中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)は標高3000mに迫る標高がありながら、ロープウェイを使って気軽に雲の上の絶景登山を楽しめる、アルプスデビューにおすすめの山です。
「標高が高くて涼しい山に行きたい!」「日帰りで気軽にアルプスの絶景を楽しみたい!」そんな登山初心者におすすめです。
この記事では、木曽駒ヶ岳のルートや難易度、アクセス、絶景ポイント、実際に歩いてみた感想をお伝えします。
木曽駒ヶ岳は中央アルプスの最高峰であり、標高は2956mです。日本百名山や花の百名山にも数えられます。
初心者でもアルプスの雄大な景色を手軽に楽しめるところが、木曽駒ヶ岳の魅力のひとつです。ロープウェイ千畳敷駅から木曽駒ヶ岳の頂上までは標高差350m程度で、片道わずか1時間50分ほどで到着します。
360°展望が開けた山頂からは、富士山、北岳、間ノ岳の日本最高3峰が見られるほか、南アルプスと北アルプスの山々、御嶽山なども見られます。また、途中に山小屋も点在し、トイレの利用や休憩もできるので登山初心者でも安心して登れる山です。
駒ヶ根ロープウェイ千畳敷駅を出てすぐ、目の前に広がっているのが千畳敷カールです。カール(Cirque)とは、山岳地帯や高地に見られる地形の一種で、氷河が地表を削り出す過程で形成されるくぼんだ凹地のことをいいます。
千畳敷カールは高山植物の宝庫としても知られ、初夏にはタカネザクラ、チングルマ、ハクサンイチゲ、コイワカガミ、コマウスユキソウなどが咲き乱れます。
コマウスユキソウは、エーデルワイスの仲間で中央アルプスの特産種であり、木曽駒ヶ岳から空木岳にかけての稜線などの一部にしか生息しない貴重な高山植物です。
駒ヶ根ロープウェイ周辺は、観光客向けにホテルやテラス、遊歩道などが整備されているので、登山装備なしの観光客も大勢訪れます。秋には紅葉の見事な景観を求める観光客でにぎわいます。
木曽駒ヶ岳は長野県上松町・木曽町・宮田村の境界に位置します。登山の起点となるロープウェイ「しらび平駅」はマイカー規制区間にあるため、路線バスでのみアクセス可能です。
公共交通機関利用の場合は、伊那バス「JR駒ヶ根駅始発、駒ヶ岳ロープウェイ駅(しらび平)行き」に乗ります。終点のしらび平までの所要時間は約45分です。
マイカー利用の場合は、菅の台バスセンターで駐車し、そこから路線バスに乗車して終点のしらび平まで行きます。
ロープウェイ駅に行くにはバスに乗るしか手段がないので、夏山シーズンと紅葉シーズンは、登山客と観光客でかなりの混雑が見込まれます。特に菅の台バスセンターは1〜2時間待ちになることもあるので覚悟しましょう。
駒とは馬のことです。木曽駒ヶ岳は雪解けの時季に中岳付近に駒(馬)の雪形が現れることから名づけられました。
なお、南アルプスには甲斐駒ヶ岳がありますが、木曽駒ヶ岳を西駒、甲斐駒ヶ岳を東駒と、ふたつの駒ヶ岳を呼び分けています。
木曽駒ヶ岳の難易度は初級レベルで、登山初心者や小学生でも登れる山です。ロープウェイを降りてから山頂までの標高差は350mほどで、所要時間も往復で4時間くらいなので、日帰りで余裕をもって歩けます。
ただし、標高が3000m近くあるので、人によっては高山病の症状が出る場合も。また、山頂までの稜線には遮るものがないので、夏でも10℃を下回ったり強風が吹いたりすることがあります。レインウェアや防寒着は忘れず持参しましょう。
「千畳敷コース」(紹介したコースのうち2番目)を実際に歩きました。
駒ヶ岳ロープウェイ「しらび平駅」から「千畳敷駅」までは7分30秒で到着します。4〜11月は30分間隔、12〜3月は60分間隔で運行していますが、混雑時は臨時便も運行します。なお、ロープウェイの定員は61人です。
ロープウェイの終点「千畳敷駅」の標高は2,612mで、ロープウェイの駅として標高日本一です。さらに、終点駅と始点駅の高低差は950mで、こちらも日本一です。
この日の千畳敷駅の気温は11.1℃と真夏とは思えない気温でした。
千畳敷駅を出るとすぐ、「日本一空に近いテラス」といわれる絶景テラス「SO・RA・TO・KI」に出ます。晴れていれば目の前にいきなり千畳敷カールの絶景を見ることができます。
