「トマの耳」「オキの耳」の双耳峰(そうじほう)からなる「谷川岳(たにがわだけ)」は、日本百名山のひとつ。山頂からは、標高2,000m弱の山とは思えない大パノラマが広がります。ロープウェイを使用すれば登山初心者でも登りやすく、また首都圏からのアクセスの良さから、登山道に行列ができるほど人気の山です。
年間を通じて魅力のある山ですが、この記事では積雪期の谷川岳登山を紹介します。ロープウェイを利用し「天神平」から谷川岳山頂を目指す、雪山初心者でも挑戦しやすい「天神尾根ルート」を歩きます。
「谷川岳」は、群馬県と新潟県の県境「三国山脈」にある「谷川連峰」の盟主。太平洋側と日本海側の空気が交わる気候の変化の激しいエリアですが、その特異性から、標高1,977mの山でありながら1,500m付近で森林限界となり、それより先では高山で見られる植物や景色が広がります。
山頂部には穏やかな景色が広がっていますが、その反面、一ノ倉沢などの急峻な岩壁を有し「魔の山」といわれる側面があることも特徴で、ハイキングからクライミング、沢登り、スキー、観光とバラエティに富んだアクティビティが楽しめる人気の山です。
なお、谷川岳の積雪期は、11月上旬〜4月中旬頃です。
季節を問わず、谷川岳を初めて登るのに定番のコースです。谷川岳ロープウェイ「天神平」からスタートして、なだらかに起伏する天神尾根を歩き、谷川岳山頂の「トマの耳」「オキの耳」へ。下山は同じコースを下ります。快晴に恵まれれば、日帰りで白銀の世界を満喫できるでしょう。
まずは、登山のスタート地点となる「天神平(谷川岳天神平スキー場)」を目指します。谷川岳ロープウェイで山麓の「土合口駅」(標高746m)からスキー場のある「天神平駅」(標高1,319m)まで高低差約570mを約10分で上がります。スキー場に訪れているスキー客も一緒に移動します。
ロープウェイを降りるとスキー場があります。ゲレンデの横でアイゼンを装着し、準備を整えて出発します。登山道にはトレースがしっかりつき、また登山客が連なっているため道迷いの心配はありません。目の前には、目指す双耳峰の谷川岳山頂が望めます。
スキー場の脇の登山道を登っていきます。最初からいきなりの急登で辛いかもしれません。少し歩くと樹林帯になりますが、景色は開けています。やがて、天神峠からの合流点である「天神尾根」と交わります。
尾根道に出ると、起伏が緩やかになり歩きやすくなりますが、1ヶ所、急斜面を下るトラバースがあるので気を付けましょう。
雪の下に埋もれていて使用不可です。積雪量の目印となる赤い柱だけが立っていました。豪雪地帯であることを実感します。
「熊穴沢避難小屋」を過ぎると、本格的な登りになります。急登で辛いですが、このあたりから森林限界を越えるため、視界は完全に開けます。後ろを振り返れば、燧ヶ岳(ひうちがたけ)、至仏山(しぶつさん)、上州武尊山(じょうしゅうほたかやま)、赤城山など上州の名峰が一望でき、高度を上げていることが感じられるでしょう。
展望のよい岩場です。急登を登り切ったあとの癒しスポットで、登山客で賑わっています。少し先には「天神ザンゲ岩」もあります。
しばらくは目印など人工物が何もない、青と白の世界。コントラストが眩しいです。日焼け止めとサングラスは必須ですね!
左手に見える「俎嵓(まないたぐら)」への稜線が美しいです。「俎嵓」は本来谷川岳になる予定だった山ですが、国土地理院の誤記により現在の谷川岳になりました。その左奥には浅間山が望めます。
熊穴沢避難小屋から1時間以上登り続けて、肩ノ小屋に到着。冬季は、無人の避難小屋になっており、トイレは使えません。また、ここは日本三大急登のひとつ「西黒尾根」との分岐点です。「西黒尾根ルート」は、ロープウェイを使わずに谷川岳を目指す強者ルートです。
ケルンや標識には「エビの尻尾」が付着していて、雪山らしい風景が堪能できます。
なお、肩ノ小屋の正面は、本ルート最大の写真スポットなので見逃さずに!
