気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがたけ)です。人気の山とはいえ、「低山なのにけっこうキツい」「クサリ場があって初心者には危険」という感想も聞かれますが、実際にはどんな山なのでしょうか?
この記事では初心者でも楽しめる伊豆ヶ岳のルートや難易度について紹介します。また、伊豆ヶ岳から足腰の神様「子ノ権現(ねのごんげん)」を目指す縦走コースを実際に歩いてみたので、ぜひ参考にしてください。
伊豆ヶ岳は埼玉県飯能市にある標高851mの山。駅からのアクセスが良く、低山ながら登りごたえのあるコースが魅力で、奥武蔵の中でも一二を争う人気の山です。1年を通して登ることができ、山頂や尾根道からは美しい展望が開けています。
また、縦走ルート上には足腰守護の神仏である「子ノ権現天龍寺」があり、登山者に人気のスポットとなっています。伊豆ヶ岳の名前の由来は諸説あり、案内板によると、
など、色々な説があるようです。
伊豆ヶ岳は埼玉県飯能市に位置し、登山の起点となるのは西武秩父線の「正丸(しょうまる)駅」です。池袋駅から西武池袋線直通で、正丸駅までの所要時間は1時間30分ほど。
車でアクセスする場合は、正丸駅の隣のコインパーキングが便利です。駐車できる台数は20台ほどなので、早めに到着することをおすすめします。
伊豆ヶ岳は、正丸駅から山頂への往復であれば初心者でも問題なく登れる山です。ただし縦走コースになるとアップダウンの連続となるため体力が必要です。
危険箇所は山頂直下にある「男坂」。ここは岩の急斜面を登る長いクサリ場です。しかし落石の危険があるため現在はロープが張られ、実質的に通行禁止となっています。ほとんどの登山者はもう一つの「女坂」のほうを登るので危険はありません。
なお、伊豆ヶ岳から子ノ権現まではエスケープルートがないので、縦走コースを目指す場合は早めの出発を心がけましょう。
主な3つのコースを紹介します。
伊豆ヶ岳から子ノ権現を目指す縦走コース(紹介したコースのうち2番目)を実際に歩きました。
スタートとなる西武秩父線正丸駅には、改札を出て左手にトイレがあります。この先、子ノ権現までトイレがないのでここで済ませておきましょう。また、正丸駅の周辺にはコンビニエンスストアがないので、必要な買い物は到着前に済ませておいてください。
伊豆ヶ岳の登山口へは、駅の右手の階段を下り20分ほど車道を歩きます。
車道がカーブしているところに登山口(馬頭観音堂)があります。ここからしばらくは沢沿いの登山道です。傾斜がゆるく歩きやすい道が続きます。
実谷のふたまたの標識は見逃しやすいので注意しましょう。右へ進む「名栗げんきプラザ」はかめ岩・大蔵山方面で、伊豆ヶ岳までは遠回りになります。まっすぐ行くと伊豆ヶ岳へショートカットできますが、急登が続く道です。今回はまっすぐ進み、五輪山へと向かいました。
雑木林の中の荒れた急坂を登り、一気に高度を上げると開けた場所に出ます。縦走路の一つ目のピーク、五輪山(標高770m)に到着です。休憩ベンチが4つほどありますが、展望はありません。
五輪山から下るとすぐに、伊豆ヶ岳山頂へ向かう「男坂」「女坂」の分岐があります。正面にそびえる岩の壁が男坂で、右側からゆるやかに登る道が女坂です。男坂は落石が多く転落事故も起こっていることから基本的に通行禁止です。女坂はクサリ場など危険な箇所はなく、安全に伊豆ヶ岳山頂へ登れます。
登山開始から1時間40分ほどで伊豆ヶ岳(標高851m)の山頂に到着しました。山頂は広く、腰掛けて休憩できるような岩があります。西側の眺望が開けていて、武甲山や武川岳を望めます。晴れていてもさすがに伊豆方面までは見えませんね。
伊豆ヶ岳から下り、登り返して20分ほどで古御岳(標高830m)に到着しました。ここには小さな屋根付きの休憩所があります。
古御岳からさらに30分ほどで高畑山(標高695m)に到着です。この辺りからはアップダウンがあまりない平坦な道が多くなります。杉林からも光が差し、さわやかな雰囲気の中を進みます。
途中で巨大な送電線鉄塔が現れました。この辺りが登山ルートの中間地点。急登がないため、キツくない分単調に感じるかもしれませんが、時間を確認しながら着実に進みましょう。
しばらく林道と並行した登山道を進むと車道に出ます。子ノ権現方面へふたたび山に入ると「天目指峠」の看板があります。
天目指峠という名前は、「天目(アマメ)」=豆柿(親指大の小さな柿)が豊富に採れること、そして「指(さす)」(焼畑農業のこと)を合わせて名づけられたとのことです。子ノ権現から近い場所なので仏教に関連した名前なのかと思っていましたが、まったく違うことに驚きました。
子ノ権現に到着する手前の山中に面白いものがあるので、ぜひ立ち寄ってみてください。巨大な白い手のモニュメントです。これは彫刻家の西雅秋氏が制作したもので、子ノ権現天龍寺に寄贈されたものだそうです。
Googleマップからも確認できるほど巨大で不思議な見た目をしているため、過去にテレビで取り上げられたこともあります。実際に見ると人の身長よりも大きく、指に腰掛けたり手のひらに乗ったりできますよ。子ノ権現へお参りする際にぜひ訪れたい珍スポットです。
子ノ権現は天台宗の山寺で、正式には大鱗山雲洞院天龍寺といい、武蔵野観音第三十二番札所です。標高640mの地点にあり、足腰の神として知られているため登山者に人気があります。いつまでも足腰が丈夫でいられるように、私もお参りしました。
境内には1足2トンともいわれる、日本一の鉄の大わらじが置かれています。大きな赤い仁王像、天然記念物の二本杉など、その他の見どころも多数。社務所では登山リュックの形をした「登山守」(500円)をいただくこともできます。
子ノ権現から車道を進むとすぐに吾野駅への分岐があり、少し進んだところに西吾野駅への分岐があるので、道を間違えないように注意しましょう。西吾野方面へ薄暗い杉林を下ると、民家が点在する「小床集落」です。そこからは車道を歩き、ゴールの西吾野駅に到着します。
伊豆ヶ岳は知名度が高く、気軽に登れる山というイメージでしたが、伊豆ヶ岳までの急登と子ノ権現までの細かいアップダウンのある縦走路に、予想以上に体力を削られました。
今回歩いたコースのようにいくつも山をつないだ低山縦走コースでは、より奥深い山行が楽しめてレベルアップにもつながります。初心者からベテランまで楽しめる伊豆ヶ岳登山をぜひ楽しんでみてくださいね。
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山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
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