日本百名山のひとつ「八甲田山」は、岩木山とともに青森県を代表する山です。八甲田山という単独峰はなく複数火山の総称で、八甲田山というと主峰大岳(八甲田大岳)を目指す方が多いです。その魅力はなんといっても広大な湿原で、春〜夏は高山植物、秋は一面の草紅葉を楽しむことができます。
この記事では、紅葉シーズンの八甲田山を実際に歩いたときの様子や行程、難易度、アクセスなどを紹介します。
八甲田山は、青森県青森市の南側にそびえる大岳(標高1,585m)を主峰とする18の山々からなる複数火山の総称で、日本百名山の一つです。「八甲田山」と名がつく単独峰が存在するわけではなく、複数の火山や溶岩円頂丘で構成される火山群を総じて八甲田山と呼んでいます。
八甲田大岳を目指す場合、八甲田ロープウェーを使って縦走するか、酸ヶ湯温泉を起点に周回するルートが人気です。
紹介するのは、酸ヶ湯温泉を起点に八甲田大岳に登る周回ルート。5時間程度の行程で、大岳の大展望や毛無岱の紅葉、地獄湯の沢といった八甲田山の魅力が満載の、初心者向きのコースです。また、下山後には、酸ヶ湯温泉で疲れを癒す楽しみもあります。
スタートとなる「酸ヶ湯温泉」周辺には、酸ヶ湯公共駐車場、酸ヶ湯インフォメーションセンター、公衆トイレがあります。
登山口は、酸ヶ湯温泉を挟んで2つあります。右回りで周回する場合は、バス停からすぐの酸ヶ湯温泉脇の登山口から、逆に左回りで周回する場合は、酸ヶ湯温泉から少し離れた酸ヶ湯公共駐車場や酸ヶ湯インフォメーションセンター近くの登山口からスタートします。ほとんどの登山客は左回りでしたが、今回は、右回りの行程で進みます。
登山口からは、しばらく樹林帯を登っていきます。途中、後ろを振り返ると、酸ヶ湯温泉と駐車場が小さく見え、高度を上げているのを感じます。しばらく歩くと、やがて平坦な道になり、樹林帯を抜けると景色が開けた湿地帯「毛無岱(けなしたい)」にでます。
「毛無岱」は、標高の低い「下毛無岱」と標高の高い「上毛無岱」の2段になっていて、その間に木道階段が設置されています。
まずは「下毛無岱」を進みます。草紅葉の広がる平坦な木道歩きです。右手には八甲田大岳、後ろを振り向けば岩木山が見えます。途中、見晴らしのよい「下毛無岱展望所」があり、多くの登山客で賑わっています。
展望所を進むと、「錦の屏風」といわれる秋の八甲田山を象徴する景色が迫ってきます。
「錦の屏風」に飛び込み、上毛無岱へ続く280段の階段を上って行きます。そして、この階段上部から見下ろす「下毛無岱」の景色が圧巻!極彩色の大パノラマに思わず足を止めてしまいます。
階段を上りきると「上毛無岱」に入り、景色のよい「上毛無岱展望所」を通過していきます。写真正面は、赤倉岳、井戸岳、八甲田大岳です。
やがて、井戸岳と八甲田大岳の鞍部に立つ無人小屋「大岳避難小屋」に到着します。トイレはありますが、水場はありません。八甲田ロープウェーから登るコースとの分岐となっているため、ここから人が増えてきます。
山頂まではあと一息。山頂の手前から見た井戸岳噴火口は、ハート型に見えます。縁起がよさそうなので写真におさめておきましょう!
山頂は、広々としていて、周囲はロープで囲われています。
360度の大パノラマで、東北の山々から下北半島、北海道にいたるまで北の大地を堪能できます。写真は山頂直下から撮ったもので、手前に毛無岱全貌と田茂萢岳(たもやちだけ)にあるロープウェー乗り場、奥に青森市街と陸奥湾方面、右に岩木山がうっすら見えます。
山頂から仙人岱方面に下ります。目の前には、南八甲田連峰の雄大な風景が広がります。
毛無岱と比較すると規模の小さな湿原です。途中、「八甲田清水(辰五郎清水)」という湧き水と、「仙人岱避難小屋」への分岐があります。
「仙人岱」を過ぎると一気に雰囲気が変わります。硫黄のにおいの立ち込めるガレ場の沢は、先ほどまでの穏やかな景色とは対照的です。有毒ガスへの注意喚起を促す看板もあり、八甲田山が火山であることを実感します。
地獄湯の沢を過ぎると再び樹林帯へ。カラフルな紅葉のトンネルを抜けていきます。
ハウチワカエデが、燃えるように赤く染まっています。
途中、有毒ガスで樹木が立ち枯れた一帯があり、異様な雰囲気です。さまざまな顔を持つ八甲田山は、樹林帯歩きでも登山客を飽きさせません。
やがて登山口の鳥居が現れます。鳥居から、そのまま舗装道路を少し下り、右手に入ると「酸ヶ湯温泉」の公衆トイレ横にでます。下山後は、名湯「酸ヶ湯温泉」で汗を流しましょう!
