一般的なランニングとは違い、走るフィールドによって見える景色が変化に富み、また季節ごとに違った自然が楽しめます。

守るべきルールとマナー

トレイルランを行うにあたっては、舗装路を走るのとは異なるルールやマナーがあります。例えば自然環境を守るため、コースから外れてはいけません。張られたロープの内側を走り、草木を踏みつけたりしないようにしましょう。また、ゴミを捨てることももちろん禁止されています。出たゴミはすべて持ち帰りましょう。

その他、狭い登山道で他のトレイルランナーや登山者とすれ違う場合は、登りの人が優先されます。下りの場合は、足を止めて脇によけ、道を譲りましょう。また、もし相手が譲ってくれたとしても、走りながらの追い越し、すれ違いは危険なので、必ず徒歩で行い、譲ってくれた人に挨拶を忘れないようにしましょう。

必要な装備と準備

トレイルランは登山よりも軽装備にする必要があります。ここからは、トレイルランに特徴的な基本の装備を5つ紹介します。

シューズ

トレイルランには専用のシューズが必要です。トレイルラン用のシューズはローカットで、見た目はランニング用のシューズと似ていますが、ソールに違いがあります。トレイルラン用のシューズはソールのグリップ力が高いため、岩場やぬかるみなど足場の悪い場所でも滑りにくく、安定した走行ができるのが特徴です。

バックパック

バックパックの容量は、10〜12Lくらいのものが汎用性が高く、初心者におすすめ。トレイルラン用のバックパックは背中の上部に重心がくるようになっており、ベストのようなフィット感があるのが特徴です。

ウェア

トレイルランには吸汗性の高いウェアが適しています。さらに、吸い取った汗を外へ逃がす速乾性のあるものが良いでしょう。また、雨や寒さなどの天候に対応できる防水性や防風性の高いジャケットも必須アイテムです。容量の小さいバックパックに入れるため、軽量で小さく折りたためるものが、より良いです。

ハイドレーションシステム

ハイドレーションとは、ソフトバッグをザックの荷室に収納し、長く伸びたチューブから給水するアイテムで、走りながら水を飲むことができます。

ザックの胸あたりにある前ポケットに収納するボトルタイプもありますが、ハイドレーションは背中に重みがあるため、重心がより安定します。また、ボトルタイプより容量も大きく持ち運べる水分量が多いので、初心者におすすめです。

行動食

エネルギージェルは糖分が豊富で消化しやすく、手軽にすばやくエネルギー補給ができるため、行動食に最適です。その他、糖質が高く、すぐにエネルギー源となるドライフルーツやようかん、高カロリーのグラノーラバー、また食べたものをエネルギーに変換するのを助けるナッツなどは、軽量で食べやすく、持ち運びもしやすいのでおすすめです。

トレイルランでは発汗によって体内の塩分も失われやすいため、糖分に加えて塩分の補給も欠かせません。その点、塩で炒ったナッツなら塩分も同時に摂ることができます。また、効率よく塩分補給ができる塩分タブレットも良いでしょう。同じ味のものばかりでは飽きてしまうので、甘いものや塩味のもの、また食感の異なるものなどを何種類か携行するのがポイントです。

トレイルランの魅力

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自然と一体化できる

トレイルランの魅力は、自然と一体化したような気持ちになれることです。街中のアスファルトの道路では味わえない、山や森の緑、川のせせらぎなど自然の美しさを楽しめます。さらに、自然は季節や気候条件、時間帯によっても表情が変わるので飽きが来ません。

刻々と景色の変わる自然の中の道を、ただ走ることに集中していると、頭がスッキリし、ストレス解消やリフレッシュにもつながるでしょう。

ランニングよりも運動効果が高い

不規則な地形やアップダウンのあるコースを走ることで、足腰の筋力が強化されるほか、バランス感覚や反応力も同時に養われます。また、トレイルは地面が柔らかいため、アスファルトの道路でのランニングと比べて骨や関節の痛みのリスクが減らせるのも嬉しいポイントです。

レースへの出場を目標にできる

トレイルランは全国で多くのレースが開催され、世界的に有名なレースもあります。走るモチベーションを上げるために、レースへの出場や入賞を目標にするのもおすすめです。また、トレイルランのレースは参加者同士のコミュニケーションが活発なので、トレイルランを一緒に楽しむ仲間を作ることもできます。

トレイルランと登山の違い

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コースの違い

一般的に、トレイルランは通常のハイキングコースや登山コースを利用します。登山では整備されていない登山道を歩くこともありますが、トレイルランでは、きれいに整備された登山道で、急勾配が比較的少なく走りやすい道が多いです。またスピードが速いため、距離の長いコースが好まれます。

走る/歩く速度の違い

当然のことながら、トレイルランのほうがスピードが速く、短時間でコースを駆け抜けます。そのため、登山では基本的に山頂までを往復しますが、トレイルランの場合は登山口から山頂までを1日何往復もする人もいます。

ただし、トレイルランは急な上り坂や足元が悪い場所では走る速度を緩めたり、歩いたりすることもあり、ペースは一定ではありません。

必要な技術の違い

トレイルランは、基本的には走ることができれば誰でも始められますが、登りや下りの際には、体重移動やステップの踏み方など、少しのテクニックが必要です。例えば、上りでは手で太ももを上から押しつけながら登る「パワーウォーク」や、下りでは膝を曲げ、腕や上半身でバランスを取るようにしてリズムよく走るテクニックなどがあります。

一方、登山では登る山や季節によってはロープワークや岩場でのクライミング技術など、専門的な技術が必要になる場合があります。

装備の違い

すでに紹介したとおり、トレイルランで必要な装備は、ローカットのランニングシューズ、ランニングウェア、ハイドレーションなど、走るために最低限の軽量な装備がほとんどです。

反対に、登山では登山靴やアイゼン、ピッケル、ヘルメットなど、専用の装備が必要になることもあり、荷物は多くなりやすいです。またトレイルランは基本的に日帰りですが、登山の場合は山で何泊もする場合があるため、着替えや食料など必要な荷物も多くなります。

リスクの違い

登山には、高山病や落石、雪崩などの自然災害に加え、高所からの転落や事故のリスクがあります。一方、トレイルランにおいては、足を捻ったり、転倒したりなど、ケガのリスクがあります。また、どちらにも共通して、天候の急変や動物に遭遇するリスクがあるため、周囲の状況を常に把握し、安全第一で行動することが大切です。

トレイルランと登山の違いを知ってもっと山を楽しもう

トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう

トレイルランと登山の違いを紹介しました。どちらも自然の中で体を動かすことができ、リフレッシュできるアウトドア・アクティビティです。トレイルランを始めてみたい場合、まずは初心者向けのコースで試してみることをおすすめします。

また、安全に楽しむためには、必要な装備の携行やトレイルでのルール、マナーを守ることが大切です。それさえクリアすれば、スタイルは人それぞれ。自分に合ったスタイルで山の魅力を存分に味わってくださいね。

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【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがたけ)です。人気の山とはいえ、「低山なのにけっこうキツい」「クサリ場があって初心者には危険」という感想も聞かれますが、実際にはどんな山なのでしょうか?

この記事では初心者でも楽しめる伊豆ヶ岳のルートや難易度について紹介します。また、伊豆ヶ岳から足腰の神様「子ノ権現(ねのごんげん)」を目指す縦走コースを実際に歩いてみたので、ぜひ参考にしてください。

伊豆ヶ岳とは

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

伊豆ヶ岳は埼玉県飯能市にある標高851mの山。駅からのアクセスが良く、低山ながら登りごたえのあるコースが魅力で、奥武蔵の中でも一二を争う人気の山です。1年を通して登ることができ、山頂や尾根道からは美しい展望が開けています。

また、縦走ルート上には足腰守護の神仏である「子ノ権現天龍寺」があり、登山者に人気のスポットとなっています。伊豆ヶ岳の名前の由来は諸説あり、案内板によると、

  • 突峰状の山容を表すアイヌ語の「イズ」からついたという説
  • 山頂から伊豆が見えるからという「伊豆ヶ岳」説
  • 柚子の木が多く生えていたからという「柚ヶ岳」説
  • 山麓で温泉が湧き出ていたからという「湯津ヶ岳」説

など、色々な説があるようです。

伊豆ヶ岳の場所とアクセス

伊豆ヶ岳は埼玉県飯能市に位置し、登山の起点となるのは西武秩父線の「正丸(しょうまる)駅」です。池袋駅から西武池袋線直通で、正丸駅までの所要時間は1時間30分ほど。

車でアクセスする場合は、正丸駅の隣のコインパーキングが便利です。駐車できる台数は20台ほどなので、早めに到着することをおすすめします。

伊豆ヶ岳の難易度

伊豆ヶ岳は、正丸駅から山頂への往復であれば初心者でも問題なく登れる山です。ただし縦走コースになるとアップダウンの連続となるため体力が必要です。

危険箇所は山頂直下にある「男坂」。ここは岩の急斜面を登る長いクサリ場です。しかし落石の危険があるため現在はロープが張られ、実質的に通行禁止となっています。ほとんどの登山者はもう一つの「女坂」のほうを登るので危険はありません。

なお、伊豆ヶ岳から子ノ権現まではエスケープルートがないので、縦走コースを目指す場合は早めの出発を心がけましょう。

主な3つのコースを紹介します。

【初心者向け】正丸峠周回コース

コース
【正丸駅】→【正丸峠】→【小高山】→【五輪山】→【伊豆ヶ岳】→【五輪山】→【正丸駅】
【コースタイム】
3時間50分
【累積高低差】
約598m
【総距離】
約7.5km

【健脚者向け】伊豆ヶ岳~子ノ権現~西吾野駅コース

コース
【正丸駅】→【五輪山】→【伊豆ヶ岳】→【古御岳(こみたけ)】→【高畑山】→【天目指峠(あまめざすとうげ)】→【 子ノ権現】→【小床(こいか)集落】→【西吾野(にしあがの)駅】
【コースタイム】
6時間
【累積高低差】
約1090m
【総距離】
約11.0km

【健脚者向け】正丸峠~伊豆ヶ岳~吾野駅ロングコース

コース
【正丸駅】→【正丸峠】→【小高山】→【五輪山】→【伊豆ヶ岳】→【古御岳】→【高畑山】→【天目指峠】→【 子ノ権現】→【浅見茶屋】→【吾野駅】
【コースタイム】
7時間
【累積高低差】
約1100m
【総距離】
約13.5km

