鳥取県西部に位置する「大山(だいせん)」は、西日本最大級のブナ林や国の特別天然記念物ダイセンキャラボクなどを有する自然豊かな山です。剣ヶ峰、弥山(みせん)、天狗ヶ峰、三鈷峰(さんこほう)など複数ピークで構成された独立峰で、裾野を広げた優美な山容は「東の富士山、西の大山」と称されるほど。山頂からは雄大な自然と、そのむこうに日本海が一望できます。
また、古くから信仰の対象として崇められてきた歴史や文化も魅力です。最高峰の剣ヶ峰(標高1,729m)は、崩壊により立入禁止となっているため、西側の弥山(標高1,709m)を目指します。(現在、立ち入り禁止ではなく、「縦走路のご利用はお控えください」と注意喚起されています)
山頂の弥山へは、「夏山登山道」「行者コース」の2つのコースがあり、五合目付近で合流します。今回は、往路にメジャーな「夏山登山道」、復路に大山寺を経由する「行者コース」で弥山を目指すコースを紹介します。
経路:大山ナショナルパークセンター → 夏山登山道 → 山頂 → 石室 → 行者コース → 大山寺 → 大山ナショナルパークセンター
大山寺バス停のある「大山ナショナルパークセンター」は、トイレ、シャワー、コインロッカーなど大山登山の起点となる充実した施設です。
「大山ナショナルパークセンター」からは、大山寺に続く「御幸参道本通り」を抜けていきます。2、3分歩きアンテナショップ「大山時間shop」を右に曲がり、車道にでると「南光河原駐車場」が見えてきます。「夏山登山口」は駐車場のすぐ先です。
車道から脇道へ入っていきます。
一度大山寺の境内に入り、石畳の階段を上っていくと、国指定重要文化財の「大山寺阿弥陀堂」があります。大山寺に現存する寺院の中では最古の建築物です。
「大山寺阿弥陀堂」を過ぎ、ブナ林のなかの木道階段を上っていきます。夏山登山道の道はまっすぐで、一合ごと、さらに100mごとにも標識があり、道迷いの心配はありません。登りが続くので、疲れたら上を向いてブナの息吹を感じると癒されますよ。
2020年に改修工事が完了したばかりの、抜群の大山北壁展望スポットです。白くむき出しになった荒々しい岩肌は圧巻で、三鈷峰、ユートピア避難小屋、天狗ヶ峰、剣ヶ峰、弥山が一望できます。携帯トイレブースがあります。
「六合目避難小屋」からは森林限界となり、風景は一気に変わります。ただし、本格的な登山道になり岩場もでてくるため、景色にばかり気を取られず足元にも注意が必要です。道幅も狭いため、登り下りで譲り合って進みましょう。
完全に展望が開けると、日本海を見下ろす空中散歩となります。
米子平野、弓ヶ浜、中海、日本海が一望できます。登っていくにつれ、見上げていた北壁もどんどん目の前に迫ってくるため、より雄大さを感じるでしょう。
標高1,600m付近から山頂までは、人の背丈ほどのダイセンキャラボクが広がる木道歩きになり、傾斜は緩やかです。木道は途中で左右に分岐していて、ダイセンキャラボクの純林を1周するルートが整備されています。
大山のダイセンキャラボク純林は、キャラボクの群落として日本最大を誇っていて、国の特別天然記念物に指定されています。秋には、真ん中に種のようなものがある不思議な赤い実をつけます。
山頂には、頂上碑とデッキ、大山頂上避難小屋があります。この日は絶好の登山日和でデッキは大勢の登山客で賑わっていました。「大山頂上避難小屋」は、六合目避難小屋同様、2020年に改装したばかりで綺麗です。冬期以外は、売店が営業しています。
山頂からは、米子平野や日本海が一望できますが、剣ヶ峰方面は規制ロープが張られているため、視界が一部さえぎられます。
復路は、山頂から「石室」を経由しながらダイセンキャラボク純林の木道を歩きます。こちらの眺めも絶景で、特に弓ヶ浜の美しい曲線がよく見渡せます。途中に、かつて避難用として造られた「石室」があります。その近くには「地蔵ヶ池」と「梵字ヶ池」があり、小さな湿原のようです。