■酸ヶ湯公共駐車場
■JRバス東北 みずうみ号
八甲田ロープウェーを使ったコースもおすすめ。標高1,300mまで一気に上がることができます。
東北屈指の名湯で、160畳もある総ヒバ造りの大浴場「ヒバ千人風呂」が有名です。千人風呂は混浴ですが、男女別の浴場もあります。バス待ちの時間調整にも最適です。
※情報が古くなっている可能性があります。必ずホームページをチェックしてください。
八甲田山は、山頂の大展望、眼下に広がる草紅葉、ハート型の噴火口、地獄湯の沢など、非常に変化に富んだ山でありながら、歩きやすいことが魅力の山です。
一足早く訪れる紅葉や、夏とは違った山の雰囲気を味わいに八甲田山へでかけてみてはいかがでしょうか。
▼登山やハイキングの体作りの参考に
▼登山をサポートしてくれるアイテム
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローされると喜びます。
左が石灰が掘られる前、右が現在の武甲山。山が削られることで悲しみの声がある一方、助けられてる面もあり、全部ひっくるめて武甲山なんだと資料館に立ち寄ってわかった。ちなみにチョコレートにも石灰石が使われてることには驚いた!#里山トラベル #武甲山 pic.twitter.com/0XR6Uy5gnk
— m.miya(宮本将弘) (@masa_yco) February 23, 2020
山と旅を愛するライター。元同僚とゆる登山部を結成したのをキッカケに山にハマる。出没エリアは丹沢、夏山シーズンは長野・山梨方面の山へ。ソロ登山が多くマイペースに花を眺めたり、新たな発見を楽しみに登っている。登山口アプローチのために、そろそろペーパードライバー脱出を考えている…。
富士山(ふじさん)
日本最高峰の独立峰「富士山」世界文化遺産としても登録された日本一の山 【山域】富士山【標高】3,77…
【飯能アルプス】ヤマノススメ巡礼ルートを歩く!レベルアップに最適な縦走登山
標高1000mに満たない低山が集中する奥武蔵エリア。その中でも、低山なのに本格的な縦走登山が楽しめる…
九重山(くじゅうさん/久住山)
九州本土の最高峰「九重山」大地の息吹を感じる山 【山域】九重連山【標高】1,786m 火の国と呼ばれ…
【双六岳】稜線から望む槍ヶ岳が絶景!フォトジェニックな山旅へ
双六岳(すごろくだけ)は、北アルプスの裏銀座縦走コースの主稜線で、槍ヶ岳方面や三俣蓮華岳方面、笠ヶ岳…
隠岐諸島の絶景をさがしに西ノ島の天空の道を歩く
島根半島から北東に約65km。隠岐諸島は島前(どうぜん)と呼ばれる西ノ島、中ノ島、知夫里島(ちぶりじ…
日本百名山と日帰り温泉リスト
友達に連れられて登った山が実は百名山だった…という経験はありませんか?日本百名山とは登山家・作家の深…
【南高尾セブンサミッツ】南高尾山稜の7つのピークを周回するロングトレイル!
「高尾山からステップアップしてロングコースに挑戦したみたい!」 「高尾山の魅力をもっと知りたい!」 …
【弘法山公園】手軽さNo.1の駅チカ低山ハイキング!富士山の眺望と温泉を楽しむ日帰り登山
弘法山公園は、丹沢山塊の南側にある標高235mの弘法山とその周辺の低山の総称です。 関東圏から日帰り…
【武甲山・登山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山
埼玉県秩父市にある武甲山(ぶこうさん)は奥武蔵の最高峰であり、地元の人々に古くから信仰されてきた山で…
美の山(蓑山)ハイキング。梅雨に歩きたいアジサイの名所!聖神社・和銅遺跡を巡る
6~7月にかけての時期は、本格的な夏山シーズンを控えワクワクする時期ですが、梅雨で雨の日が多いためな…
【群馬・根本山】自然のアスレチック!低山ながらスリルと登りごたえのある古道歩き
栃木・群馬両県の百名山に選定されている「根本山」は、古くから信仰の山として親しまれています。根本山へ…
【丹沢・不動尻】一面黄色の世界!早春のハイキングで「ミツマタ」を見に行こう!