伊豆ヶ岳~子ノ権現(正丸駅~西吾野駅)縦走コースを歩く

伊豆ヶ岳から子ノ権現を目指す縦走コース(紹介したコースのうち2番目)を実際に歩きました。

正丸駅~馬頭観音堂~伊豆ヶ岳

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

スタートとなる西武秩父線正丸駅には、改札を出て左手にトイレがあります。この先、子ノ権現までトイレがないのでここで済ませておきましょう。また、正丸駅の周辺にはコンビニエンスストアがないので、必要な買い物は到着前に済ませておいてください。

伊豆ヶ岳の登山口へは、駅の右手の階段を下り20分ほど車道を歩きます。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

車道がカーブしているところに登山口(馬頭観音堂)があります。ここからしばらくは沢沿いの登山道です。傾斜がゆるく歩きやすい道が続きます。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

実谷のふたまたの標識は見逃しやすいので注意しましょう。右へ進む「名栗げんきプラザ」はかめ岩・大蔵山方面で、伊豆ヶ岳までは遠回りになります。まっすぐ行くと伊豆ヶ岳へショートカットできますが、急登が続く道です。今回はまっすぐ進み、五輪山へと向かいました。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

雑木林の中の荒れた急坂を登り、一気に高度を上げると開けた場所に出ます。縦走路の一つ目のピーク、五輪山(標高770m)に到着です。休憩ベンチが4つほどありますが、展望はありません。

五輪山から下るとすぐに、伊豆ヶ岳山頂へ向かう「男坂」「女坂」の分岐があります。正面にそびえる岩の壁が男坂で、右側からゆるやかに登る道が女坂です。男坂は落石が多く転落事故も起こっていることから基本的に通行禁止です。女坂はクサリ場など危険な箇所はなく、安全に伊豆ヶ岳山頂へ登れます。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

登山開始から1時間40分ほどで伊豆ヶ岳(標高851m)の山頂に到着しました。山頂は広く、腰掛けて休憩できるような岩があります。西側の眺望が開けていて、武甲山や武川岳を望めます。晴れていてもさすがに伊豆方面までは見えませんね。

古御岳~高畑山

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

伊豆ヶ岳から下り、登り返して20分ほどで古御岳(標高830m)に到着しました。ここには小さな屋根付きの休憩所があります。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

古御岳からさらに30分ほどで高畑山(標高695m)に到着です。この辺りからはアップダウンがあまりない平坦な道が多くなります。杉林からも光が差し、さわやかな雰囲気の中を進みます。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

途中で巨大な送電線鉄塔が現れました。この辺りが登山ルートの中間地点。急登がないため、キツくない分単調に感じるかもしれませんが、時間を確認しながら着実に進みましょう。

天目指峠~巨大な白い手~子ノ権現

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

しばらく林道と並行した登山道を進むと車道に出ます。子ノ権現方面へふたたび山に入ると「天目指峠」の看板があります。

天目指峠という名前は、「天目(アマメ)」=豆柿(親指大の小さな柿)が豊富に採れること、そして「指(さす)」(焼畑農業のこと)を合わせて名づけられたとのことです。子ノ権現から近い場所なので仏教に関連した名前なのかと思っていましたが、まったく違うことに驚きました。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

子ノ権現に到着する手前の山中に面白いものがあるので、ぜひ立ち寄ってみてください。巨大な白い手のモニュメントです。これは彫刻家の西雅秋氏が制作したもので、子ノ権現天龍寺に寄贈されたものだそうです。

Googleマップからも確認できるほど巨大で不思議な見た目をしているため、過去にテレビで取り上げられたこともあります。実際に見ると人の身長よりも大きく、指に腰掛けたり手のひらに乗ったりできますよ。子ノ権現へお参りする際にぜひ訪れたい珍スポットです。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

子ノ権現は天台宗の山寺で、正式には大鱗山雲洞院天龍寺といい、武蔵野観音第三十二番札所です。標高640mの地点にあり、足腰の神として知られているため登山者に人気があります。いつまでも足腰が丈夫でいられるように、私もお参りしました。

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

境内には1足2トンともいわれる、日本一の鉄の大わらじが置かれています。大きな赤い仁王像、天然記念物の二本杉など、その他の見どころも多数。社務所では登山リュックの形をした「登山守」(500円)をいただくこともできます。

小床集落~西吾野駅

【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山

子ノ権現から車道を進むとすぐに吾野駅への分岐があり、少し進んだところに西吾野駅への分岐があるので、道を間違えないように注意しましょう。西吾野方面へ薄暗い杉林を下ると、民家が点在する「小床集落」です。そこからは車道を歩き、ゴールの西吾野駅に到着します。

伊豆ヶ岳~子ノ権現(正丸駅~西吾野駅)縦走コースの概要

【出発地】西武秩父線正丸駅
【標高差】
607m
【歩行距離】
11.3km
【歩行時間】
6時間
【トイレ】
正丸駅、子ノ権現、西吾野駅
【備考】
子ノ権現に自動販売機あり
【コース】
正丸駅→五輪山→伊豆ヶ岳→古御岳→高畑山→天目指峠→ 子ノ権現→小床集落→西吾野駅

伊豆ヶ岳まとめ

伊豆ヶ岳は知名度が高く、気軽に登れる山というイメージでしたが、伊豆ヶ岳までの急登と子ノ権現までの細かいアップダウンのある縦走路に、予想以上に体力を削られました。

今回歩いたコースのようにいくつも山をつないだ低山縦走コースでは、より奥深い山行が楽しめてレベルアップにもつながります。初心者からベテランまで楽しめる伊豆ヶ岳登山をぜひ楽しんでみてくださいね。

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【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

皆野アルプスは破風山をはじめとしたいくつかのピークをつなぐ低山縦走コースです。最高峰の大前山でも653mと低山ばかりのコースですが、岩稜のクサリ場やヤセ尾根などアルプスさながらのスリルも味わえます。

この記事では、破風山(皆野アルプス)のルートや難易度、アクセス、実際に歩いてみた感想を紹介します。

破風山(皆野アルプス)とは

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

破風山(はっぷさん)は標高626mの山です。標高が低くさまざまなコースが選べるため、初心者でも季節を問わず登山が楽しめます。中でも前原山・破風山・大前山・天狗山を結ぶコースは「皆野(みなの)アルプス」と呼ばれ、景色を楽しみながら縦走できて人気です。

破風山の頂上をはじめ、ルート上の各所で眺望が楽しめるのも魅力で、皆野町や秩父市の街並みの向こうに武甲山や美の山、宝登山(ほどさん)などが望めます。また、破風山は江戸時代末期~明治時代初期に定められたとされる「秩父八景」の一つにも選ばれており、昔から長く愛され続けている秩父地方の名所です。

このように、破風山は低山でありながら、景色やバラエティに富んだコースが魅力の山です。

破風山の場所とアクセス

破風山の場所は秩父郡皆野町と秩父市との境です。主要な登山口だけでも8つあり、距離やレベルに合わせて自由にルート設定ができます。

この記事で紹介する皆野アルプスのコースは、秩父鉄道皆野駅をスタートし、大渕登山口から破風山を目指します。その後、「秩父華厳前」バス停へ下山し、皆野町営バスで皆野駅まで戻るルートをたどります。

都内からスタート地点の皆野駅までの所要時間は、電車で2時間10〜20分ほど。マイカー利用の場合は、皆野駅周辺の有料駐車場、もしくは秩父華厳の滝の無料駐車場を利用すると便利です。その他、大渕登山口の手前の県道44号線沿いの「破風山登山口駐車場」も利用できます。

破風山の難易度

破風山の難易度は初級レベルです。札立峠から天狗山のルートにはクサリ場やヤセ尾根がありますが、それほど高い技術は必要なく、注意しながら進めば子どもでも問題なく通過できるでしょう。分岐にも案内看板が立っているので、道迷いの心配もありません。

ただし、今回歩いてみたところ、道をふさぐような倒木が放置されている箇所がいくつかあったので注意が必要です。

皆野アルプス(前原山・破風山・大前山・天狗山)を歩く

皆野駅から前原山・破風山・大前山・天狗山を縦走する皆野アルプスのコースを日帰りで歩いてきました。

皆野駅~大渕登山口~前原山

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

秩父鉄道の皆野駅がスタート地点です。皆野駅のトイレは改札内にあります。皆野駅から徒歩2分の場所にあるコンビニエンスストアで食料や水を購入できます。秩父華厳の滝方面から登る場合は、駅前にある町営バス発着所からバスに乗車しましょう。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

大渕登山口までの所要時間は30分ほど。皆野駅から県道43号線を進み、皆野橋を渡ります。県道脇に入り、民家の横を通り抜けたところが大渕登山口です。

登山道に入ると、いきなりの急登。一つ目のピークである前原山までは30分ほどで到着するので、体が温まるまでは無理せずゆっくり登っていきましょう。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

一つ目のピーク、「前原山」(標高347m)に到着です。ここからは眺望がなく、まだ麓の道を走る車の音も聞こえます。ここから先は前原岩稜と呼ばれる尾根道を進み、だんだん眺望が開けてきます。

三又ピーク~男体拝 ~猿岩

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

前原岩稜を越えるとしばらく樹林帯の登りが続きます。ロープが張ってある箇所が一部ありますが、ロープを使わなくても問題なく通過できるでしょう。

三又ピークを越え、登山口から2時間ほどで「男体拝(なんたいおがみ)」という展望が開けた場所に出ます。その名の通り、遠くに日光の男体山を望めるビュースポットです。ここから先の道は「関東ふれあいの道」となります。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

男体拝からさらに50分ほど歩くと、猿岩という奇岩が現れます。登山道の脇にいきなり巨岩があるので目立ちますが、形が猿に似ているかどうかはよくわかりませんでした。

猿岩からさらに進むと、破風山の山頂直下に屋根付きの休憩場所があります。20人くらいは座れそうな、広くて立派な休憩所です。破風山の山頂はあまりスペースがなくベンチもないので、食事や休憩を取るならこの休憩所を利用するのがおすすめです。

破風山~札立峠~如金峰

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

登山開始から2時間30分、「破風山」(標高626m)の山頂に到着しました。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

