警察庁が発表する『山岳遭難の概況』によると登山中の事故やけがなど、遭難者は年々増えているそうです。遭難というと仰々しく聞こえますが、大半を占めるのが道迷いで、滑落、転倒と続きます。
街中で道に迷っても凍えることはありませんが、山で迷って野宿することになれば寒さで身に危険が及ぶこともあります。そんな万が一にエマージェンシーキットを備えましょう。
具合が悪くなったときに駆けつけてくれる救急隊は心強いものです。通常の生活で救急車を要請してから到着するまでの時間は全国平均で7分といわれています。
しかし、山では事情が異なります。救急車で山道を進むのは困難ですから、ほとんどの場合は山岳救助隊が出動することになります。救助隊が山道に慣れているとはいえ、自然が相手ですから何があるかわかりません。
悪いタイミングが重なり救助者がたくさんいることもあるでしょう。出動要請が重なれば対応したくてもできません。常に最悪のケースを想定して備えておくことが大切なのです。
「山の天気は変わりやすい」誰もが一度は聞いたことがあるはずです。ただ、今ひとつ実感が伴わない言葉ではないでしょうか。実際に天気が急変して立ち往生したなどの実体験がないとピンとこないかもしれませんね。天気が急変して動けなくなることもありうることを知っておかなければいけません。
道迷いも同じように方向感覚に自信があったとしても絶対に迷わないとは言い切れないものです。濃霧や吹雪で視界がきかなかくなったり、誤って脇道に入ってしまい迷ったりする可能性もあります。
このように登山中に動けなくなった場合には救助を待つことになります、そのときに必要な栄養や体を冷やさないためにエマージェンシーキットが必要になってきます。
緊急時に備える…といっても何を準備すればよいのかわかりませんね。エマージェンシーキット(ファーストエイドキット)とは緊急時に準備するものの総称ですが、人によって用意するものは様々です。自分で必要なものを揃えておきましょう。
風邪薬、下痢止め、胃薬、腹痛止め、消毒用アルコール、かゆみ止め、など
テーピング、ガーゼ、救急バン、ポイズンリムーバー、ビバーク用シート、三角巾など
さらには携帯用トイレやクマスプレー、非常食なども入ってくるでしょう。タオルは何かと便利なので常に準備しておくのもよいですよ。
全てを揃える必要はありません。登山計画に合わせて必要なものを選んで持って行きましょう。
もし負傷してしまい多少歩ける場合でも、そこの場所から動いかない方がいいケースもあります。体力の消耗が激しかったり、道がわからないときは無理に下山しようとするより、ビバーク(野宿)して助けがくるのを待つ判断することも必要です。
その万が一に備えて持っておきたいのは、ツェルトという簡易型のテント。一夜を過ごすときに風よけや身を守る家になってくれます。ツェルトそのものを服のようにまとうことで体温の低下を防ぐ防寒着としての機能も備えています。
スマホの充電切れにも備えておきましょう。最近では山中でも電波が届く場所もありますので、連絡手段になるスマホは生命線ともいえます。充電された小型のモバイルバッテリーを持っておくと緊急時にも安心です。
最初は必要なものがひととおり入っているエマージェンシーキットがおすすめです。
登山用品店には防水性の高いポーチの中にコンパクトに収納された登山緊急セットがまとめてある商品があります。開けると一目で全てのものが確認できるフルオープンタイプであることも特徴の1つです。
ネットショップで調達するなら必ず、登山用やアウトドア仕様のものを選びましょう。簡易ギプスやテーピング、注射器型のポイズンリムーバーまでセットされているものもありますよ。
捻挫や骨折にも対処できるよう考えられています。ケガを負ったときの消毒グッズはもちろんですが、ばい菌が深く入ってしまったときに吸い出すためのポイズンリムーバーなどは登山ならではかもしれません。
緊急時に使い方がわからない!とならないよいうにテーピングの巻き方やポイズンリムーバーの使い方などを予習しておくことも大事なことです。
セットになっているものは人によって必要ないものがあるかもしれません。バンソウコウを多めに持っていけば、靴擦れ対策にも使えるので重宝したいという人もいれば、テーピングですべて事足りるという人もいるでしょう。慣れてくると自分に何が必要なのかもわかってきます。
エマージェンシーキットを入れるポーチは完全防水で破れにくいものを選びましょう。中身をジップロックに小分けにして入れるなど、濡らさないような工夫をしておきます。
錠剤も破れないように固めの小さなケースに入れるなど対処しましょう。液体ものは長期間放置していると蒸発している場合もありますので、出掛ける前の中身チェックを欠かさずに。
エマージェンシーキットを持っていても使ったことない方もいるかもしれません。むしろ使わない方が安全登山ができているということですね。
しかし、災害に備える非常用品と同じように万が一はいつ起こるかわかりません。また、自分だけの問題ではなく、一緒に同行した仲間や困っている人に遭遇する可能性もありますので、必要最低限の緊急用品は山に行くなら常に準備しておきたいものです。
▼登山用のエマージェンシーキット
▼山のエマージェンシー
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東京青梅駅から歩いていける長渕丘陵は気軽なハイキングコース。なんだけど、あかぼっこからは奥多摩の山々が見渡せる素敵な場所です。年末年始でくっちゃりねっちゃりして、鈍った体を整えるきっかけになるのでおすすめです。多分1月に行く。 #里山トラベル pic.twitter.com/NyVksMhOA6
— 宮本 将弘 (@masa_yco) December 28, 2019
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