山に登り始めた途端にすぐ息が上がってしまい、疲れてしまうため「登りが苦手」と思っている方も多いのではないでしょうか。体力があるに越したことはありませんが、実はほんの少しだけ疲れにくい登り方を意識するだけで、登りへの苦手意識は克服できるかもしれません。この記事では登りが苦手な人向けに登り方、ペース配分、休憩のとり方のポイントを解説します。
山歩きの基本姿勢は頭から背中、足までにかけて真っ直ぐにすることです。体が真っ直ぐになると筋肉ではなく、骨で全身を支えることになるため疲れにくくなります。歩いてると猫背になりがちですが、正しい姿勢を保つために胸の前で腕を組んだり、腰に手を置いたりすることで自然と姿勢が良くなります。
気をつけたいのが、手を大きく振ってしまうこと。無駄に手を振ると、ザックを背負って重くなっている上半身が前後に揺さぶられ、体幹がぶれて疲れやすくなります。登山での腰や膝の痛みは、歩き方の姿勢が悪い証で体の一部に負担がかかりすぎてると言えます。
歩いているとき、膝は外側を向いているのにつま先は内側を向いていたら、ひざがねじれている証拠です。膝とつま先が同じ方向を向くよう意識してみてください。ガニ股で歩くクセのある人は、ひざのねじれに注意しましょう。
長く同じペースで山を歩くには、最初にペースを上げすぎないことが重要です。マラソンと同じで最初から飛ばしすぎると、すぐにスタミナが切れてしまい、追い越してきた登山者たちに次々と追い抜かれる結果になります。
特に登山開始直後の20~30分は体を慣らす時間なので、普段歩くペースの半分ほどの速さで、ゆっくり歩くように心がけましょう。他の登山者に比べて「遅すぎるかな」と思うくらいのペースでかまいません。
登りはじめのペースが、歩くリズムをつくります。呼吸が安定してきて、体力に余裕があるようであればペースを徐々に上げていってもかいませんし、ゆっくりペースで歩いているつもりでも息が上がるようなら、さらにゆっくり歩くように心がけてみましょう。
登りでは、平地よりも膝を高く上げて歩くようにします。登山道にはそこらじゅうに石や木の根があるので、つまずくのを避けるには平地よりも膝を上げる必要があります。
疲れてくると猫背になりがちですが、常に背中はまっすぐに。頭と背中と腰、そして体重をかける後ろ側の足が一直線になるように意識すると、体幹で体を支える感覚がわかってきます。
歩幅はなるべく小さくなるようにして、着地のときはつま先からではなく、靴底全体で地面をとらえるようにします。つま先から地面に着くと、ふくらはぎの筋肉に余計な負担がかかりますし、滑りやすい場所でケガをしやすくなり危険です。
どんな場所でも、体幹のバランスを崩さないよう意識しましょう。
登山において適切なペースの目安は、人と会話しながら登れる速度です。息切れして会話どころではないほどであれば、ペースが速すぎるかもしれません。
自分のペース配分をチェックするには、目標心拍数の目安を知っておくのがおすすめです。やり方は、首の動脈に中指と人差し指をあて、時計の秒針を見ながら6秒間の心拍数を数えます。数えた心拍数と以下の計算式で出た目標心拍数を比べてみましょう。
(180-自分の年齢)÷10=6秒間の目標心拍数
例えば、30歳であれば、(180-30)÷10=15となり、6秒あたりの心拍数は15回が目標心拍数となります。計った心拍数が多ければペースをゆるめ、少なければもっとペースを上げてもいいという目安になるので試してみてください。
登山では休憩したいと感じたときは、すでに体がかなり疲労している状態といわれます。疲労を感じる前に定期的に休憩をとりましょう。一般的には60分を1単位として、50分歩いたら10分休憩、45分歩いたら15分休憩といったペースを目安にします。
休憩するときは、ザックを下ろして楽な姿勢になりましょう。腰を下ろすために携帯座布団などがあると便利です。まずは呼吸を整え、水分補給をします。そして、エネルギーを補給するために行動食を食べたり、軽くストレッチをして体をほぐしたりします。
「のどが渇いた」「おなかが空いた」と感じる前に栄養補給をすれば、バテて歩けなくなることを防げます。休憩時間にしっかり休んで栄養を取ることが登山には欠かせません。
登山中の足への負担を減らし、安全に歩くためには登山用のストック(トレッキングポール)の使用がおすすめです。登りでは、ストックが推進力を高めて楽に登るためのサポートをしてくれます。
ストックの種類は、片手に持つシングルストックと、両手に持つダブルストックがありますが、より安定して登るれるのはダブルストックです。ただし、ストックにあまりにも重心を乗せすぎると、ストックの先端がすべったときに体のバランスを崩すおそれがあります。ストックを頼りすぎると猫背になり、バランスの悪い歩き方になってしまうので注意しましょう。
ストックは持っていると心強いのですが、あくまでも補助ということを忘れず、体重の3割程度を乗せるつもりで使うようにしましょう。
山の歩き方は頭から背中、足までを真っ直ぐにすることとお伝えしましたがそれ以外でも歩幅を小さくすることも疲れを軽減させます。特に急な登りは歩幅大きいと重心がブレやすく足や膝にも負担がかかります。歩幅の目安として、靴一足分の間隔で歩くのがおすすめです。
山歩きの魅力は自然や景色を楽しむことにあると思います。疲れすぎて嫌な思い出にならないように歩き方とペースを意識して山を楽しみましょう。
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今日は山梨と静岡にまたがる竜ヶ岳へ。本当は福島の山に行く予定でしたが寝坊してしまい、近場の山へ。頂上で富士山ドーンを期待してたけど、その時だけ雲ってしまい残念…🗻山の日に山に行ったのは初でした。 pic.twitter.com/sbkMFgtBQ6
— 宮本 将弘🏡 (@masa_yco) August 10, 2020
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