栃木・群馬県境の足尾山地に属する袈裟丸山(けさまるやま)は、アカヤシオの名所として名高い山で、シーズン中はたくさんの登山客で賑わいます。冬枯れの山を一面ピンクに染めるアカヤシオの群生は、一度見たら忘れないほどのインパクトです。また、見晴らしのよい登山道や好展望、野生動物との出会いなど、アカヤシオ以外の魅力にもあふれています。
この記事では、アカヤシオ最盛期の袈裟丸山を実際に歩いた様子や、袈裟丸山へのアクセス方法、登山レベル、花の時季などを紹介します。
栃木県日光市と群馬県沼田市、みどり市にまたがる標高1,878mの山で、日本三百名山に選定されています。前袈裟丸山、中袈裟丸山、後袈裟丸山、奥袈裟丸山、法師岳の総称で「袈裟丸連峰」とも呼ばれます。最高峰は奥袈裟丸山(標高1,961m)ですが、一般的には一等三角点がある前袈裟丸山(標高1,878m)を袈裟丸山といいます。
初夏はアカヤシオをはじめとする花や新緑、秋は紅葉と、四季折々の景観が楽しめます。また、ニホンジカやカモシカの生育地でもあるため、登山道で出会うこともあるかもしれません。
アカヤシオはツツジの一種で、関東地方では栃木県、群馬県、埼玉県付近の山で見られます。特徴は、枝先に1輪だけ花を付け、花冠は5つに裂け、淡いピンク色で大きな丸みを帯びており、柔らかい印象があります。
袈裟丸山は比較的標高が高いため、アカヤシオは遅咲きで、一般的にはGWあたりが見頃とされています。ただし、雨風に弱く気候によって見頃が左右されるためタイミングを計るのが難しく、さらに当たり年・外れ年もあり、そんな儚さがこの花の魅力を一層引き立てています。年によって見頃が大きく変わるため、SNSなどで最新情報をチェックするのがよいでしょう。
袈裟丸山へは、「郡界尾根コース」「弓の手コース」「塔ノ沢コース」の3つの主要コースがあります。いずれも群馬県みどり市側からのアプローチになります。「弓の手コース」と「塔ノ沢コース」は、途中の「賽(さい)の河原」で交わります。
「郡界尾根登山口」から登るコースで、シャクナゲの群生が見事です。前袈裟丸山と奥袈裟丸山をつなぐ「八反張(はちたんばり)」付近の風化が激しく通行禁止となっているため、最高峰の「奥袈裟丸山」を目指す場合は本コースを利用します。
「折場登山口」から「賽の河原」を経て「前袈裟丸山」を目指すコース。3つのコースのなかで登山口の標高が一番高いため、マイカー利用の場合、比較的楽に登頂できます。本コースは見晴らしのよい尾根が特徴です。
「塔ノ沢登山口」から「賽の河原」を経て「前袈裟丸山」を目指すコース。公共交通機関を使う場合は、駅に最も近い「塔ノ沢登山口」を利用します。コースの途中に、袈裟丸山を象徴する「寝釈迦」が横たわっています。
それぞれのコースに見どころがありますが、この記事では、袈裟丸山に初めて登る方やアカヤシオ観賞目的の登山に最もおすすめな「弓の手コース」を紹介します。
起点となる折場登山口から見晴らしのよい弓の手コースを進み、アカヤシオの群生地を抜け、小丸山、前袈裟丸山を目指します。帰りも同じルートを戻る、往復約6時間の日帰りコースです。コースタイムはやや長めですが、登山道はよく整備されていて初心者でも気軽に楽しめるコースです。
写真を撮ったり、花見をしながら自分のペースでのんびり歩いていきましょう。
駐車場のある「折場登山口」からスタートします。東屋、トイレ、登山ポスト、案内板があります。
しばらくは、整備された木道の階段を上っていきます。「北回りコース(健脚者向)」と「南回りコース(一般者向)」の分岐がありますが、北回りコースは、標識がなくなり通行禁止のロープがはられているため、南回りコースで進みます。(※2023年5月現在)
「関東ふれあいの道」の一部でもある登山道は綺麗に整備されていて、ヤマツツジ、シロヤシオ、ミツバツツジと、色とりどりのお花が出迎えてくれます。シロヤシオはアカヤシオの後に咲きますが、タイミングがよければ同時期に観賞することができます。アカヤシオを含めて、一度に4色のツツジを見られるなんてラッキーですよね。
オレンジ色のヤマツツジ
まだ蕾の多いシロヤシオ
登山道に咲き乱れるミツバツツジ
登山開始からすぐに「弓の手コース」の見どころである、見晴らしのよい笹原の尾根に出ます。西側の展望が開けていて、目的地である前袈裟丸山と小丸山が望めます。先はまだまだ長いように感じました。
景色のよい尾根を登りきると、山のなかへ入っていきます。道幅は広く起伏も緩やかで歩きやすい道です。登山道脇には、植生保護エリアのロープがはられている箇所も見かけるようになります。
やがて「つつじ平」と呼ばれるアカヤシオの群生地に。ここから先はアカヤシオのオンパレード!目を奪われてしまい、なかなか前に進むことができません。「つつじ平」にはアスレチック遊具のような展望台が立っています。スリルのある垂直の梯子をよじ登った先にある展望台からは、袈裟丸山の全貌やアカヤシオに覆われた小丸山が望めます。