春が来て登山・ハイキングに最適なシーズンとなりました。春ハイキングの楽しみのひとつに、山で出合うお花…
トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう
トレイルランと登山は、山を「走る」のか「歩く」のかという違いだけで、似たようなものだと思いがちですが…
【積雪期・谷川岳】雪山初心者におすすめ!日帰りで360度白銀の世界へ
「トマの耳」「オキの耳」の双耳峰(そうじほう)からなる「谷川岳(たにがわだけ)」は、日本百名山のひと…
【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山
気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがた…
【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)
皆野アルプスは破風山をはじめとしたいくつかのピークをつなぐ低山縦走コースです。最高峰の大前山でも65…
【三国山・鉄砲木ノ頭】富士山の絶景を満喫するハイキングコース
丹沢山地の西端、山中湖の近くに位置する「三国山(みくにやま)」は、神奈川県、山梨県、静岡県の3県にま…
【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山
関東屈指の人気の山域、丹沢の東側に位置する大山は、ピラミダルな美しい山容が特徴の山です。古くから山岳…
【鳥取・大山】初心者でも安心!自然と歴史満喫の夏山登山道、行者コースを歩く
鳥取県西部に位置する「大山(だいせん)」は、西日本最大級のブナ林や国の特別天然記念物ダイセンキャラボ…
【棒ノ折山・登山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山
奥武蔵エリアにある「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」は、渓流沿いのコースで沢歩き気分が楽しめる山です。ゴ…
【御嶽山・登山】ロープウェイで紅葉と雲海の絶景へ!黒沢口から剣ヶ峰日帰りピストン
長野県と岐阜県の県境に位置する「御嶽山(おんたけさん)」は、剣ヶ峰を主峰として、摩利支天山(まりして…
熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること
登山において、熊との遭遇は命に関わる危険の一つです。道迷いや滑落は自分である程度は回避できますが、生…
【八甲田山・青森】紅葉が綺麗な山へ!温泉とトレッキングが楽しめる東北の名山
日本百名山のひとつ「八甲田山」は、岩木山とともに青森県を代表する山です。八甲田山という単独峰はなく複…
【至仏山登山】尾瀬のシンボル、花の百名山を日帰りで楽しむ最短コース
尾瀬ヶ原の西側に位置し、燧ケ岳とともに尾瀬のシンボルとなっている至仏山。高山植物の宝庫としても知られ…
【双六岳】稜線から望む槍ヶ岳が絶景!フォトジェニックな山旅へ
双六岳(すごろくだけ)は、北アルプスの裏銀座縦走コースの主稜線で、槍ヶ岳方面や三俣蓮華岳方面、笠ヶ岳…
【唐松岳・登山】北アルプス初心者も挑戦しやすい花と絶景の山!ゴンドラ・リフトでアクセスする1泊2日の山旅
唐松岳(からまつだけ)は北アルプスの後立山連峰にある標高2696mの山です。 ゴンドラとリフトで標高…
【茅ヶ岳登山・登山】日本百名山の生みの親・深田久弥終焉の地を歩く
山梨県北杜市と甲斐市にまたがる「茅ヶ岳」(かやがたけ)は、日本百名山を選定した深田久弥氏の終焉の地と…
【会津駒ヶ岳・登山】花と湿原広がる天上の楽園へ!滝沢コース日帰りピストン
尾瀬国立公園に属する「会津駒ヶ岳」は、日本百名山に数えられる南会津の名峰です。なだらかな山容が特徴的…
【武甲山・登山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山
埼玉県秩父市にある武甲山(ぶこうさん)は奥武蔵の最高峰であり、地元の人々に古くから信仰されてきた山で…
登山の虫よけ対策に効果的な成分は?ディートやイカリジンの成分の違いや虫対策グッズを紹介
夏山シーズンで注意したいことの一つが虫刺されです。山の中には蚊やアブの他にも、マダニやハチなど刺され…