「カッコソウ」という花をご存知でしょうか。世界中で鳴神山系にしか自生しない花で、国の絶滅危惧種に指定される希少なお花です。そんなカッコソウを見ることができる唯一の山「鳴神山」は、群馬県桐生市の里山。どんな山なのか? 初めて訪れてみました。
鳴神山は、群馬県桐生市に位置する里山です。標高は980mで、東峰の「桐生岳」と西峰の「仁田山岳」から成る双耳峰です。
鳴神山を有名にしたのは、何といっても固有種である「カッコソウ」で、毎年4月下旬〜1ヶ月程度の開花時期には県内外から多くの登山者が訪れます。カッコソウは、サクラソウ科の多年草で、紫がかったピンク色をしています。高さ10cm程度と小さく、直径2〜3cmの花が5〜15輪リング状に多段に咲きます。
カッコソウは、かつては普通に見られたといわれていますが、自然環境の変化や人々による採取などが原因で、現在は鳴神山系の限られた場所でのみ自生しています。そのため、環境省のレッドリストで絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧IA類」に指定され、かつ、法律により「国内希少野生動植物種」として保護されています。
また、鳴神山は、カッコソウ以外にも、もう一つの固有種「ナルカミスミレ」や絶滅危惧種
「ヒイラギソウ」など多くの希少植物が生息し、山自体が国や県の保全地域となっています。
低山でありながら山頂からの眺望は素晴らしく、登山道もよく整備されているので、初心者も安心してハイキングが楽しめます。地元では古くから信仰の山として崇められていて、その歴史痕跡をめぐるのもおもしろいです。
今回、一番メジャーである【駒形登山口を起点に鳴神山山頂、カッコソウ移植地を周回するコース】を歩いてきたので紹介します。はたしてカッコソウには会えるのでしょうか!?
9:00頃、駒形登山口の駐車場に到着。10台ほどの駐車場スペースはすでにいっぱいで、路肩にも車がビッシリと並んでいます。他県ナンバーの多さがこの山の人気を物語っています。登山ゲートには管理の方がいて、パンフレットを手渡し、コースの概要を教えてくれます。
登山開始からしばらく、沢沿いを歩いていきます。稜線上の「肩の広場」まではずっと登りですが、整備された歩きやすい登山道です。沢のせせらぎ、心地よい風、初夏の優しい光に癒されます。あちこちに植生保護柵が張られ、植物が保護されています。スタート時間が遅かったからなのか? 車の数にしては出会う人が少なく、のんびりとした山歩きを楽しめました。
広場には「雷神嶽神社(なるかみたけじんじゃ)」が鎮座し、社殿の他にオオカミの狛犬と鳥居があります。一気に山岳信仰を偲ばせるスピリチュアルな雰囲気に。
「肩の広場」から山頂まではすぐです。山頂付近には岩場も登場し、変化に富んだコースが楽しめます。
足元には、小さな「フイリフモトスミレ」が健気に咲いていました。葉っぱに美しい白斑が入っています。また、鳴神山の山頂付近には「アカヤシオ」が群生して咲くことでも有名ですが、アカヤシオは終盤をむかえ、代わって鮮やかな「ヤマツツジ」が咲き始めていました。
鳴神山の最高峰、「桐生岳」です。鳴神山には2つの山頂がありますが、一般的には桐生岳を山頂とするようで、山頂標識もあります。山頂には他に、鳥居と4基の石祠が祀られていますが、狭いので、登山客でいっぱいです。難易度がほどよい山なので、ご年配からご家族連れまで、幅広い世代の方が登っていました。
山頂からは360度見渡せるダイナミックな景色が広がっています。この日は空気が澄んでいて、上州の山々はもちろん、富士山や東京スカイツリーも見えて最高の登山日和! 1時間半くらいで登れて、この景色が見られるのはお得です♪
もう一つの山頂である「仁田山岳」には、赤い鳥居と2基の石祠があります。桐生岳に比べるとだいぶひっそりとしています。
展望がよく、右側に赤城山がよく見えました。岩場に立つと大自然に溶け込んだ写真が撮れるので、撮影スポットとしてもおすすめです!