山頂からは南側の展望が開けていて、秩父盆地や武甲山が一望できます。低山の連なりのなかで、武甲山だけはひと目見てわかるほどの存在感がありました。

この日は平日だったためか破風山山頂まで誰ともすれ違うことがなく、山頂の景色も一人占めできて得した気分です。山頂でゆっくりと休憩を取ったら次のピークへ向けて出発します。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

破風山山頂から一旦下ったところに「札立峠(ふだたてとうげ)」があります。この峠は 秩父札所三十四ヶ所観音霊場の巡礼道で、33番菊水寺から34番水潜寺へ向かう途中の場所です。

昔、大干ばつのときに、旅の僧からの「雨を祈らば観音を信ぜよ」という教えで「樹甘露法雨(じゅかんろほうう)」の札を立てたことから名づけられたと伝わっています。

札立峠には分岐があります。一つは、南は菊水寺・頼母沢(たのぶさわ)方面へ向かい、北は水潜寺方面へ向かう「関東ふれあいの道」の一部でもある「江戸巡礼古道」で、もう一つは皆野アルプスのコースです。

皆野アルプスのルートは「如金峰(にょっきんぼう)コース」となるので、案内板を見て間違わないよう注意して進みましょう。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

札立峠から登り返すと、また奇岩があります。この岩が如金峰コースの名前の由来となっている「如金峰」です。ここに祀られている「如金さま」は疣(いぼ)取りの神様と伝えられています。

ここから先の道はクサリ場や左右が切れ落ちたヤセ尾根が続くので、ストックを使っていたらこの辺りでしまっておくといいでしょう。

大前山~天狗山~「秩父華厳前」バス停

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

クサリ場とヤセ尾根を通過すると「武蔵展望台」があります。北側と南側が開けていて、群馬方面が見渡せます。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

武蔵展望台からさらに10分くらいで皆野アルプスの最高峰「大前山」(標高653m)に到着です。破風山よりも標高は高いですが、展望はあまりありません。

大前山を過ぎたところに皆野アルプス最大の難所のクサリ場があります。垂直に近い岩場を下るのでかなり高度を感じます。焦らず三点支持を守って慎重に下りましょう。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

クサリ場を越えたら間もなく最後のピーク「天狗山」(標高655m)に到着します。こちらも眺望はなく祠があるのみで、頂上らしさはありません。天狗山の手前に巻き道があるので、ピークをショートカットすることも可能です。

天狗山からはひたすら下山するのみ。樹林帯を進むと「大前集落」に出ます。民家のある舗装路からふたたび登山道へ入って進むと「華厳の滝登山口」があります。

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

華厳の滝登山口を左折したところに「秩父華厳前」バス停があります。ここから皆野町営バスで皆野駅まで戻れます。皆野駅までの所要時間は27分です。

秩父華厳の滝

【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)

せっかくなので、バスを待つ間に「秩父華厳前」バス停からすぐのところにある「秩父華厳の滝」にも寄ってみました。バス停から滝までは徒歩5分ほどです。日光の華厳の滝に似ていることから名づけられたそうで、落差約12mの崖を流れ落ちる迫力のある滝です。

さらに坂を登って滝の上の道に出ると、かなり個性的な表情の不動明王のモニュメントもあるので、時間があればぜび寄ってみてほしいスポットです。

皆野アルプス(破風山・前原山・大前山・天狗山)の概要

【出発地】
秩父鉄道皆野駅
【標高差】
459m
【歩行距離】
8km
【歩行時間】
4時間15分
【トイレ】
皆野駅(改札内)、秩父華厳の滝(観光トイレ)、皆野駅バス発着所(まちなか観光トイレ)
【コース】
皆野駅 → 大渕登山口 → 前原山 → 三又ピーク → 男体拝 → 猿岩 → 破風山 → 札立峠 → 如金峰 → 大前山 → 天狗山 → 「秩父華厳前」バス停

破風山(皆野アルプス)まとめ

皆野アルプスは、アルプスの名に恥じない、魅力あふれるルートだと感じました。破風山からの素晴らしい展望はもちろん、岩場や尾根歩き、ちょっとスリリングなクサリ場など、まさにアルプスをコンパクトにしたような雰囲気が感じられます。電車の駅からアクセスできる気軽なアルプスをぜひ体験してみてくださいね。

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【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

関東屈指の人気の山域、丹沢の東側に位置する大山は、ピラミダルな美しい山容が特徴の山です。古くから山岳信仰の対象として人気の山であり、現在はケーブルカーで手軽にアクセスできることから、参拝者や観光客で1年中にぎわっています。

この記事では、丹沢・大山のルートや難易度、アクセス、紅葉ポイント、実際に歩いてみた感想を紹介します。

丹沢・大山(おおやま)とは

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

大山(標高1252m)は、周囲に同じような高さの山がない独立峰で、麓から見てすぐにわかるほどきれいな三角形をした山です。

丹沢の山々は急勾配が多いのが特徴ですが、大山は中腹の大山阿夫利神社までケーブルカーで行くことができ、登山道も歩きやすいよう整備されているので、登山初心者や子ども連れの登山に向いています。

一年中多くの参拝客が訪れますが、10月下旬から11月上旬は紅葉が見頃を迎えるベストシーズンで特ににぎわい、期間中は夜間にライトアップもおこなわれます。

丹沢・大山の場所とアクセス

大山は神奈川県伊勢原市にあります。都心からは小田急線を使って簡単にアクセス可能です。

大山の主な登山口である大山ケーブル駅へは、小田急線伊勢原駅から神奈川中央交通・大山ケーブル行きのバスで25分、バス停からさらに徒歩15分で到着します。新宿駅からの所要時間はおよそ2時間です。

マイカー利用の場合は、新東名高速道路の伊勢原大山ICより大山ケーブルバス停近くの市営大山第1・2駐車場まで10分程度です。

丹沢・大山の難易度

往復にケーブルカーを利用する阿夫利神社コースであれば、難易度は初級レベルです。ゆっくり登っても往復4時間以内で下山できるので、中腹やこま参道で観光や食事を楽しむこともできます。

登山道はしっかり整備されていて、ところどころに石の階段や木道があります。標識や丁目石が置かれ、道迷いの心配もありません。

丹沢・大山の主要コース

阿夫利神社コース

ケーブルカーを利用して中腹の大山阿夫利神社へ。そこから夫婦杉、富士見台を経て大山山頂(阿夫利神社本社)をピストンするコースです。標準コースタイムは3時間30分と時間に余裕をもって歩けます。

阿夫利神社~見晴台周回コース

登りは阿夫利神社コースと同じ。下山は見晴台方面へ下り、大山阿夫利神社へ戻る周回コースです。見晴台にはベンチとテーブルがあり、昼休憩にぴったりの場所です。標準コースタイムは往復ケーブルカー利用で3時間30分です。

ヤビツ峠コース

ヤビツ峠レストハウスからイタツミ尾根を登るピストンコース。山頂までの標準コースタイムは1時間20分と短く、スタート地点からの標高差も一番小さいコースです。

このコースは眺望こそ少ないですが、自然の魅力を感じながら登れます。ヤビツ峠コースはバスの本数は少なめですが、喧騒を避けて静かに歩きたい方におすすめです。

阿夫利神社~見晴台周回コースを歩く

紅葉が見頃の11月中旬に、阿夫利神社~見晴台周回コースを実際に歩いて紅葉スポットを巡ってきました。

大山ケーブルバス停~こま参道~大山ケーブル駅

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

小田急線伊勢原駅からバス停「大山ケーブル」まで。そこから昔なつかしい雰囲気のおみやげ店や飲食店が並ぶ「こま参道」を歩いて大山ケーブル駅まで向かいます。こま参道の階段は362段。ここを上るだけで登山前のいいウォーミングアップになりますよ。

今回は大山寺の紅葉を見たいので、ケーブルカーを利用せずに駅の左側にある登山道へと進みます。

女坂~大山寺

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

ケーブルカーを利用しない場合の登山道は、女坂と男坂の2ルートの道があります。女坂は比較的ゆるやかで途中に大山寺に立ち寄ることができるルートで、男坂はきつい坂がひたすら続く健脚向けルートです。今回は大山寺へ向かう女坂を選択しました。

女坂には「女坂の七不思議」と呼ばれる見どころが設けられているので、七不思議の看板を見つけながら登るのも楽しいですよ。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

女坂を20分ほど登ると、真っ赤に染まった紅葉スポットが現れました!紅葉を通り抜けた太陽の光が石階段を赤く染め、その美しさに思わず足を止めてしまいます。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

大山寺へ続く階段の紅葉も見事な色づきで、まるで紅葉のトンネルをくぐっているかのような、幻想的な雰囲気です。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

大山寺(おおやまでら)は山岳宗教の社寺で、山号を雨降山(あふりさん、あぶりさん)といいます。弘法大師が開祖ではなく、住職を務めたと伝わる珍しいお寺です。

西暦755年の開山以来、幾度かの大火にみまわれ消失したり、弾圧により破壊されたりしましたが、そのたびに再建され明治時代に現在の場所に移ったとのこと。奥深い山の中にある、荘厳な雰囲気を感じるお寺でした。

阿夫利神社下社~大山山頂

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

大山寺から眼下を走るケーブルカーを眺めながら40分ほど進むと、大山阿夫利神社下社に到着です。

大山は信仰の歴史が古く、奈良時代から信仰されていたといわれています。江戸時代になると講(町内会や同業者組合のようなもの)を作って集団で大山詣りツアーを行うのが人気となり、信仰と行楽を兼ね備えた庶民の観光スポットとしてもにぎわいました。

ここから、山頂までさらに登りますが、その前に「大山名水」をくむのがおすすめ!社務所の脇の小さな入り口から中へ入ると、龍のモニュメントの口からおいしい湧き水が出ていますよ。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

阿夫利神社下社から表参道を出発すると、いきなり長い階段上りが始まります。しばらく急な階段が続くので、ここで息が上がらないよう、なるべくゆっくり上るのがポイントです。

ここからは「〇丁目」と書かれた丁目石が設置されており、山頂が28丁目となります。目安にしながら進みましょう。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

道中には、8丁目に「夫婦杉」という樹齢5〜600年の巨木や、15丁目に「天狗鼻突岩」という穴の開いた岩など、いくつか見どころがあるので、休憩もかねて楽しみながら進みましょう。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

