山梨県北杜市と甲斐市にまたがる「茅ヶ岳」(かやがたけ)は、日本百名山を選定した深田久弥氏の終焉の地として有名です。手軽なハイキングコースでありながら、富士山や南アルプス、奥秩父連峰へと連なる抜群の眺望も魅力です。隣接する「金ヶ岳」(かながたけ)も含め、山容が八ヶ岳に似ていることから「ニセ八ツ」という俗称もあります。
この記事では、【深田記念公園をスタートし、深田久弥終焉の地を経て、茅ヶ岳山頂を目指すコース】を実際に歩いてみた行程や魅力を紹介します。
茅ヶ岳は山梨県の北杜市と甲斐市にある奥秩父山地の南側にある山です。日本百名山を選定した深田久弥氏が茅ヶ岳の登山中に脳卒中で死去した山でもあり、「深田久弥終焉の地」と呼ばれています。
その遺徳を偲び、韮崎市と韮崎市観光協会、地元山岳会が建てた記念碑がある深田記念公園が麓にあります。茅ヶ岳は、手頃なハイキングコースとして人気があり、山頂からは富士山、北アルプス、南アルプスなど、数々の日本百名山の絶景を堪能できます。
複数ある茅ヶ岳の登山ルートのなかで深田記念公園からスタートするコースは、登山道入口までのアプローチがよく、深田氏の足跡をたどれるため、深田ファンおすすめのコースです。利用者が多く、山頂までの標準コースタイムが2時間半と程よいため、初心者でも安心して登山を楽しめます。
現在、新型コロナウイルス感染症対策のため、深田記念公園を起点に「登りは女岩ルートで 下りは尾根ルートで」という周り方が推奨されています。
深田記念公園駐車場の奥に、深田記念公園と登山道入口があります。深田記念公園は下山後に寄ることにして、山頂を目指します。
しばらくは、道幅の広い緩やかな坂を進みます。緑に囲まれた気持ちの良いハイキングコースです。
途中、舗装された林道(前山大明神線)を横断します。その後もなだらかな登山道が続きます。駐車場と山頂の標高差が約750mあるのになだらかな道がこんなに続いているので、後半が心配になります。(この後、不安は的中します。)
スタート地点と山頂の中間くらいのポイントに「女岩」があります。座れるスペースがあるので休憩をとりましょう。
女岩付近は落石で立入禁止のため、迂回ルートで山頂を目指します。
ここからは、いきなり急登になります。岩がゴロゴロしていたり、足元が滑りやすくなっているため、少し注意が必要です。
岩場ゾーンが終わると、途中からつづら折りになり歩きやすくなります。ただし、傾斜は相変わらずきついため、自分のペースで登りましょう。やがて、「女岩のコル」といわれる尾根に出ます。
尾根沿いに少し進むと、登山道右手に深田久弥氏の慰霊碑が立っています。
慰霊碑には、「深田久弥先生終焉之地 1971年3月21日11時23分」と亡くなられた日時が刻まれています。深田記念公園にある案内板によると、深田氏は、親しい山仲間と山頂に向かっている途中、突然脳溢血(のういっけつ)で倒れたそうです。山中の緑に囲まれた穏やかな場所でした。
しばらく故人を偲んだのち、山頂へ向かいます。山頂直下は、手を使って登るような岩場です。途中、木々の隙間から富士山が望めました。
慰霊碑から10分ほどで山頂に到着です。実際に登ってみると、深田氏が本当に山頂までわずかの地点で倒れたということを実感するでしょう。
山頂には、これまでの疲れが吹き飛ぶ360度の大パノラマが広がっています。2つの山頂標識と立体展望盤があります。休憩スペースは充分ありますが、開けている分日陰がないため、熱中症には注意が必要です。
【南東方向】
まず目に飛び込んでくるのが富士山。甲府盆地の先にどっしりと構えています。
【西方面】
南アルプスの眺めが抜群です!悪沢岳、農鳥岳、間ノ岳、北岳、鳳凰三山、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳が確認できました。
拡大:鳳凰三山(薬師岳、観音岳、地蔵岳)の後ろに、間ノ岳、北岳が頭を出しています。地蔵岳のオベリスクが目立ちます。
拡大:雄々しい山容の甲斐駒ヶ岳。
【北方向】
隣接する金ヶ岳、その後ろに八ヶ岳連峰が見えます。金ヶ岳は、茅ヶ岳と一緒に縦走する人も多いです。
【北東方面】
金ヶ岳の東方向には瑞牆山、金峰山といった奥秩父連峰が広がります。地蔵岳のオベリスク同様、金峰山の五丈石も特徴があるので判別しやすい山です。
拡大:金峰山の五丈石。
正直言って、この景色は想像以上でした。夏場でもこれほど眺めが抜群なので、空気の澄んだ季節はどれほど素晴らしいのか、と期待しないではいられません。
下山道は、防火帯の「尾根ルート」を下ります。途中、千本桜公園方面に下るルートとの分岐があるので見逃さないように。
人が少なく静かですが、尾根ルートも急峻な下りです。そして、下りに飽きてきたころ、林道交点に出ます。往路(女岩ルート)の林道交点よりも100mほど上部の地点で、林道を下り、往路の登山道と合流します。
深田氏が茅ヶ岳登山中に逝去された後、その功績を称えて造られた公園です。記念碑、案内板、東屋、ベンチがあります。「深田久弥と茅ヶ岳」という案内板には、茅ヶ岳での最期の様子などが細かく記されています。また、記念碑には「百の頂に百の喜びあり」と深田氏の残した名言が刻まれています。
深田氏の没後50余年という歳月を経ても色褪せない「日本百名山」。深田氏の聖地をめぐり、また一つ「喜び」を求めて「頂」に登ろう、という励みになるのではないでしょうか。
韮崎駅から、「茅ヶ岳みずがき田園バス 韮崎深田公園線」または「韮崎市民バス 穂坂線」で「深田記念公園」下車。
内風呂から南アルプスが間近に見えます。施設の展望台からは、富士山、南アルプス、八ヶ岳、茅ヶ岳が一望できます。
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山と旅を愛するライター。元同僚とゆる登山部を結成したのをキッカケに山にハマる。出没エリアは丹沢、夏山シーズンは長野・山梨方面の山へ。ソロ登山が多くマイペースに花を眺めたり、新たな発見を楽しみに登っている。登山口アプローチのために、そろそろペーパードライバー脱出を考えている…。
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