出発して1時間くらいで、折場登山口と小丸山の中間地点である「賽の河原」に到着。ケルン(石積み)がたくさんある広場で、独特の雰囲気があります。ここは塔ノ沢コースとの分岐点であり、「関東ふれあいの道」を辿る場合は、このまま塔ノ沢コースへ下ります。
「賽の河原」付近では野生のニホンジカに遭遇。すれ違う方々に「あそこに鹿がいるよ!」と声をかけられました。普段見ることのない野生動物に出会うと、嬉しくて人に伝えたくなりますよね。
この付近は、アカヤシオのトンネルになっています。登山道のはずれに、アカヤシオに囲まれるように「雨量観測所」の鉄塔が立っています。緩やかなアップダウンを繰り返しつつ「床水起」という石柱のある小ピークを過ぎると、賽の河原に似たケルンの広場に出ます。
その先、東側がアカヤシオの大群生地となっていたので、立ち寄ってみました。
どこまでも広がるピンクの世界にうっとり。
密度が濃く活き活きしたアカヤシオがいっぱいです。
アカヤシオ観賞を目的にいろんな山に登りましたが、やはり袈裟丸山のアカヤシオは圧巻!何度もリピートしたくなる山です。思ったよりも人が少なく静かに観賞できました。
展望がよく充分なスペースもあるため、ランチ休憩している人たちで賑わっています。皇海山、日光白根山、庚申山、男体山などが一望できます。皇海山は、奥袈裟丸山の先に位置し縦走することもできますが、難易度は高いです。
小丸山から前袈裟丸山へ向かう道は、小丸山直下で一気に下ります。10分くらい進むと、広くて平坦なスペースに黄色い蒲鉾型をした「小丸山避難小屋」が見えてきます。小屋の近くにトイレもあります。
「小丸山避難小屋」からは登り返しになりますが、笹原と規則的にのびたダケカンバが美しく、気持ちよく歩くことができます。やがて、樹林帯に入り急登となります。登山道は狭く、木の根や岩場にロープもはってありますが、慎重に進めば問題ないレベルです。
樹林帯を抜けると前袈裟丸山の取り付きにでます。展望も開け、西側に赤城山が望めます。振り返れば、歩いてきた尾根や小丸山のピンクに染まった山肌も楽しめるでしょう。
裾野が美しい赤城山
アカヤシオでピンクに染まる尾根
出発してから約3時間(休憩除く)で山頂に到着。山頂の標識と一等三角点があります。広いスペースには木陰もあり、ランチ休憩をしている人が多くいました。
山頂の展望はよくないので、後袈裟丸方面へ少し進み、開けた場所まで行ってみましょう。360度とはいきませんが、北方面の奥袈裟丸山を中心に、その西側は苗場山、谷川岳、上州武尊山、至仏山などの上越の名峰、東側は皇海山、日光白根山、男体山などの栃木の名峰が望める絶好の展望スポットです。
残雪の残る至仏山(奥に越後駒ヶ岳がひょっこり)
険しくも美しい谷川連峰
皇海山の奥に日光白根山
この先、後袈裟丸山に行く途中の「八反張」の風化が激しく通行を禁止されており、山頂には注意喚起の看板が立っています。
復路は同じルートを戻りますが、西日に照らされたアカヤシオや上から望む弓の手コースの尾根道はまた違った美しさがあるので、最後まで必見です。
駅から一番近い登山口が「塔ノ沢登山口」(塔ノ沢コース)です。
駅構内に温泉がある珍しい施設で、河童がマスコットキャラクターです。
袈裟丸山のアカヤシオは、特に「つつじ平」から「小丸山」まで密集しています。アカヤシオの観賞が目的であれば「小丸山」までで充分です。登山道は明瞭で特に危険個所はありません。
でも、せっかくなら山頂まで登って好展望を楽しみたいところ。袈裟丸山頂上からの展望はよくないですが、少し北側に進めば本コース一番の展望スポットがあります。小丸山から前袈裟丸山へは、急登のロープ場もあり達成感が味わえるでしょう。
岩場に咲くことが多いアカヤシオですが、袈裟丸山は歩きやすい登山道から見ることができます。また、広く分布しているため、もし麓で散ってしまっていても、山頂の方では活き活きしたアカヤシオに出会えることも!誰でも気軽に、季節を感じながら登山を楽しめるのが嬉しい山です。
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今日は安曇野市にある光城山へ。頂上できんぴらごぼうと豆乳チーズのライスバーガーを作りました。初めてでしたが、上手く焼けたので良しとします。春の山桜で有名な山で、毎年桜のトンネルを歩くのを楽しみにしてます。時期は4月中旬ぐらい、また行きます。#里山トラベル pic.twitter.com/WroxFNHpSI
— m.miyamoto | toritoke.inc. (@masa_yco) March 21, 2023
山と旅を愛するライター。元同僚とゆる登山部を結成したのをキッカケに山にハマる。出没エリアは丹沢、夏山シーズンは長野・山梨方面の山へ。ソロ登山が多くマイペースに花を眺めたり、新たな発見を楽しみに登っている。登山口アプローチのために、そろそろペーパードライバー脱出を考えている…。
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