20丁目にあるのが「富士見台」。晴れていれば遠くに富士山が望めるスポットですが、この日は残念ながら雲がかかっていました。

ここからさらに進み、25丁目にはヤビツ峠方面との合流地点があります。ベンチのある箇所は少ないので、見つけたら無理せず、休憩をとりながらペースを守って登りましょう。

大山山頂~見晴台~二重の滝~大山ケーブル駅

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

鳥居が見えたら山頂はすぐそこ。標高1252mの大山阿夫利神社本社に到着しました。山頂からは伊勢原市内、横浜や東京方面が見渡せます。晴れていれば東京スカイツリーや横浜のランドマークタワーも見られますよ。

山頂付近には休憩ベンチやテーブルがたくさんあるので、ゆっくり休憩できます。見晴台方面へ少し下りたところにも休憩できる広場がありますので、混雑時にはそちらに行ってみるといいでしょう。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

下山は見晴台方面へ。登ってきた表参道と比べるとゆるやかで、木道や木の階段が整備されているので歩きやすい道です。

雷ノ峰(いかづちのみね)尾根をゆるやかに下ると見晴台という広場に出ます。ここは東側・北側の展望が開ける休憩スポット。大山は独立峰なので、それぞれのスポットから全方位の景色を見ることができるのも魅力です。

【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山

見晴台から平坦な道をさらに20分ほど下り、阿夫利神社下社へ戻ってきました。下山はケーブルカーを使い、6分でケーブルカー駅へ。そこからこま参道を下りてバス停まで10分ほどです。

阿夫利神社~見晴台周回コースの概要

【出発地】
大山ケーブル(バス停)
【標高差】
947m
【歩行距離】
6.4km(下りケーブルカー利用)
【歩行時間】
4時間30分
【トイレ】
大山ケーブル(バス停)、大山ケーブル駅、大山寺、大山阿夫利神社下社、山頂(本社)
【備考】
大山阿夫利神社下社に飲食店あり
【コース】
大山ケーブル(バス停) → こま参道 → 大山ケーブル駅 → 女坂 → 大山寺 → 大山阿夫利神社下社 → 富士見台 → 大山山頂(大山阿夫利神社本社) → 見晴台 → ケーブル阿夫利神社駅

丹沢・大山まとめ

丹沢大山は、美しい山容を持つだけでなく、深い歴史があり人々の信仰を集めてきた人気の山です。都心からのアクセスが容易で、中腹までケーブルカーが利用でき、トイレや飲食店も豊富にあるため気軽に登山にチャレンジできます。

大山周辺はおみやげ店や温泉などもあり、登山のあとも楽しみがいっぱいのエリアなので、ぜひ訪れてみてくださいね。

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【棒ノ折山・登山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

奥武蔵エリアにある「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」は、渓流沿いのコースで沢歩き気分が楽しめる山です。ゴルジュ(両側から岸壁が迫った渓谷)の迫力ある景色が見られ、クサリ場や岩場のちょっとしたスリルも体験できます。棒ノ嶺(ぼうのれい)とも呼ばれます。

また棒ノ折山は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で話題となった平安時代末期から鎌倉時代初期の武将、畠山重忠ゆかりの山でもあります。この記事では、棒ノ折山のルートや難易度、アクセス、実際に歩いてみた感想を紹介します。

棒ノ折山(棒ノ嶺)とは

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

棒ノ折山は奥武蔵エリアにある標高969mの山。白谷沢の渓流沿いを登っていくコースが人気で、夏に登るとせせらぎの音が爽快です。白谷沢の核心部であるゴルジュでは、棒ノ折山ならではの迫力ある景色が楽しめます。

低山ではありますが、コースの途中で沢を横切ったり、クサリ場を登ったり、せまい岩場の急登があったりとスリル満点。これらの箇所を越えたときの達成感が味わえる山です。

棒ノ折山の名前の由来

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

「棒ノ折山」の名前の由来となったのは、鎌倉時代の武将「畠山重忠」。武勇のほまれ高く、その清廉潔白な人柄で「坂東武士の鑑」と称された人物です。2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、中川大志さんが畠山重忠役を演じています。

重忠は鎌倉に出向くときに棒ノ折山のふもとの道を通っていましたが、美男子で有名な重忠をひと目見ようと女性が集まってきたので、うっとうしく思い棒ノ折山へ登りました。すると、あまりの眺望の素晴らしさに力がみなぎり、思わず石棒を折ってしまったというエピソードが山の名前の由来となっています。

ただし、山の名前の由来には諸説あり、ただ単にこの山で愛用の石棒が折れたからという説もあります。奥多摩側の百軒茶屋から登る登山道沿いにある祠には、その折れた石棒の片割れといわれる石柱が祀られています。

棒ノ折山の場所とアクセス

棒ノ折山は東京都西多摩郡奥多摩町と埼玉県飯能市との境にあります。東京方面から白谷沢コースの登山口へアクセスするには、池袋駅から西武池袋線急行で飯能駅へ。そこから国際興業バスの「ノーラ名栗・さわらびの湯」経由「湯の沢」「名栗車庫」「名郷」行きのいずれかに乗り、「ノーラ名栗・さわらびの湯」で下車します。

所要時間は、池袋駅~飯能駅約50分、飯能駅〜ノーラ名栗・さわらびの湯約40分。

マイカーの場合は、さわらびの湯の登山者専用の大きな駐車場(第3駐車場)が無料で利用できます。また、白谷橋付近にも5〜10台程度の駐車場があります。

棒ノ折山の難易度

一番ポピュラーな白谷沢コース(沢登りコース)の難易度は初級程度です。登山道は丸太の階段が崩落している箇所はありますが、ほとんど整備されていて登りやすい道です。ただし沢沿いは濡れていて滑りやすい箇所や、急登でクサリ場になっている箇所があり、天候によっては難易度が上がるので、初心者であれば天候が荒れない日を選ぶのがいいでしょう。

また、11月下旬頃から4月頃までの雪が積もる期間の沢登りコースは凍結で滑りやすく危険なので、初心者にはおすすめできません。

白谷沢~滝ノ平尾根周回コースを歩く

沢登り気分を味わえる一番人気の白谷沢コースから棒ノ折山の山頂を目指し、滝ノ平尾根から出発地点へ下る周回コースを実際に歩いてきました。

ノーラ名栗・さわらびの湯バス停~有間ダム~白谷沢登山口

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

ノーラ名栗・さわらびの湯バス停で下車すると、アウトドア施設「ノーラ名栗」があります。この先にはトイレ施設がないので、ノーラ名栗の駐車場奥のトイレを利用しましょう。

白谷沢登山口へはバス停から25分ほどアスファルトの車道を歩きます。

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

バス停から10分ほど歩くと有間ダムに出ます。ここはバイクのツーリングに人気の場所で多くのバイクが停まっていました。

ダムの堤上を渡ったら右へ曲がり、白谷橋までダムを右に見ながら進みます。

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

白谷沢コースの登山口には登山届のポストがありました。ここから登山道が始まります。

白谷沢~岩茸石

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

杉林の中をゆるやかに登っていくと、いつしか沢沿いの道に。幾度か沢を横切る際、足元ばかりに注意しているとルートを見失いそうになるので、案内標識を確認しながら進みましょう。

せせらぎを聴きながらさらに進むと、両側から岩壁がのしかかってくるようなゴルジュが現れます。ここが白谷沢コースの一番の見どころ。一般山道とは思えないほどの迫力ある光景に圧倒されながら通過していきます。

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

岩場の急登にはクサリ場が設けられていますが、三点支持に気を付ければ難しくはありません。登山者が多い日だと渋滞するので、間隔を空けながらゆっくり進みましょう。

クサリ場を越えると間もなく「白孔雀の滝」が現れ、そこを過ぎると岩場が終わります。岩場がなくなるとしばらく丸太の階段が続く登りやすい道が続きます。林道を横切ったところに休憩ベンチがあるので、その先の急登に備えましょう。

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

休憩場所から20分ほど登ると「岩茸石」に到着します。5mほどの巨岩とベンチがあり、棒ノ折山山頂方面、下山コースとなる河又名栗湖入口バス停方面、トウギリ林道方面(現在は通行止め)への分岐ポイントとなっています。

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

いくつか階段がありますが、ほとんど崩落しており利用禁止の貼り紙がありました。ここは無理せず脇道を通りましょう。

権次入(ゴンジリ)峠~棒ノ折山山頂

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

岩茸石から山頂方面へ25分ほど登ると「権次入(ゴンジリ)峠」に到着。ベンチがたくさん並んでいる広場で、黒山・高水三山方面への分岐もあります。山頂までは残り15分ほどです。

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

棒ノ折山山頂(969m)に到着しました。山頂はとても広く、東屋やベンチが多数設けられています。この日も山ごはんを楽しむ登山者で賑わっていました。

北側から東側にかけて開けた山頂からは、奥武蔵の山並みが一望できます。気象条件が良ければ、日光連山や谷川岳まで見られる日もあります。

棒ノ折山山頂~滝ノ平尾根~ノーラ名栗・さわらびの湯バス停

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

山頂の景色をたっぷり楽しんだら下山を開始します。下山にかかる時間は1時間45分ほどです。

まずは登りと同じ道を岩茸石まで戻り、岩茸石の左脇に回り込み河又名栗湖入口バス停方面へ。しばらくなだらかな尾根道を進み、途中3回アスファルトの林道に出ますが、そのまま横切りふたたび登山道へ入ります。

杉林の道は木の根が張り巡らされていて傾斜も急なので、つまずかないように注意しましょう。登りの岩場とはまた違う緊張感があり、思ったよりも疲労感がありました。

【棒ノ折山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山

登山ポストのある地点まで下山してきました。このまま橋を渡って、突き当たりの左手にある坂を登るとノーラ名栗・さわらびの湯へ到着します。帰りのバス時間を確認し、余裕があればさわらびの湯へ立ち寄るのもいいでしょう。

棒ノ折山白谷沢~滝ノ平尾根周回コースの概要

【出発地】
国際興業バス「ノーラ名栗・さわらびの湯」バス停
【標高差】
969m
【歩行距離】
8.3km
【歩行時間】
4時間10分
【トイレ】
ノーラ名栗駐車場付近
【備考】
ノーラ名栗に売店・自動販売機あり
【コース】
「ノーラ名栗・さわらびの湯」バス停 → 白谷橋登山口 → 岩茸石 → 権次入(ゴンジリ)峠 → 棒ノ折山 → 岩茸石 → 滝ノ平尾根→ 「ノーラ名栗・さわらびの湯」バス停

棒ノ折山まとめ

棒ノ折山は、一般コースなのに爽快な沢登り気分を味わえる珍しい山です。ゴルジュの迫力と沢沿いを進む面白さはほかの山ではなかなか体験できません。

また畠山重忠ゆかりの山ということで、大河ドラマで畠山重忠に興味を持った方は歴史に思いを馳せながら登る楽しさも味わえるのではないでしょうか。

都内からも楽にアクセスもでき、下山後に温泉が利用できるところも嬉しいポイント。
ぜひ棒ノ折山に登ってみてくださいね。

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熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

登山において、熊との遭遇は命に関わる危険の一つです。道迷いや滑落は自分である程度は回避できますが、生き物である熊との遭遇は予測できません。

そこで多くの登山者が携行しているものが「熊鈴」です。しかし中には熊鈴の音がうるさいという意見もあり、実際に登山道で怒られたという人も。この記事では熊鈴の効果やマナーについて紹介します。

熊鈴には効果があるのか?

熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

一般的に、熊鈴は大きな鈴の音で人がいることを熊に知らせ、それによって熊のほうから人間を避けてもらうという効果が知られています。

日本にいる熊は、本州や四国に生息しているツキノワグマと、北海道に生息しているヒグマの2種類。そのどちらも獰猛で肉食のイメージがあるかもしれませんが、実は雑食動物です。いつも動物や魚を食べているわけではなく、植物や木の実を好みます。

熊との遭遇による事故がニュースなどで頻繁に報じられると、山で熊に出会ったら必ず襲われてしまうと思いがちです。しかし、熊は人との接触を避けて暮らしているため、見かけること自体がほとんどありません。

とはいえ、相手は野生動物です。驚いたときや、子連れの場合などには人を襲ってくる可能性があります。熊鈴を使えば100%熊に出会わないというわけではありませんが、熊にこちらの存在を知らせる一定の効果はあると考えられています。

環境省や山梨県警察などの公的機関も、山中で熊に出会わないための対策として熊鈴など音の出るものを身につけるよう呼びかけています。

賛否両論!熊鈴を鳴らす理由・鳴らしてほしくない理由

熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

熊鈴は、熊に遭遇しないための有効な手段だと考えられていますが、ネット上では熊鈴の使用のマナーについて意見が分かれ、熊鈴論争が起こっています。

そこで、熊鈴の使用について賛成・反対の意見をまとめました。

熊鈴を鳴らす理由

  • ●ネットや本の情報で熊鈴の使用が推奨されているから
  • ●人間の存在を熊に知らせるのに有効だと思うから
  • ●一番手軽な熊よけ対策だから
  • ●ソロのときは人と会話ができないが、話し声でなくても熊鈴を付けることで大きな音が出せるから
  • ●熊よけ以外の目的として、人とすれ違う・追い越すときに相手に自分の存在を知らせることができるから

前述したように、熊鈴には一定の効果があると考えられているため、「熊の出そうな山では熊鈴を鳴らす」ということが当たり前と考えられているようです。

熊鈴を鳴らしてほしくない理由

熊鈴を使うことに反対の意見もまとめました。

  • ●山の静けさが好きなのに、鈴の音がうるさくて不快
  • ●人を襲うことに慣れた熊には効果がないと思うから
  • ●登山客の多い山では、そもそも音を鳴らす意味がない
  • ●グループで会話しているなら熊鈴はいらない
  • ●山小屋や休憩場所で、マナーを守らず鳴らしている人がいて迷惑

熊鈴の音がうるさいと感じる人もいる

熊鈴に対する否定的な意見の多くは、鈴の音が「騒音」だとしています。なかには、山で熊鈴を使っていたら、ほかの登山者に「うるさい!」と怒鳴られた人も。「山では熊鈴を鳴らすもの」と盲目的に熊鈴を使っていると、一部の登山者に不快な思いをさせる可能性があります。

とはいえ「熊が出やすそうな場所(場面)」と「熊が出にくそうな場所(場面)」を明確に分けるのは難しく、さらに、熊鈴を騒音と感じるかどうかも人それぞれのため、なかなか線引きが難しいところです。

熊鈴を鳴らすタイミング・マナー

熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

熊鈴の大きな音は、ほかの登山者にとって騒音となる場合があります。そのため、熊鈴を使うタイミングには気を付けなければいけません。

例えば、人が密集しやすい休憩場所や、山小屋、テント場などでは音を出さないように配慮しましょう。特に、山小屋やテント場に泊まって早朝に出発する場合は、熊鈴を鳴らして寝ている人を起こしてしまうことがないように注意が必要です。

また、グループ登山の場合は全員が熊鈴を付ける必要はなく、グループの中の代表1人だけ鳴らせば十分です。また当然のことながら、登山前や下山後の市街地や駅、ホテルなど熊と遭遇する危険がない場所での熊鈴の使用は、ただの騒音になってしまうのでマナー違反です。

熊鈴以外の熊対策

熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

熊鈴の使用に否定的な意見もあるとはいえ、熊に遭遇する危険は絶対に避けたいもの。そこで、熊鈴以外にできる熊対策を紹介します。

複数人で話しながら行動する

熊は臆病な動物のため、人の気配がする方向を避けて移動します。人の存在を熊に知ってもらうには、グループで行動し大きな声で会話をするのが一番手軽な方法です。

ラジオや音楽を流す

ラジオや音楽を流しながら歩くことも、人間の存在を音で知らせる手段として、熊鈴同様に効果的だといわれています。ただし、熊鈴と同じく人がいる場所では騒音になるので、鳴らすタイミングには気を付けましょう。

登山者の多い山へ行く

登山者が絶えない人気の山や人気のルートであれば、熊鈴を使う必要はなく、熊に遭遇する危険もほぼありません。ニュースなどで熊の出没情報が頻繁に出るような山域は避け、登山者の多いルートを選ぶと安心です。

いざというときのために熊撃退スプレーを携行する

万が一熊と遭遇してしまった場合の対策として、熊撃退スプレーが市販されています。熊が苦手とするトウガラシが主成分のスプレーで、襲われそうになったら熊の顔に向けて吹きかけるアイテムです。

なるべく使いたくはないですが、持っておくと安心感が増すでしょう。

熊鈴の選び方

熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

市販されている熊鈴は大きさも音もさまざま。熊鈴の基本的な選び方のポイントは3つです。

  • ●サイズ・形状で選ぶ
  • ●素材で選ぶ
  • ●消音機能で選ぶ

サイズ・形状で選ぶ

熊鈴は大きく分けると「鈴型」と「カウベル型」の二つがあります。鈴型は小さめで身につけやすく、チリンチリンと高音が響くのが特徴。反対にカウベル型はカランコロンという低い音が特徴で、山林や岩などが多い場所でも音が遮られにくく、遠くまで届きます。

素材で選ぶ

熊鈴はサイズや形状だけではなく、素材によっても音が異なります。遠くまで響き、きれいな音が出る熊鈴を選びたい場合は、値は張りますが真鍮製がおすすめです。

消音機能で選ぶ

熊鈴は周りの迷惑にならないよう、意図せず音が鳴ってしまわないように注意しなければいけません。

最近の熊鈴は消音機能付きのものが主流になっています。熊鈴を鳴らしたくないときに、わざわざザックにしまわずともワンタッチで消音できるのでおすすめです。

おすすめの熊鈴

消音機能付きのおすすめの熊鈴を紹介します。

東京ベル 森の鈴(BEAR BELL) カバー付

ザックに付けたまま下に引くだけで消音できる熊鈴です。ポリカーボネート製のカバー付きなので、本体にキズが付いたり、何かにぶつけて音が鳴ったりする心配がありません。

冒険倶楽部(BOHKEN CLUB) 熊ちゃんベル

ベルが熊の顔になっているかわいいデザイン。熊の鼻の部分が分銅になっており、指で外すと音が鳴り、バネで鼻に戻すと消音できます。真鍮製なので、高音できれいな音が出る人気の熊鈴です。

ZAFIELD 熊鈴 消音機能付

ワンタッチで簡単に消音できる機能が付いた真鍮製の熊鈴です。磁石を使用した消音機能はよくあるタイプですが、コンパスなどに影響が出る心配があります。しかし、こちらはプラスチックの型にはめ込むタイプなので磁気が影響する心配がなく、そのうえ確実に消音できます。

熊鈴の使用はシーンに合わせて柔軟に対応しよう

熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること

熊鈴の効果やマナーを紹介しました。熊鈴は自分の身を守るために必要なものである一方、人によっては迷惑な騒音になる可能性があるということも忘れてはいけません。消音機能付きの熊鈴などを活用し、マナーを守って登山を楽しんでくださいね。

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【至仏山登山】尾瀬のシンボル、花の百名山を日帰りで楽しむ最短コース

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

尾瀬ヶ原の西側に位置し、燧ケ岳とともに尾瀬のシンボルとなっている至仏山。高山植物の宝庫としても知られ、登山道から色とりどりの珍しい花々を見ることができます。

この記事では、至仏山のルートや難易度、アクセス、実際に歩いてみた感想を紹介します。夜行バスを利用すれば関東圏から日帰りでも登れるので、ぜひ参考にしてくださいね。

至仏山とは

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

至仏山(しぶつさん)は、本州最大規模の高層湿原である尾瀬ヶ原の西側にある標高2228mの山です。尾瀬ヶ原を挟んで向かい合う燧ケ岳(ひうちがたけ)とともに尾瀬を代表する山として知られ、日本百名山にも選定されています。

至仏山の特徴は、高山植物が豊富なことです。山のほとんどが蛇紋岩でできているため、オゼソウやホソバヒナウスユキソウなど、蛇紋岩の多い山でしか見られない珍しい高山植物の宝庫で、花の百名山にも選ばれています。

至仏山の名前には「仏」が入っていますが、仏教に由来するものではありません。大正時代に、渋沢(山麓を流れるムジナ沢の別名)沿いを登ったことに由来し、「渋沢」が「至仏」に変化したという説があります。