肩ノ小屋の西側から上越国境である谷川連峰の主脈が伸びています。この尾根道を進むと、万太郎山、仙ノ倉山、平標山(たいらっぴょうやま)を経て、三国峠へとつながります。個人的には、いつか縦走したい憧れの稜線です。写真左奥に浅間山、右奥に苗場山が望めます。
しばらく絶景を堪能したあと、山頂へ向かいます。肩ノ小屋から「トマの耳」まではすぐの距離です。
天神平スキー場を出発して2時間半くらいで、最初の山頂「トマの耳」に到着です。また、トマの耳には「薬師岳」、オキの耳には「谷川富士」という別称がそれぞれありますが、国土地理院の誤記により、この2つが「谷川岳」と呼ばれるようになりました。ちなみに、「トマ」は「手前」、「オキ」は「奥」という意味があるようです。「トマの耳」からは、上信越の山をはじめ360度の大パノラマが広がっています。
「トマの耳」から「オキの耳」までは10分くらいです。2つの峰の尾根間は、道幅が狭く登山者とのすれ違いには気を付けましょう。また、、雪庇(せっぴ)のある東側斜面(写真左)に立ち入らないように注意が必要です。
谷川岳の山頂「オキの耳」は、「トマの耳」より14mほど高い場所にあります。
「オキの耳」からも360度の大パノラマが楽しめます。空気の澄んだ冬には、真っ青な空と、真っ白な山並みがどこまでも続き、ため息が出るほどの美しさです。雪山登山の醍醐味は、夏では味わえないこの凛とした景色を堪能できることではないでしょうか。
下山は、登って来た道を引き返します。下りは渋滞が分散されていて、快適です。ただし、下山時は疲労が蓄積しており、それに加えて気が緩みやすいため、思わぬ大ケガにつながりかねません。油断せず最後まで気を引き締めて下りましょう。
雪山は、夏と違い天候や雪の状態によって所要時間が左右されるため、時間に余裕を持った計画をしましょう。また、谷川岳は天候の変化の激しい山です。早めに下山するよう心がけましょう。
谷川岳の麓にあり、群馬県を代表する温泉地です。日帰り温泉も充実しています。
※情報は変更されている可能性があります。最新の情報をご確認ください。
【谷川岳インフォメーションセンター】
谷川岳周辺の自然や資料を紹介する展示が見られます。
ホームページ:谷川岳インフォメーションセンター
【群馬県谷川岳登山指導センター】
登山届・登山計画書の受理のほか、電話での問い合わせに対応しています。
TEL:0278-72-3688
今回紹介した天神尾根コースは、標高差700m未満、コースタイムは往復4時間半程度と雪山経験のある方なら問題なく登れるコースです。天候に恵まれたため、装備も軽アイゼンとトレッキングポールのみで問題ありませんでした。そのうえ、空気の澄んだ冬の谷川岳は360度の大絶景!無理せず雪山の醍醐味が味わえる、非常に満足度の高い山です。
ただし、冒頭でも記述したとおり、非常に気象条件が厳しいエリアでもあります。天候確認はもちろんのこと、適切な装備と準備を万全に行って快適に雪山登山を楽しみましょう。
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今日は安曇野市にある光城山へ。頂上できんぴらごぼうと豆乳チーズのライスバーガーを作りました。初めてでしたが、上手く焼けたので良しとします。春の山桜で有名な山で、毎年桜のトンネルを歩くのを楽しみにしてます。時期は4月中旬ぐらい、また行きます。#里山トラベル pic.twitter.com/WroxFNHpSI
— m.miya | toritoke.inc (@masa_yco) March 21, 2023
山と旅を愛するライター。元同僚とゆる登山部を結成したのをキッカケに山にハマる。出没エリアは丹沢、夏山シーズンは長野・山梨方面の山へ。ソロ登山が多くマイペースに花を眺めたり、新たな発見を楽しみに登っている。登山口アプローチのために、そろそろペーパードライバー脱出を考えている…。
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