往路で通った木道と合流して、「行者谷分かれ」までは往路と同じルートを下ります。
六合目避難小屋を過ぎて「行者谷分かれ」から「行者ルート」に入ります。樹林帯の急勾配の階段で、より自然を感じる登山道です。
一気に下ると「元谷」というガレ場の河原にでます。河原を横切って進みますが、岩に赤いペイントがされているので、その通りに行けば道迷いや危険はないでしょう。
そそり立つダイナミックな北壁は圧巻の迫力です。激しい崩壊により形成された北壁は、冬季アルパインクライミングのメッカとされています。険しさと穏やかさを併せ持つ大山も魅力のひとつです。
元谷を過ぎると分岐があり、登山道は左へ進みます。右の道は工事用道路のため通行禁止です。間違えやすいポイントのため、注意しましょう。
大山寺周辺も歩いてきましたので紹介します。
やがて、国の重要文化財である「大神山神社奥宮」の裏手にでます。社殿は全国最大級の権現造りで壮大です。※2022年〜2025年(予定)修繕工事中です。
興味深いのが、大神山神社の神門です。「後向き門」(逆門)といわれ、かんぬきが外側についています。1875年の移設の際に向きを調整しなかったため、逆向きに立っていると言われています。
奥社から大山寺まで、日本一長い石畳の参道を下っていきます。静粛で神秘的な雰囲気に身も心も癒されます。
参道の途中に、「賽の河原・金門」への分岐があるので立ち寄ってみます。標識に従って賽の河原へ下りていくと、賽の河原越しに北壁が見えます。下流側の巨大岩を割ったような岸壁が「金門」で、かつて神門とされていたパワースポットです。
山岳信仰に帰依する修験道の修行道場として栄えた大山寺。開山1300余年の歴史を持つ古刹です。本社と奥宮、2社両参りをして「大山さんのおかげ」を受けます。
境内には「宝牛(たからうし)」の像があります。撫でれば願いが叶うという魔法の牛なので、撫でてご利益アップを狙いましょう!
最後は、お土産屋や食事処、カフェなどが並ぶ「御幸参道本通り」を通って、スタート地点の「大山ナショナルパークセンター」に戻ります。時間があれば、「大山ナショナルパークセンター」の目の前の「大山自然歴史館」に立ち寄ってみるのもいいでしょう。大山の自然や歴史について展示している資料館で、入館料は無料です。
登山道がよく整備され人も多いため、道迷いの心配がなく安心して登山が楽しめます。麓から望む大山は雄大なので標高差を感じますが、予想よりも歩きやすく比較的すんなり登れました。ほとんどの登山者は、軽めのザックにトレッキングポールという軽装備です。
訪れた日は、ちょうど地元の小学校の登山学習が行われていて賑やかでした。子どもから若者、ご年配の方まで幅広い年齢層の方に人気です。見どころや魅力がいっぱいで、登り甲斐も感じられるため、登山初心者にたいへんおすすめの山です。
▼登山やハイキングの体作りの参考に
▼登山をサポートしてくれるアイテム
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローされると喜びます。
今日の午前は長野県大町市にある鷹狩山を歩いてきました。標高1164mの山頂からは大町市とドーンと聳える北アルプスの絶景が。朝食に米粉パンのホットサンド、帰りに十割そばをいただきました。まだ早いけど良き一日でした☀#里山トラベル pic.twitter.com/POodfBDfT0
— m.miya | marketing (@masa_yco) May 29, 2022
山と旅を愛するライター。元同僚とゆる登山部を結成したのをキッカケに山にハマる。出没エリアは丹沢、夏山シーズンは長野・山梨方面の山へ。ソロ登山が多くマイペースに花を眺めたり、新たな発見を楽しみに登っている。登山口アプローチのために、そろそろペーパードライバー脱出を考えている…。
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