至仏山の場所とアクセス

至仏山は群馬県の北東部、みなかみ町と片品村との間にあります。

登山の起点となる「鳩待峠」へ公共交通機関でアクセスするには、電車とバスを使う方法と高速バスを使う方法があります。

電車とバスを使う場合は、上越新幹線上毛高原駅またはJR上越線沼田駅より関越交通の「尾瀬戸倉・大清水行き」バスに乗車し、尾瀬戸倉で下車。戸倉から鳩待峠へは、乗合バスもしくは乗合タクシーで向かいます。

東京方面から高速バスを使う場合は、新宿駅高速バスターミナル・川越駅から直通の、関越交通の高速バス「尾瀬号」で戸倉まで向かい、乗合バスもしくは乗合タクシーにて鳩待峠へ。東京方面から日帰りで至仏山に登るなら、早朝に到着する夜行便で行くのがおすすめです。

車でアクセスする場合は、関越自動車道沼田ICから国道120号、401号を経由し戸倉にある尾瀬第一駐車場・尾瀬第二駐車場(有料)へ。そこから乗合バスもしくは乗合タクシーにて鳩待峠へ向かいます。

至仏山の難易度

鳩待峠から至仏山の山頂までは標高差637mで、比較的なだらかな箇所が多いですが、森林限界を越えた2000m以上になると足場の悪い箇所もあるので、難易度は中級程度といえます。さらに、まだ残雪のある7月上旬は、アイゼンが必要なため難易度も上がります。

至仏山登山のベストシーズンは、7月中旬~9月下旬まで。例年、5月から6月にかけては植生の保護を目的とした入山規制がおこなわれており、登山できるのは残雪期の4月中旬頃~5月のGW期間までと、7月1日前後の山開き以降となっています。

鳩待峠~小至仏山~至仏山 往復コースを歩く

至仏山の山頂までの最短コースとなる、鳩待峠からの往復コースを実際に歩いてきました。

鳩待峠~オヤマ沢田代

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

登山のスタート地点、鳩待峠まではマイカーと乗合タクシーを使ってアクセスしました。この日は平日だったので戸倉から鳩待峠までのマイカー規制はありませんでしたが、鳩待峠駐車場は朝7時の時点ですでに満車。

そのため、戸倉にある尾瀬第一駐車場に駐車し、乗合タクシーを利用しました。尾瀬第一駐車場の利用料金は24時間1000円、乗合タクシーの利用料金は1人1000円です。

鳩待峠休憩所には、食事できる店やバッジなどのおみやげを購入できる店があります。その他、有料トイレ(チップ制)があり、利用料金は100円です。至仏山にはこの先トイレがないので、鳩待峠ですませておくのがいいでしょう。

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

至仏山への登山口と尾瀬ヶ原方面への入口は隣り合っていて、間違いやすいのでしっかり確認しましょう。向かって左側の「至仏山登山口」と書かれた標識が目印です。 至仏山の東面の登山口「山ノ鼻」から登る場合は、鳩待峠から尾瀬ヶ原方面への道を1時間ほど歩きます。

今回は天候を考慮して日帰りの最短ルートを選びましたが、山ノ鼻やその先の見晴地区には山小屋が多数あるので、山小屋に宿泊してじっくりと尾瀬を堪能するのもおすすめです。

登山口からしばらくはブナやミズナラ、ダケカンバなどの森の中をゆるやかに登っていきます。夏場はクマザサが覆い、道が狭くなっている箇所もありますが、進んでいくと木道や木の階段が整備されている道に出るので歩きにくさはありません。

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

50分ほど登ると北側の展望が開けます。ここからは尾瀬ヶ原や燧ケ岳を望むことができ、腰掛けられる大きな岩もあるので休憩場所にぴったりです。

ここから進むと、ふたたび木の階段が続く樹林帯歩きになります。

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

木道の先にネットが張られた柵が見えてきます。この先がオヤマ沢田代です。湿原の植物をシカの食害から守るための柵なので、柵を通ったあとはしっかり閉めてから進みましょう。

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

湿原を抜けるとふたたび展望が開け、休憩用のベンチがありました。この一帯はお花畑が広がっており、夏はチングルマやハクサンフウロなどが見られます。

ここから先は森林限界を越え、長い木の階段の先は蛇紋岩の岩場が続く岩稜地帯です。蛇紋岩は滑りやすいので、足を置く場所を確認しながら慎重に登っていきます。

小至仏山~至仏山

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

登山開始から2時間ほどで小至仏山の山頂に到着しました。360度の展望が広がり、目指す至仏山の山頂方面も見渡せます。
岩で固められたような山頂は狭く、腰掛けられる場所も少ないので休憩にはあまり向きません。一呼吸おいたら、至仏山へ向かって進みます。

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

小至仏山から至仏山山頂まではおよそ45分。

いったん鞍部に下ったあとに登り返しますが、その間も蛇紋岩の岩場の連続のため、気が抜けません。気を張って進まなければいけないので、思ったよりも体力を消耗しました。

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

植生を守るためのロープが岩場にもしっかり張られているので、道迷いの心配はありません。山頂から下ってくる人が多いとすれ違いが大変ですが、ロープの外には出ないように気を付けましょう。

至仏山~鳩待峠(下山)

【至仏山】花の百名山に選ばれる尾瀬のシンボルを日帰りで楽しむ最短コース

スタートから2時間40分で至仏山の山頂(2228m)に到着です。

晴れていれば北側に尾瀬ヶ原や燧ヶ岳、東側に日光連山、西側に上越の山々、南側に上州武尊山など、360度の大パノラマを望むことができます。しかし、この日は残念ながら、展望が開けませんでした。

尾瀬ヶ原方面の山ノ鼻から登る東面ルートとは山頂で合流します。東面ルートは登り専用で、鳩待峠方面にしか下山できないので注意しましょう。

下りのコースタイムは2時間ほど。小至仏山、オヤマ沢田代を経由して、往路と同じ道を下山します。

至仏山(鳩待峠~小至仏山~至仏山 往復コース)の概要

【出発地】
鳩待峠登山口
【標高差】
637m
【歩行距離】
9.5km
【歩行時間】
4時間40分
【トイレ】
鳩待峠休憩所
【備考】
山ノ鼻からの登山道は登り専用
【コース】
鳩待峠登山口 → オヤマ沢田代 → 小至仏山 → 至仏山 → 小至仏山 → オヤマ沢田代 → 鳩待峠登山口

至仏山まとめ

至仏山は麓から眺めるとゆるやかな曲線を描く女性的な山容に思えますが、山頂付近は蛇紋岩の岩稜地帯で険しい面も持ち合わせている山でした。とはいえ、コースの周辺には可憐な高山植物が見られ、ついつい足を止めて花の写真を撮ったり、花の名前を調べたりする楽しさもありました。

しかし、マイカー規制や木道の整備、保護柵など、尾瀬の自然保護がしっかりおこなわれているからこそ、私たちが登山を楽しめるということも忘れてはいけませんね。繊細で美しい面とワイルドな面、2つの異なる印象をあわせ持つ至仏山にぜひ登ってみてください。

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【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

唐松岳(からまつだけ)は北アルプスの後立山連峰にある標高2696mの山です。

ゴンドラとリフトで標高約1800mの地点まで登ることができ、絶景スポットの八方池は観光客でにぎわいます。一方、八方池から先は夏でも雪渓が残る本格的な登山道で、これからアルプスに挑戦したい人の入門の山としてもおすすめです。

この記事では、唐松岳のルートや難易度、アクセス、実際に歩いてみた感想を紹介します。

唐松岳とは

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

唐松岳は日本三百名山に選定されています。後立山連峰の白馬岳、五竜岳などと並び立ち、山頂からは迫力のある剣岳や立山、鹿島槍ヶ岳などが望め、360度の大絶景が広がります。

登山客がもっとも多いのは7~9月です。特に八方尾根コースの途中にある八方池は、地元の小中学校で登山遠足の定番コースとなっており大変にぎわいます。

また、この地域にしか分布しない固有植物や貴重な高山植物が多く、花の山としても人気。ユキワリソウやニッコウキスゲ、シモツケソウなど、可憐な花が登山者の目を楽しませてくれます。

唐松岳の場所

唐松岳は長野県北安曇郡白馬村と富山県黒部市にまたがっています。

登山の起点となるのは白馬八方バスターミナル。公共交通機関でアクセスする場合は、JR大糸線白馬駅から路線バス、またはJR北陸新幹線長野駅から特急バスを使い、白馬八方バスターミナルへ向かう方法が一般的です。

東京方面から高速バス利用の場合は、バスタ新宿より「高速バス 新宿 − 安曇野・大町・白馬線」に乗り「白馬八方バスターミナル」で下車。

マイカー利用の場合は、白馬八方バスターミナル近くの白馬八方第2駐車場を利用すると便利です。

唐松岳の難易度

唐松岳は2500m超えの高山ではありますが、ゴンドラ、リフトを利用すれば標高770mのゴンドラ駅から標高1830mの八方池山荘まで一気にのぼることができ、唐松岳山頂までは片道4時間ほどで到達します。

北アルプスの中では標高差がそれほど大きくなく、山行時間も短めなので、北アルプスデビューにおすすめの山です。

ルート上に危険な箇所はほとんどありませんが、夏でも4ヶ所ほど雪渓を渡るポイントがあるため、軽アイゼンやチェーンスパイクを持参すると安心です。ただし、これは7~9月の夏山シーズンに限った難易度であり、積雪期の難易度は急激に上がるので、しっかりとした雪山装備と技術が必要です。

また、唐松岳から縦走する場合は、八峰キレットや不帰ノ嶮(かえらずのけん)などの難所ばかりなので上級者向けです。

唐松岳 八方尾根コースを1泊2日で歩く

ゴンドラ、リフトを利用し、八方尾根から唐松岳山頂を目指す王道コースを、1泊2日の小屋泊で歩いてきました。

【1日目】八方アルペンラインで八方池山荘へ

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

JR北陸新幹線長野駅から、アルピコ交通特急バス(長野-白馬線)に乗車し、白馬八方バスターミナルにて下車。そこから約10分、徒歩で八方尾根ゴンドラリフト「アダム」八方駅へ向かいます。

唐松岳の登山口となる「八方池山荘」までは、八方ゴンドラリフト「アダム」、アルペンクワッドリフト、グラートクワッドリフトを乗り継ぐので、八方アルペンライン通し券(往復で3,200円)を購入するのがおすすめです。

