檜洞丸(ひのきぼらまる)は西丹沢の山深さが感じられる静かな山で、「西丹沢の盟主」とも呼ばれています。毎年5月下旬から6月上旬になるとツツジやシロヤシオが美しく咲き誇り、多くの登山客が訪れます。
この記事では、起点となる西丹沢ビジターセンターへのアクセス方法や登山の難易度、ツツジ新道から檜洞丸を経由し犬越路(いぬこえじ)を下山する日帰りルートを紹介します。
檜洞丸(ひのきぼらまる)は、神奈川県の西丹沢に位置する山です。標高は1,601mで、丹沢山系では神奈川県最高峰の蛭ヶ岳(ひるがたけ、1673m)に次ぐ高さを誇ります。西丹沢エリアは東丹沢エリアの大山や塔ノ岳に比べ登山者が少ないため、静かにじっくりと山を味わいたい方におすすめの山です。
5月下旬から6月上旬にかけては、シロヤシオやトウゴクミツバツツジなどの花々が一面に咲き誇ります。ピンクや白の色鮮やかな花が、今を盛りと咲き乱れる様は、まるで山全体がツツジの絨毯に覆われたようです。
檜洞丸登山の起点となる「西丹沢ビジターセンター」へは電車とバスでアクセスが可能です。
小田急線「新松田駅」から富士急湘南バスに乗車し、終点の「西丹沢ビジターセンター」で下車。バスの所要時間は1時間11分と長く、本数も限られているので早めに出発しましょう。新松田駅の案内所では往復乗車券を購入できます(現金決済のみ)。
なお、西丹沢ビジターセンター行きのバスはJR御殿場線の山北駅・谷峨(やが)駅からも乗車可能です。
マイカーの場合は、東名高速大井松田ICから西丹沢ビジターセンター駐車場まで国道246号、県道76号を経て約26km。ビジターセンター前に10台分の無料駐車場と手前の道路の路肩に50台ほどの駐車スペースがあります。
檜洞丸は中級レベルの難易度を持つ山です。最も一般的なツツジ新道の往復コースでも、標高差が1000m以上あり、コースタイムは約5時間30分かかるため、普段から山に登り慣れており、一定の体力と脚力を持つ方に向いています。なお、この記事で紹介しているツツジ新道~犬越路周回コースはさらに難易度が上がります。
檜洞丸から犬越路へのルートは全体的に足場が悪く、途中、ほぼ垂直のクサリ場や長いハシゴの難所があり、アップダウンも繰り返します。充実したルートといえますが、反面、技術と体力が求められます。さらに、下りのみで3時間以上かかるロングコースでもあり、初心者にはおすすめしません。
以上のように、檜洞丸は登山になれた中級者向けの山だということを留意しておいてください。。
西丹沢ビジターセンターからツツジ新道を登り、檜洞丸山頂から犬越路、用木沢(ようきざわ)出合へと下る周回コースを日帰りで歩いてきました。
出発地点は西丹沢ビジターセンターです。こちらでは登山の情報や地図などを入手できます。また、山頂付近の青ケ岳山荘までトイレがないので、ここで済ませておきましょう。
ビジターセンターから北へ進み、道路沿いを歩きます。キャンプ場を過ぎて5分ほど歩くと、右手にツツジ新道の登山道入口が現れます。ここから登山道に入りましょう。
ゴーラ沢出合までは、1時間ほどのゆるやかな登りが続きます。途中にはいくつかの谷や尾根があり、木の橋が架けられています。ゆっくり渡れば特に危険はありませんが、高さがあるため高所恐怖症の方には少し勇気が必要かもしれません。
ツツジ新道は山頂に近づくにつれ急登になるので、ゴーラ沢出合まではウォーミングアップを兼ねて焦らず進みましょう。
しばらく歩くと、右手に沢のせせらぎが聞こえてきます。その音に導かれるように進むと、すぐにゴーラ沢出合に到着します。ここでは対岸に渡る必要があるので、注意して進みましょう。
対岸に渡り、左手に進んでいくと石の階段が見つかります。ただし、この箇所は迷いやすいので、地図を確認することをおすすめします。また、もしここで川の水量が増えていて対岸に渡れない状況であれば、この先はより危険な可能性があるため、引き返すのが賢明です。