この日は雨が降っていたため、千畳敷カールもこれから登る木曽駒ヶ岳への登山道も残念ながら見えませんでした。展望は望めそうになかったものの、少しでも天候が良くなることを祈って山頂まで登りました。
信州駒ヶ岳神社の脇から登山開始です。まずは高山植物が咲く遊歩道を20分ほど進み「八丁坂分岐点」へ。八丁坂は急斜面の岩の道で、コースの中で一番の難所です。八丁坂より先は登山装備が必要な険しい登山道となります。
八丁坂は丸太の足場や木の橋などで整備されていますが、登山客で混雑しているときはすれ違いが困難な箇所もあります。お互いに譲り合いながら進みましょう。
進むほどに傾斜がきつくなり、道も狭くなっていくので足場を確認しながら進みます。稜線に出るまでの30分ほどが頑張りどころです。
八丁坂を登り詰めると稜線に出ます。一気に視界が開けたところが「乗越浄土(のっこしじょうど)」です。標識の「宝剣岳・中岳・駒ヶ岳」方面へと進みましょう。
乗越浄土から少し進むと見える青い屋根の建物が「宝剣山荘」です。宝剣山荘には食堂や売店があり、外にはテーブルとイスが並んでいて休憩ができます。宝剣山荘の左側から裏手に出ると中岳方面と宝剣岳への分岐があるので、中岳方面へ進みましょう。
景色の開けた歩きやすい尾根道を20分ほどゆるやかに登っていくと中岳山頂(標高2925m)に到着です。
この日はまったく見えませんでしたが、晴れていれば木曽駒ヶ岳の山頂が見えてきます。霧が出ていると道迷いしやすいので、両サイドのロープを頼りに進みましょう。
中岳山頂から一旦下り、テント場(キャンプ指定地)になっている駒ヶ岳頂上山荘を過ぎて20分ほど登れば木曽駒ヶ岳の山頂です。
千畳敷駅から2時間ほどで木曽駒ヶ岳の山頂に到着しました。山頂は開けていて、景色が360度見渡せます。しかし写真を見ての通り、この日は霧に包まれ、山頂からの大絶景はあいにく見られませんでした。
天気が良ければ中央アルプスの峰々をはじめ、御嶽山とその向こうに北アルプス、八ヶ岳、南アルプスの大パノラマが広がります。
山頂の木曽駒ヶ岳神社へ、次に来たときは美しい景色が見られるようお参りし、風が強いので早々に下山を開始しました。下りのコースは、来た道を折り返すルートです。来たときと同様に道に張られたロープを頼りにして迷わないように進みましょう。
八丁坂分岐点まで下り、せっかくなので遠回りして遊歩道を歩いてみました。八丁坂分岐からホテル千畳敷までの遊歩道は30分弱で歩けます。
また、遊歩道のお花畑では7月中旬から8月中旬にかけてコバイケイソウ、チングルマ、コイワカガミなどの高山植物が見頃を迎えます。剣ヶ池のある広場は千畳敷カールを正面から眺められる絶景スポットなので、時間に余裕があればゆっくり散歩を楽しむのもおすすめですよ。
木曽駒ヶ岳は中央アルプスの最高峰でありながら、初心者でも気軽にアルプス登山に挑戦できる山です。今回の山行では雄大な景色は見られず残念だったので、またチャレンジしたいと思います。
標高の高い山は体力と技術が求められるため、登山初心者が到達するには経験が必要です。しかし木曽駒ケ岳は、高山ならではの感動を初心者が先取りできます。そして、「もっと経験を積んで、感動する景色にもっとたくさん出会いたい」と思わせてくれる山です。
木曽駒ヶ岳で圧巻の景色と感動を味わってみてくださいね。
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今回のハイライトは寺坂棚田。武甲山をバックにした棚田の景色は最強でした。今は彼岸花も咲き、赤色が入ってさらに美しくなっています。ぼっ~とずっと眺めてたい。#里山トラベル pic.twitter.com/noqEKNX6fb
— m.miyamoto | toritoke.inc. (@masa_yco) September 29, 2019
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
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