最初に乗る八方ゴンドラリフト「アダム」は標高差625mを8分でのぼります。ゴンドラが地面からかなり離れているので、きれいな景色と少しのスリルを味わえました。

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

ゴンドラを降りると、次は「アルペンクワッドリフト」と「グラートクワッドリフト」の2種類のリフトでさらに上へ。リフトはゴンドラと違い、地上から1.5mと低い場所を通るので怖くありません。

また、夏にはリフト駅の手前でニッコウキスゲの群落を見ることができます。

八方池山荘~八方池

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

リフトを降りたところが標高1830mの八方池山荘です。ここから登山コースの始まりです。目指す先はガスがかかって真っ白ですが、晴れることを期待して出発します。

ここから1時間30分ほど歩いた所に観光スポットである八方池があるため、登山装備をしていない観光客の姿も多く見られました。

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

歩きやすく整備された木道を進み、石神井ケルン、第2ケルンを越えて進んでいくと、白馬三山を望む絶景スポットの八方池に到着。

残念ながらこの日はまったく展望が開けず、絶景を見ることは叶いませんでした。それでも登山遠足で来ていた小学生たちがワイワイと楽しそうにお弁当を食べているのを見て元気をもらえました。

八方池から先は登山装備が必要な本格的な登山道となるため、気を引き締めて進みます。

第3ケルン~丸山ケルン~唐松岳頂上山荘

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

唐松岳頂上山荘までのコースタイムは2時間30分ほど。

尾根の南側を歩きながら進むと、下ノ樺(しものかんば)と呼ばれる場所の付近に大きなダケカンバの林が現れます。これは植生の逆転現象と呼ばれるもので、標高が高いにもかかわらずダケカンバが生育する現象です。八方尾根は、この逆転現象が見られる珍しい場所でもあります。

森林限界を越えたはずなのに林の中を歩くという、不思議な感覚を味わいながら林を抜けると、今度は夏でも雪が残る雪渓地帯に入ります。

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

私が登った7月中旬は、雪渓が4ヶ所残っていたのでチェーンスパイクを装着しました。

すれ違った登山者の中には、アイゼンやチェーンスパイクなしでは雪渓を登るのが難しく、引き返して来たという方もいたので、雪渓に慣れていない方は夏場でもストックとアイゼンを持参するのがおすすめです。

雪渓を抜ける風は天然のクーラー。夏とは思えないほどひんやりとした、心地いい風を感じられます。

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

丸山ケルンから唐松岳頂上山荘までの道は傾斜もきつくなり、尾根道は左右が切り立っているので注意しながら進みます。

宿泊地の唐松岳頂上山荘は本館と北館の2棟からなる大きな山小屋です。収容人数は350名で、2段ベッドの寝室があるほか、個室もあります。水洗トイレが完備され、設備がきれいで快適でした。泊まってみたい山小屋のランキングで常に上位に入る、人気の山小屋というのも納得です。

この日は天候が回復しなかったため、頂上へは行かず小屋でゆっくり過ごしました。

【2日目】唐松岳頂上山荘~唐松岳山頂

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

2日目の早朝に小屋から唐松岳山頂へ向けて出発。山頂へは20分ほどで到着しました。

この時間も周辺にはガスがかかっていたので、360度の大絶景とはいきませんでしたが、山頂標識の向こうにひときわ存在感を放つ剣岳と立山連峰を見ることができました。

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

1日目にまったく見られなかった白馬岳方面の山々も少しの間だけ姿を現わしました。手前に不帰ノ嶮、その奥に白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳の白馬三山が続いていて壮観です。

唐松岳頂上山荘~八方アルペンライン

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

山頂から小屋へ戻ってくると辺りは真っ白。天気は下り坂のようなので朝食後に早めに下山を開始しました。視界の悪い尾根道や雪渓の下りは、急ぎつつも足元を確かめながら進みます。

【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅

八方池山荘まで下ったら、行きと同じくリフトとゴンドラで下山。幸い、雷は鳴っていなかったのでリフト、ゴンドラともに運休することなく麓まで下りられました。

唐松岳( 八方尾根コース)の概要

【出発地】
八方池山荘
【標高差】
866m
【歩行距離】
(1日目)4.5㎞(2日目)4.5㎞
【歩行時間】
(1日目)4時間(2日目)3時間40分
【トイレ】
八方池山荘、第2ケルン、唐松岳頂上山荘
【備考】
八方池山荘の目の前に自動販売機あり
【コース】
(1日目)八方池山荘 → 石神井ケルン → 第2ケルン → 八方ケルン → 八方池 → 第3ケルン → 丸山ケルン → 唐松岳頂上山荘
(2日目)唐松岳頂上山荘 → 唐松岳山頂 → 丸山ケルン → 第3ケルン → 八方池 → 八方ケルン → 第2ケルン → 石神井ケルン → 八方池山荘

唐松岳まとめ

唐松岳の八方尾根コースはゴンドラとリフトを使えますが、登山経験としっかりとした装備が必要なことから、これから北アルプスの山々に挑戦するためのステップアップの山としては最適だと感じました。

絶景を楽しめるハイキングとして八方池までの往復もおすすめ。休日は登山渋滞が起こることもある人気の山なので、時間に余裕を持ってチャレンジしてみてくださいね。

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【武甲山・登山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

埼玉県秩父市にある武甲山(ぶこうさん)は奥武蔵の最高峰であり、地元の人々に古くから信仰されてきた山です。秩父盆地のどこからでも目立ちますが、その理由は、山の半分が採掘されて岩肌がむき出しの異様な姿をしているからです。

見た目は可哀想にも思えますが、登山道のある南側には多くの自然が残っています。この記事では、武甲山の登山ルートや難易度、アクセス、実際に歩いてみた感想を紹介します。

武甲山とは

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

武甲山は秩父地方のシンボルといわれる信仰の山で、標高は1,304mです。山名の由来は、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が自分の甲(かぶと)を岩室に奉納したという伝説からきています。

武甲山の山容は、無残に削られてむき出しの山肌が特徴的ですが、ここまで削られた理由は武甲山が石灰岩でできた貴重な山だからです。遠い昔、海の底でサンゴが積もってできた石灰岩が隆起して地表に現れ、武甲山が形成されました。

石灰岩はセメントの材料となるため、高度経済成長期、首都圏にビルを建てるためにさかんに採掘がおこなわれた歴史があります。武甲山は日本の高度経済成長を支えてきた山であり、現在も採掘によってその姿や標高を変えながら人々の生活を支えてくれている山です。

武甲山の場所

武甲山は埼玉県秩父市と横瀬(よこぜ)町の境界に位置します。最寄り駅は西武鉄道の横瀬駅、もしくは浦山口(うらやまぐち)駅です。駅から登山口までは徒歩の場合1時間30分ほど、登山口までタクシーを利用する場合は20分ほどで、料金は約3,000円です。

武甲山の難易度

武甲山の標高差は登り787m、下り1,062mで歩行距離9.6㎞であり、難易度は中級レベルです。危険箇所や急登はないものの、じっくりと高度を上げていくので思ったよりきついと感じるかもしれません。山頂に着くまで展望がなく登山道も単調なので、ペース配分に気を付けながら登るようにしましょう。

武甲山(表参道コース~長者屋敷の尾根コース)を歩く

一の鳥居からスタートし、武甲山のピークから長者屋敷の尾根を下るコースを実際に歩いてきました。

西武鉄道西武秩父駅~一の鳥居~登山口

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

スタート地点は西武秩父駅です。私の場合は秩父鉄道に乗り、御花畑駅から徒歩で西武秩父駅へアクセスしました。新宿・池袋方面からの場合は、西武秩父線の横瀬駅が最寄りとなります。

駅から徒歩またはタクシーで一の鳥居まで向かいます。西武秩父駅からはどっしりとした武甲山の姿がはっきりと見えます。

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

国道299号線から、石灰工場のある道を抜けて二子林道を進んだ先が一の鳥居です。鳥居を抜けた先が駐車場になっており、立派なトイレも設置されています。登山届の提出をしたら登山開始です。ここから30分ほど、コンクリートの道を緩やかに登っていきます。

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

武甲山の表参道コースの特徴は「丁目石」が設置されていることです。一般的には「〇合目」という表記が多いですが、武甲山では丁目石がその役目をしています。

丁目石は山頂の神社まで約109mおきに置かれ、一の鳥居が一丁目、本格的な登山道が始まる場所が十五丁目、そして山頂が五十二丁目となっています。

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

登山口(十五丁目)から15分ほど歩くと水場のある不動滝(十八丁目)です。ここにはたくさんの空のペットボトルが用意されていますが、これは山頂トイレで使うための水をハイカーさんに運び上げてもらうためのものです。余裕があればお手伝いしたいですね。

大杉の広場~武甲山御嶽神社~武甲山山頂

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

登山開始から1時間半ほど、杉林の中を登っていくと「大杉の広場」(三十三丁目)に到着します。休憩ベンチが数か所ある広場で、その中央にある巨大な杉の木が「大杉」です。樹齢700年以上とも言われ、長い間参拝者や登山者を見守ってきたであろう、その存在感は圧倒的です。

大杉の根元には「あと60分」の文字が。山頂まではもう一息です。

武甲山山頂~長者屋敷の頭

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

ひたすらに杉林の中のつづら折りの道を進み、五十二丁目の「武甲山御嶽神社」に到着しました。神社には、身を削って人々の経済生活を支えてくださる武甲山への感謝として「感謝石(初穂料100円)」がありました。感謝石にはメッセージを書いて、二十八~二十九丁目の道祖神祠「石積場」へと奉納します。

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

神社の裏手を少し登ったところが武甲山の山頂です。山頂からは採掘場所はまったく見えません。北側の採掘エリアは爆破がおこなわれているので、一般の人は立ち入りが禁止されています。

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

展望台からの秩父盆地の景色です。展望台はそこまで広くないので土日はかなり混み合いますが、この日は平日だったので素晴らしい展望を独り占めできました。

秩父市街地の一部分に鮮やかなピンク色が見えますが、ここが芝桜の丘(羊山公園)です。この日はスッキリと晴れていて、遠くには赤城山、谷川岳、浅間山まで見渡せました。

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

神社まで戻って休憩後、下山開始です。下山は「長者屋敷の尾根」と呼ばれる尾根道を通って、秩父鉄道の浦山口駅へ向かいます。
武甲山の肩と呼ばれる場所で、大持山方面との分岐を右側へ。