ゴーラ沢出合を過ぎると、本格的な登りが始まります。一部、木の階段で舗装されていますが、ルートのほとんどは岩が混じった道をひたすら登り続けることになります。1時間ほど登ると、ベンチのある展望園地に到着しますので、ここでゆっくり休憩を取りましょう。
さらに1時間ほど標高を上げると、ようやく石棚山稜分岐に到達します。途中には、何カ所かクサリ場がありますが、クサリを使わずに登れるレベルですので安心してください。
山頂に近づくにつれて、木の階段の割合が多くなってきます。登り続ける中で疲れを感じたら、無理せず休憩を取りましょう。
私が訪れたのは5月下旬で、シロヤシオは終わりかけでしたが、登山道の脇には目の覚めるようなピンクのトウゴクミツバツツジがたくさん咲いていました。新緑の中に濃いピンク色が映え、まさに桃源郷のような美しさです。
石棚山稜分岐を過ぎればきつい登りは終わり、山頂までしばらく平坦な木道が続きます。
檜洞丸の山頂に到着しました。山頂は木々に覆われており、眺望はあまり得られませんが、広々としているため、ゆっくり休んで山頂を楽しめます。
なお、山頂にはトイレがありませんので、山頂から5分ほど下った場所にある青ヶ岳山荘でトイレや売店を利用しましょう。
昼休憩を終えたら、犬越路へ向かいます。まずは左側に富士山を眺めながら木の階段を下り、熊笹ノ峰(くまささのみね)、小笄(ここうげ)、大笄(おおこうげ)といったピークをアップダウンしながら下っていきます。
ただし、各ピークに特別な看板や表示はなく、ただ通過するだけです。
小笄から大笄までは急峻な地形で、足を置く場所に迷うような急斜面や垂直のクサリ場、ハシゴが連続します。予想外のキツさに驚くかもしれませんので、単調な下り道を想定せずに注意して進みましょう。
特にクサリ場の岩は崩れやすいので要注意です。私自身も、足を踏み外すことはなかったものの、落石を引き起こしてしまいました。常に慎重に足場を確認しながら進んでください。
犬越路には無人の避難小屋があり、トイレとベンチを利用することができます。ここまで来れば危険なクサリ場やハシゴはありませんので、ほっと一息つけるでしょう。
ちなみに、犬越路の地名は、武田信玄が小田原城を攻めた際、犬を先頭にして峠を越えたという伝説に由来します。それほど険しい山道だったのでしょう。
犬越路から用木沢出合まで、あと少し。急な下りを終えると、その後は涼しい沢沿いを歩きます。途中、何カ所か川を横断する必要がありますが、残念ながら橋が崩壊し流されてしまっていたため、橋の前後で渡れそうな場所を探さなければなりませんでした。
川の水量が増えている場合は、渡るのが困難になる可能性がありますので、慎重に判断しましょう。用木沢出合までのルートにも危険箇所が多いと感じたので、初心者は避けたほうが無難です。
用木沢出合から西丹沢ビジターセンターまでは、舗装路を20分ほど歩けば到着です。
檜洞丸の魅力やアクセス方法、登山ルートの概要を紹介しました。檜洞丸は丹沢山系の中でも比較的登山者が少なく、静かな山歩きが楽しめます。
この記事で紹介したコースは中級者レベルで登山技術と体力が必要なので、初心者にはツツジ新道のピストン(往復)がおすすめです。原生林がそのまま残る丹沢の深部で、雄大な景色と美しい花のトンネルを体験してみてくださいね。
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— m.miyamoto | toritoke.inc. (@masa_yco) November 10, 2019
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
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