八幡平から岩手山まで続く「裏岩手縦走路」は、本州でもっとも早く紅葉が見られる東北有数の紅葉スポットです。紅葉が特に美しい三ツ石山(みついしさん)は日帰り可能ですが、移り変わる裏岩手連峰山の景色を楽しむなら、避難小屋に泊まり岩手県最高峰の岩手山(いわてさん)を目指す2泊3日のコースがおすすめです。
岩手山周辺の避難小屋はきれいで使いやすいので、うまく活用すれば充実した山旅になりますよ。アルプスより一足早く紅葉登山を楽しみたい方は、ぜひ参考にしてください。
松川温泉〜三ツ石山荘~岩手山コースは、八幡平(はちまんたい)山頂から岩手山まで続く「裏岩手縦走路」の一部です。裏岩手縦走路は総距離37kmのロングトレイルで、紅葉の見頃は9月下旬から10月上旬頃。一般的には八幡平から岩手山まで2泊3日〜3泊4日が目安です。
今回私が訪れたのは10月中旬だったため、紅葉がすでに終わりかけでした。天気予報もあまり思わしくなかったため、1日目のコースが短い松川温泉からのルートを設定しました。
松川温泉からのコースは、いきなり37kmのロングコースはハードルが高いと考えている人におすすめのコースです。もし2日目で下山したい場合も、松川温泉登山口や網張コースのリフトなどのエスケープルートが利用できるので柔軟に動けますよ。
裏岩手連峰は岩手県の八幡平市、雫石町、滝沢市にまたがる場所に位置します。スタート地点の松川温泉へは、盛岡駅から岩手県北バスで2時間です。朝のバスは1本しかないので盛岡駅には余裕をもった到着をおすすめします。
岩手山に登る主要コースは7種類ありますが、公共交通機関でアクセスできる登山口は限られているためマイカーでのアクセスがほとんどです。
バスでアクセスするのであれば、今回利用した松川温泉バス停か、もしくは県民の森バス停で下車して「七滝登山口」が利用できます。それ以外の登山口は最寄りのJR駅からタクシー移動となります。
全行程で危険な箇所や難しい箇所はありません。2日目に切通の分岐で御花畑コースと鬼ヶ城コースに分かれますが、鬼ヶ城コースは急崖の岩場が続く上級者向けのコースなので、初心者には御花畑コースがおすすめです。
また、避難小屋に宿泊のためマット、シュラフ、調理用具、食料は持参する必要があるので、大型のザックとそれを背負って歩く体力が必要です。
今回は松川温泉から三ツ石山荘へ、そこから岩手山山頂を目指すルートを2泊3日で歩きました。
盛岡駅からバスで2時間。松川温泉 峡雲荘の前にある松川温泉バス停で下車します。辺りには硫黄の香りが立ちこめ、松川地熱発電所方面へ下るといくつもの場所から蒸気が噴き出していました。
松川地熱発電所を横目に橋を渡ったところが三ツ石山への登山口です。晴れていたら同じく松川温泉から源太ヶ岳へ向かうルートも視野に入れていましたが、この日の天気は雨。展望が望めないので、最短で三ツ石山荘まで行ける三ツ石登山口を選択しました。
三ツ石登山口はスタートするといきなり急登が待ち構えています。整備された丸太の階段がしばらく続きますが、1時間ほど歩くとオオシラビソの樹林帯となり、ゆるやかな木道に。
この道は雨が降っていなくてもぬかるみが多いので、ゲイターの着用がおすすめです。
登山口から2時間ほどで三ツ石湿原に出ると、1日目に宿泊する「三ツ石山荘」が見えました。ここは通年利用できる避難小屋で、収容人数は22名です。
小屋から5分ほど歩いたところに水場がありますが、枯れることもあるので事前に情報を確認しましょう。
避難小屋とはいえ、2階部分まであるとても立派な小屋です。中央には薪ストーブがあり、宿泊者が自由に使えるようになっています。(薪は用意されていません。)
予定では小屋で昼食を摂ったあと、ここから30分の三ツ石山に登ろうと思っていたのですが、天候が悪化したため断念し小屋で過ごすことに。この日は他の宿泊者の方と情報交換をしたり、次の日の行程を地図で確認したりしてのんびり過ごしました。
翌日は朝からすっきりと晴れ、絶好の登山日和となりました!三ツ石山荘を出発し、裏岩手縦走路を岩手山方面へ向かいます。
大松倉山への道は展望の良い尾根道です。紅葉はほとんど終わってしまったものの、朝日を浴びながら遠くに岩手山を望む縦走路はとても気持ちいいものでした。
犬倉山、黒倉山を経て切通しに到着しました。ここで「鬼ヶ城コース」「御花畑コース」の2つに分かれ、岩手山の9合目である不動平(ふどうたい)でふたたび合流します。
ここまで来ると、裏岩手縦走路の醍醐味ともいうべき岩手山の荒々しさが顔を見せ始めます。切通しから見えるワイルドな岸壁は赤倉岳と屏風尾根です。
切通しから御花畑方面へ進むと、硫気ガスが吹き出し硫黄のにおいがするダイナミックな大地獄谷が広がります。この辺りはガスが出て危険なのでルートを外れないようにしてください。
大地獄谷を過ぎ、木道を進むと、植物の群落がある御花畑に到着します。冬が間近なので当然花は咲いていませんが、冬支度を始めているかのような白樺のコントラストがきれいです。
御花畑の分岐からは、火口湖である御苗代湖へ続く散策路もあります。ここから岩手山9合目までは急登が続くので頑張りどころです!
9合目の不動平避難小屋まで来たら、ザックをデポして山頂のお鉢へ向かいます。お鉢に出て左回りに歩いていくと岩手山の最高峰、薬師岳です。
岩手山山頂(2038m)に無事登頂しました!それまで真っ白く覆っていたガスが一瞬だけ晴れ、ここまで歩いてきた裏岩手の山々や盛岡の市街地を見渡せました。岩手山のお鉢巡りは1周1時間ほど。お鉢からは噴火口の全容が見られ、お鉢の中にある岩手山神社奥宮へも歩いて入ることができます。
この日は天候が悪化したのでお鉢巡りはせず、急いで9合目まで下りました。合目から宿泊する八合目避難小屋までは15分ほどです。
八合目避難小屋は7月から10月まで管理人が常駐する有人小屋で、1泊の料金は1,700円です。お湯やカップラーメンの販売はあるものの、食料や寝具は持参する必要があります。
私はこの小屋に10回以上宿泊した経験があるのですが、この小屋の魅力は薪ストーブと管理人さんの人柄を含めた雰囲気の良さです。この日も薪ストーブで暖を取りながら管理人さんや他の宿泊者の方と語らい、楽しく過ごしました。
3日目に8合目の避難小屋から柳沢登山口へと下ります。コースタイムは2時間半ほど。標高が低いところではまだ紅葉がきれいに色づいていたので、最後まで楽しく歩けました。
柳沢登山口からはタクシーでIGRいわて銀河鉄道線の滝沢駅へ。そこから列車で盛岡駅まで戻りました。
岩手山は登るコースによって表情を変え、何度登っても新しい発見がある山です。表側から見る端正な姿とは違い、裏岩手の火山地帯や岩稜帯はダイナミックで迫力があります。
今回の山行ではシーズンを過ぎてしまいましたが、裏岩手のすそ野に広がる燃えるような紅葉を眺めながらの縦走はとても贅沢で歩きごたえがありますよ。この記事を参考に、ぜひ登ってみてください。
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
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