手ぶらでバーベキューや、手ぶらで釣りなど、巷には手ぶらで○○が溢れてきてます。重い荷物を持たずに楽しめれば便利ですし、チャレンジのハードルも下がりますね。 荷物が少ないと行動範囲も広げやすく、いつもより遠くまで足を伸ばしてみようとか、別のアクティビティにも挑戦しようなどと計画がたてやすくなります。登山にもそんな考え方、UL(ウルトラ・ライト)スタイルがあるのです。
登山家でプロスキーヤーの三浦雄一郎さんは毎日、20キロのザックを背負って1.7キロの靴を履き、足首に左右2キロずつ重りをつけてウォーキングするそうです。その様子を耳にした人は驚きますが、登山をする人ならだれでもこのくらいは当然だと言うでしょう。実際、本格的な山に登るには30キロほどの荷物を携行することも珍しくありません。
冬山ですとアイゼンを付けた登山靴は1.5キロほどにもなります。それらすべてを身につけて斜面を進むのは並大抵の体力が必要なのです。過酷な山を制すためにはそれに耐えうる体作りが必要なのです。かつての登山家たちはそう考えてきました。
一方で過酷な山登りではなく、自然を身近に楽しもうという考え方もあり、軽量化されたUL(ウルトラ・ライト)アイテムにも注目が集まっています。当初は安全面での不安を指摘されていましたが、登山用具はより軽くなり高機能に進化しているのです。
UL(ウルトラライト)スタイルとは登山を気軽に楽しみたいという観点から生まれた一つの登山スタイル。もともとはロングトレイルから来た発想です。
ロングトレイルとは、長い遊歩道、自然散策路を数日かけて歩くレジャーで、欧米では古くから親しまれています。老若男女だれでも気軽に参加できますが、踏破するのは意外にハードです。そこで荷物を極力減らしてより、長い距離でもできるだけ疲れないようにしようと考えられたのがUL(ウルトラライト)です。
1gでも軽くするために、一つひとつの重さを計測して、パッキングする。アイテムは必要最底の機能を備えつつも軽くなるように開発されていきました。
このような考え方が浸透したおかげでロングトレイルに参加しやすくなったのです。
それが登山にも広がったわけですが、いたずらに荷物を減らすわけにもいきません。暗い山道を照らすヘッド・ライトや防寒具などがなくては道に迷ったり、低体温症になったりという危険も。必要なものを吟味しつつなるべく軽く、機能的なパッキングを心がけていくことがUL(ウルトラ・ライト)スタイルの登山です。
近年ではキャンプや登山、山歩きなどのアウトドアを楽しむ人が増えてきています。登山はかつてのハードなイメージから、誰もが気軽に楽しむ日常のレジャーへと変わりつつあります。
もちろん山の業界的には喜ばしいことですが、登山がカジュアル化することで危険に対する警戒心が薄くなる問題もでてきます。遭難事故はいつ誰にでもおこりうる可能性があり、登山命に関わるリスクがあることを忘れてはいけません。
観光イメージが強い高尾山や筑波山などでも遭難事故は発生するものなのでご自身のレベルに合った山選びが大事です。
山の難易度をグレード化したグレーディング表を公開している自治体もありますのでレベルの指標に参考にしてみてください。低山であっても油断せず、必要以上に荷物を軽くせずに最低限の持ち物は準備しておきましょう。
UL(ウルトラ・ライト)スタイルはいかに荷物を軽くするかに意識が向いてしまいますが、先ほど述べたように登山にはリスクがつきものです。いざというときに助けられるアイテムがたくさんあります。
例えば、急な雨のときにはレインウェア、擦り傷や虫さされ時の薬、緊急時のファーストエイドなど登山に外せないアイテムもあります。また靴やザックでも軽くすることで山歩きのサポートをする機能が失われてしまっては本末転倒ですので、購入の前に本当に問題ないか考慮してください。