第一展望台から少し進むと「ヒメイワカガミ」が岩場に咲いています。手前に「ヒメイワカガミ 5m先 右岩上部」という標識があるので見つけやすいです。随所でお花たちが楽しませてくれます。
カッコソウは椚田(くぬぎだ)峠下の移植地に咲いています。「カッコソウ→3分」という標識が立っています。向かって右の「コツナギ橋登山口」方面に下ります。
カッコソウがたくさん咲いています!!! 小ぶりで可憐なお花です。
移植地は、杉林のなかの斜面です。登山者に踏みつけられないよう、またシカの食害から守るため柵とネットで施錠管理されています。近くには管理の方がいて案内をしてくれます。
柵のなかには、一方通行の遊歩道が整備され、カッコソウはロープで守られています。カッコソウに寄った写真が撮りたい場合はズームレンズがあると便利です。
よく見ると花びらの先が裂けていて、ちょうどピンクのハート型に見えるのがまたかわいいです。茎には産毛みたいなものも生えています。
鳴神山に自生するカッコソウは800個体程度(2012年時点)といわれています。保護されている方々の尽力でこうして可憐な姿を見ることができました。
カッコソウを堪能したら「椚田峠」まで再び戻り、下山開始です。往路より距離は長いものの、坂が緩やかで歩きやすいです。「赤柴登山口」からは林道歩きになります。
「赤柴登山口」付近には、絶滅危惧lB類の「ヒイラギソウ」が群生していて、堅牢な柵で保護されています。名前の由来どおり、葉っぱがヒイラギに似ています。さすがは新・花の百名山! 希少植物の宝庫です。
登山開始から約3時間で、ゴールの「駒形登山口」駐車場に戻ってきました。午後には、桐生グルメや観光を楽しむ時間的な余裕もありました。
たくさんの人から愛され、低山ながら、沢や岩場、希少植物、眺望、歴史など見どころがギュッとつまった里山でした。また、「ここだけの花を求めて山を登る」というロマンのようなものを感じる山行になりました。
鳴神山山頂とカッコソウの両方を堪能する2つの周回コースを紹介します。山頂のみ、カッコソウのみの場合は、ピストンが最短コースとなります。
※今回紹介したコースです。
駒形登山口 駐車場/大滝登山口 駐車場/コツナギ橋登山口 駐車場
※どの駐車場も狭いため、混んでいる場合は路肩に駐車します。
JR両毛線「桐生駅」からバス(桐生市「おりひめバス」)
【1】おりひめバス・川内線で「吹上」バス停下車→駒形登山口まで徒歩約30分
【2】おりひめバス・梅田線「梅田南小学校前」バス停下車→大滝登山口まで徒歩約90分
おりひめバス時刻表 | 桐生市
(大人200円/子ども市外100円/子ども市内無料)
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今日は長野県松本市と新潟県糸魚川市を結ぶ全長120kmになる「塩の道トレイル」の一部を歩いてきました。松本市にある牛つなぎ岩から安曇野市の穂高神社まで、約30kmを7時間ぐらいです。市街地が多いコースですが、アルプス公園をまたぐ道や安曇野の道祖神巡りで楽しめました。#里山トラベル pic.twitter.com/gKAPNGXCUO
— m.miya(宮本将弘) (@masa_yco) May 7, 2022
山と旅を愛するライター。元同僚とゆる登山部を結成したのをキッカケに山にハマる。出没エリアは丹沢、夏山シーズンは長野・山梨方面の山へ。ソロ登山が多くマイペースに花を眺めたり、新たな発見を楽しみに登っている。登山口アプローチのために、そろそろペーパードライバー脱出を考えている…。
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