表参道コースとは違い、明るいカラマツ林の急斜面を下ります。傾斜が緩んできた辺りが長者屋敷ノ頭ですが、標識もなく、知らずに通り過ぎてしまいました。

林道出合~浦山口駅

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

尾根からさらに下っていくと、沢の水の音が聞こえてきます。木の橋を渡ったところが「林道出合」で、ここからは沢沿いの林道を進みます。ここまで来れば、あとは整備されたゆるやかな道を淡々と進むだけです。

「裏参道」とも呼ばれるこのルートには、途中に武甲山御嶽神社の鳥居があります。また、秩父札所三十四ヶ所の1つ「石龍山橋立堂(せきりゅうざんはしだてどう)」とその敷地内に「橋立鍾乳洞」があるので立ち寄ってみるのもおすすめです。

【武甲山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山

登山のゴール地点、秩父鉄道の浦山口駅に到着です。いかにもローカル駅といった印象で、改札ゲートはなく入場用の簡易的な改札機だけが設置されているので、自由にホームに入れるようになっていました。(トイレや靴洗い用の水道はホーム内にあります。)帰りの電車の車窓から武甲山の姿が見えました。

武甲山(表参道コース~長者屋敷の尾根コース)の概要

【出発地】
西武鉄道横瀬駅もしくは西武秩父駅
【標高差】
1,304m
【歩行距離】
9.6km
【歩行時間】
4時間40分
【トイレ】
西武秩父駅、一の鳥居、武甲山御嶽神社付近(山頂トイレ)、浦山口駅
【備考】
西武鉄道横瀬駅から一の鳥居までは徒歩1時間30分。タクシーで20分(3,000円程度)
【コース】
西武鉄道横瀬駅(西武秩父駅)→ 一の鳥居 → 登山口(十五丁目) → 不動滝(十八丁目) → 大杉の広場(三十三丁目) → 武甲山御嶽神社(五十二丁目) → 武甲山山頂展望台 → 長者屋敷の尾根 → 林道出合 → 浦山口駅

武甲山まとめ

これまでの武甲山と人々の関わりや歴史を知り、間近で採掘の跡を見たことで、山に対する感謝の気持ちがますます強くなりました。
今も石灰岩が採掘され続けている武甲山。北側の石灰岩を採掘し続けても玄武岩でできた南側は残るため、山自体がなくなることはありません。とはいえ、標高や姿がここまで変化し続ける山は他にないでしょう。

武甲山に登ることで、採掘されていない南側の豊かな自然を味わうことができました。秩父のシンボルであり、歴史を感じられる武甲山にぜひ登ってみてくださいね。

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登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介

登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介

夏山シーズンで注意したいことの一つが虫刺されです。山の中には蚊やアブの他にも、マダニやハチなど刺されると命に関わる危険のある虫も生息しているので、対策は必須です。

とはいえ、虫よけスプレーは成分や濃度の違いで多くの製品があるため、どれを選べばいいか迷いますよね。この記事では、虫よけスプレーの成分や選び方、さらにスプレー以外の虫よけ対策グッズも紹介します。

登山で注意したい虫の種類

登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介

ヤブ蚊

雑木林などに生息するヤブ蚊(ヒトスジシマカ)は北海道を除く日本のほとんどの地域に分布する蚊です。5月から10月にかけて、日中に木陰や草むらで吸血します。ヤブ蚊に刺されると、かゆみと腫れが生じるだけでなく、蚊媒介感染症にかかる危険があります。

アブ・ブヨ

アブやブヨ(ブユ)は水辺や川、渓谷近くに生息し、ヤブ蚊と同様に吸血されるとかゆくなります。蚊との違いは、針を刺すのではなく、皮膚をかみ切るように吸血する点で、チクッと痛みが生じることがあります。また、蚊よりも毒性が強いため、かゆみが長く続き、皮膚がかたく腫れて治りづらいところが厄介です。

マダニ

マダニは人家にいるイエダニよりも一回り大きい、山地の草むらなどに生息するダニです。普段は野生動物に寄生し血を吸って生息し、人間を見つけると肌に取りついて吸血します。

マダニが媒介する感染症も多く、中には死に至る場合も。無理にはがそうとすると、口の一部がちぎれて皮膚にが残ってしまうため、ピンセットなどで慎重に取り除く必要があります。

ヤマビル

体長2~5cmの円筒型のヒルで、落ち葉の下など湿気の多いところに生息します。人の肌に取りついて、吸血するときに血液が固まるのを妨げる物質を出すため、吸血された傷跡からの出血がなかなか止まりません。しかも、かゆみや噛み跡が数ヶ月残る場合もあります。

スズメバチ

スズメバチは攻撃性が高く、登山中にうっかりスズメバチの巣に近づいてしまうと、警戒して周囲を飛び回り、それでも立ち去らなければアゴをカチカチ鳴らして威嚇・警告します。その場合は、スズメバチを刺激するような動きをせず、静かにゆっくり立ち去りましょう。

まれに、いきなり攻撃してくることもあるので、1匹でもスズメバチを見つけたら速やかに立ち去ってください。

スズメバチに刺されたら、アナフィラキシーショックというアレルギー反応を起こす可能性があり、ただちに病院で処置しなければ命に関わる危険もあります。

登山に効果的な虫よけ成分

登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介

一般的に使われている虫よけ成分は大きく分けて3種類です。それぞれの特徴や選び方を説明します。

虫よけ効果が高いディート

世界的に最も多く使われ、日本でも50年以上虫よけとして使われている成分が「ディート」です。蚊やマダニのほか、アブ、ブヨ、ヤマビルなど多くの害虫に効果があり、1回の使用で効果が長時間続きます。

ディート配合濃度が30%の高濃度の製品は虫よけ効果が長く持続しますが、年齢制限があり、12歳未満の子どもは使用できません。濃度が低いものでも年齢によって回数の制限があります。

肌への刺激が少ないイカリジン

「イカリジン」は、日本では2015年に承認された比較的新しい虫よけ成分です。対策できる虫は蚊、ブヨ、アブ、マダニなどで、ディートよりは少ないですが、年齢による使用制限がなく、肌への刺激が少ないので赤ちゃんから大人まで安心して使え、1日に何回でも塗り直しができるのが特長です。

天然成分のハッカやユーカリ

ハッカ(ミント)やユーカリのような天然ハーブは、虫を遠ざける忌避効果があります。一般的な虫よけスプレーと同じく、ハチ、アブ、ブヨ、マダニ、ヤマビルなど全般的な山の害虫に効果があるとされ、天然成分なので副作用の心配がありません。

ハッカ油を水で溶かしたスプレーは簡単に自作でき、ひんやりして清涼感があるため暑さ対策としても効果を発揮します。さらに消臭、殺菌効果があるので、汗のニオイ対策にも効果的です。

登山で使うならどの成分がおすすめ?

高い虫よけ効果を期待するなら、ディート配合の製品がおすすめです。ディート特有のニオイが苦手な人や、子どもと一緒に登山をするならイカリジンがいいでしょう。

テント泊や縦走など長期間の登山には、スプレーの量を調節でき一番コンパクトに持ち運べるハッカ油スプレーをおすすめします。

登山で使える虫よけグッズ

登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介

ここからは、虫よけスプレー以外の虫よけグッズを紹介します。

しつこいメマトイには防虫ネット

メマトイとは、体長2mm程度の小さなハエのことです。吸血はしませんが、歩いていると目の周りをしつこく飛び回り、涙の成分を吸うために目に飛び込んできます。

メマトイを避けるのに効果的なのは、防虫ネットを頭にかぶることです。コンパクトに持ち運べるので、顔の周りの虫がどうしても我慢できないときのために持っておくといいでしょう。

防虫効果のある繊維でできたウェア

服の繊維そのものに防虫効果を施したウェアなら、着るだけで虫が寄り付きにくくなります。代表的なものは、Foxfireが販売している「スコーロン®」や、ワークマンが販売している、「DIAGUARD®」など。虫よけスプレーのような独特なニオイがなく、効果が汗で流れないところが嬉しいですね。

ザックや帽子に付けるだけのおにやんま君

飛びながら小型の虫を捕食するオニヤンマを模した、本物そっくりの虫よけグッズ。オニヤンマはアブやブヨの大敵であり、オニヤンマの姿を見ただけで逃げていくといわれています。

偽物のオニヤンマで害虫が逃げていくとはにわかに信じられませんが、釣りや登山、キャンプで「効果があった」という口コミがネット上で広がり、人気商品となっています。帽子やザックにアクセサリー感覚で着けてみてもいいかもしれませんね。

登山で虫に刺された時の対処法

登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介

登山中に万が一、虫に刺されたり噛まれたりした場合、どうしたらいいのかを説明します。

すぐにポイズンリムーバーで吸う

ヤブ蚊やアブ、ブヨの場合は刺された箇所をポイズンリムーバーで吸いだすとかゆみや腫れの症状を軽減できます。ただし、時間が経ってからでは効果が薄いので、刺されたらなるべく早く吸いだすようにしましょう。

抗ヒスタミン軟膏を塗る

患部を清潔な水で洗浄したら、抗ヒスタミン軟膏を塗りこみます。ついかきむしりたくなる人にはパッチタイプもおすすめです。

痛みや腫れがひどい場合は下山後に病院へ

ハチに刺された場合は、アナフィラキシー症状が出る可能性があるため、すぐに下山して病院で受診しましょう。マダニの場合は、無理に取り除こうとすると口の一部だけ傷口に残ってしまうことがあるため、病院で取り除いてもらう必要があります。

その他の虫刺されも、1週間ほど経過してもかゆみや腫れがおさまらない場合は、病院で診てもらうことをおすすめします。

虫よけ対策をして安全に夏山を楽しもう

登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介

登山におすすめの虫よけスプレーの成分や選び方、虫よけ対策グッズを紹介しました。虫よけスプレーとポイズンリムーバー、抗ヒスタミン軟膏はファーストエイドキットの一部として常に携行するといいでしょう。

山には命に関わる危険な虫も生息しています。なるべく肌を出さない服装にするなど、虫よけ対策をしっかりおこなって登山を楽しんでくださいね。

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