山雑誌では、毎年必ず単独行の特集が組まれるほど、ひとり登山の人気は高まっています。ひとり登山は、グループ登山とは違った山の楽しみを味わえますが、一方で遭難などのリスクも高まるため、安全に登山をするための知識と装備が必要です。
この記事では、ひとり登山の魅力と、リスクを知って安全に登山するためのコツを紹介します。
誰かと登山をする場合、同行者と日程を合わせ、それぞれの体力レベルを考慮して登る山やルートを決めていくことになります。
そうすると、どうしても自分が登りたい山を選べなかったり、同行者の急な都合で登れなくなったりするおそれがありますよね。その点、ひとり登山では、登る山を決めるのも、どんな行程にするかも自由です。
前日に思い立って登山に出掛けるのも、そのときの気分でルート変更するのも、疲れたからと少し長めに休憩を取るのも、すべてが思いのままです。
ひとり登山をはじめると、自由度が格段に上がります。少しレベルの高い山、あまり知られていないマニアックなルートにも好きなだけ挑戦できるのは、ひとり登山ならではの魅力です。
ひとり登山では、歩くペースも自由です。人とペースを合わせようとすると、思ったよりも体力を消耗してしまうもの。グループ登山で、自分のタイミングで休憩を取りたくても、同行者に気を遣って無理してしまったことはありませんか?
そういった気を遣わなくていいのも、ひとり登山の魅力です。例えば、きれいな花を見つけたときは、好きなだけ立ち止まって写真を撮れます。風の音や鳥の鳴き声にじっくり耳を傾けたってかまいません。
登山のスタイルが違う人同士だと、どちらかが遠慮する結果になり、山の魅力を存分に楽しめないこともあります。その点、ひとりであれば、好きなだけ自分の登山スタイルを貫けるのが魅力です。
ひとり登山は自由度が増す反面、遭難事故などの最悪の事態を想定して、計画を立て準備する必要があります。
まずやっておきべきことは、家族や知人に行程を知らせておくこと。それから、登山届を提出することです。登山届は、登山口に設置してあるポストに提出します。また、オンラインで登山届を提出できるサービスもあるので、活用してみましょう。
ひとりだと登る山を自由に決められますが、いきなり上級者向けのコースや、他の登山者があまり選ばないコースは避けます。コースタイムも余裕を持たせた計画にしましょう。
地図とコンパスは必ず持参し、不測の事態に備えてあらかじめ山小屋や緊急避難場所の位置を地図で確認しておくことも大切です。
グループで登山する場合は、トラブルに遭遇したときに知識を共有できますが、ひとり登山では自分の持ち物と知識だけが頼りです。そのため、様々なトラブルに対処できるように準備をしておきましょう。
必ず持っておきたいのは、雨具、防寒具、非常食、ヘッドライトです。飲み物は最低でも2Lは用意しましょう。また、連絡やGPS機能の利用に必要な携帯電話の予備バッテリーを用意しておくと安心です。
山にいる動物や虫にも注意が必要です。ハチやヘビに噛まれたとき、患部から毒を吸い出すポイズンリムーバーをはじめ、ケガをしたときのために応急処置セット(ファーストエイドキット)を持ちましょう。クマやイノシシに遭わないようにするには、クマ鈴やラジオが効果的です。
登山者が多い山は、登山道が整備されていて道迷いしにくく、危険な箇所が少ない傾向があるので、ひとり登山でも安心です。
また、周りに人が多いほど、何かあったときに助けてもらえる可能性が高くなります。
登山者が多い山を探すには、ガイドブックを買ってみるのがおすすめ。
ガイドブックには、人気のあるモデルコースが載っていますし、登山道までのアクセスや、標準コースタイムも載っています。それだけでなく、登るのに最適な時期や、初級・中級などのレベル分けなど、山を選ぶのに必要な情報が揃っていますので、一冊持っておくと便利です。
ひとり登山を始めるなら、まずはガイドブックに載っているような登山者の多い山を選択してみましょう。
ひとり登山に不安があるなら、登山ツアーやガイドに依頼するのがおすすめです。
山に一緒に行く人がいないけど、ひとりは不安ということであれば、まずは初心者向けの登山ツアーに申し込んでみましょう。ツアーはあらかじめルートや日程が決まっていますので、自分で調べる必要がありません。
プロの山岳ガイドが同行してくれるので、道迷いや遭難を心配せずに登山を楽しめます。
また、山岳ガイドに依頼をすると、自分だけでは気づけない山の楽しみ方を教えてもらえます。
山の自然や植物のこと、登山の技術、山のマナーなど、豊富な経験に基づいた知識を語ってもらえば、より山の魅力を知ることができ、自身の登山のレベルも上げられます。
ひとり登山はじっくりと山と向き合う事ができます。計画から下山まで、全て自分の力で決断、行動することによって達成感が得られ、喜びと自信を与えてくれます。
グループ登山には無い魅力がたくさんありますが、もしものことを考えるとデメリットも多いため、事前準備はしっかりと行い無理のない計画を立てましょう。
▼ひとり登山に関する本
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローされると喜びます。
歴史は好きなんだけど、歴史の価値って現代では薄れつつある気がする。今を生きる人にとっては今と未来の方が興味あるもんね。…だからこそ知っておきたくて、興味深い本を購入した。一つのエリアを深掘りしたい。秩父は山歩きに目覚めた地なので愛着あるから気持ちものって入りやすい。#里山トラベル pic.twitter.com/zmSH0wWt2O
— 宮本 将弘🏡 (@masa_yco) September 29, 2019
HIKES編集部です。「歩くを文化に暮らしを楽しむ」をコンセプトに自然の中を歩くことが暮らしの一部になるようなコンテンツを発信していきます。登山やハイキング、ロングトレイルを始め、地元の人しか知らない里山噺など、歩くことを軸にしたWEBメディアです。
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