軽くすることだけに注力せず、安全かどうかを前提としてアイテムを揃えたり、持っていくものを検討するのが真のUL(ウルトラライト)登山なのかもしれませんね。
UL(ウルトラ・ライト)スタイルを登山に取り入れ、浸透させたのが「Hiker’s Depot(ハイカーズ・デポ)」のオーナー、土屋智哉さんです。
アメリカ初のウルトラ・ライト・ハイキングに魅せられ、340kmのジョン・ミューア・トレイルを踏破。後に東京、三鷹市にショップをオープンしたのです。UL(ウルトラ・ライト)スタイルはじわじわと人気になり、2011年に出版された土屋さんの御著書により一気にメジャー化していったのです。
そんなバック・ボーンを持つお店が手掛けるのは“ライト、シンプル&ナチュラル”をコンセプトにした厳選アイテム。店名にあるDepotは停車場または駅という意味です。ハイカーたちが立ち寄って収集できるハイク情報も提供しています。
【公式サイト】
ハイカーズデポ
人気ガレージメーカー「山と道」は2011年に鎌倉で創業しました。毎週土曜日のみオープンするファクトリーショップとしての顔も持っています。
“ハイキングを通じて感じた本当に必要な道具を形にしていく”というコンセプトにもとづいた製品が魅力的で、商品は事前に予約しないと購入できないという人気ぶり。予約してから約2か月ほどかかる場合もありますが、それでも購入希望者が後を絶たないようです。
【公式サイト】
山と道
「負担を軽くして長い距離を歩き続けるように」という考えが前提にあるUL(ウルトラライト)スタイル登山。ザックや靴をはじめコップ一つとっても軽いことが重要視されます。おデザイン性の高い登山グッズも多く販売されるようになり、今後ますます定番になってくるのではないでしょうか。
ザック1つにしてもULを意識して作られたものとそうじゃないものを比べると重さは明らかに違います。まずは一度ご自身でお持ちの登山グッズを計測してから、他のグッズを検討するとよい比較対象になります。
ロングトレイルは海外でこそ人気のアクティビティですが、日本ではまだまだ認知度は低いです。山ハレ鳥トケとしてもUL(ウルトラ・ライト)スタイル登山やロングトレイルの動向を追いかけていきたいです。
▼山歩きに役立つ本
▼歩きをサポートしてくれるアイテム
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローすると喜びます。
東京青梅駅から歩いていける長渕丘陵は気軽なハイキングコース。なんだけど、あかぼっこからは奥多摩の山々が見渡せる素敵な場所です。年末年始でくっちゃりねっちゃりして、鈍った体を整えるきっかけになるのでおすすめです。多分1月に行く。 #里山トラベル pic.twitter.com/NyVksMhOA6
— 宮本 将弘 (@masa_yco) December 28, 2019
HIKES編集部です。「歩くを文化に暮らしを楽しむ」をコンセプトに自然の中を歩くことが暮らしの一部になるようなコンテンツを発信していきます。登山やハイキング、ロングトレイルを始め、地元の人しか知らない里山噺など、歩くことを軸にしたWEBメディアです。
登山の防寒着は何にしよう?防寒着の素材と用途に合わせた選び方
秋冬シーズンだけではなく、真夏であっても高い山は気温が低くなります。一年を通して登山に防寒着は欠かせ…
山の防寒着はダウンとフリースどっちがいい?私の使い分け方を紹介
登山の防寒着といえば、ダウンとフリースの2つが思い浮かびますよね。ミドルレイヤーをダウンにするかフリ…
趣味の一つに「登山」という選択。登山の魅力や気になる費用
人それぞれ好みはあるけれど、趣味の一つの選択に「登山」を入れるのはいかがでしょうか?というお話です。…
登山用ヘルメットの必要性。ヘルメットの種類と選ぶポイント
登山用のヘルメットと聞くと経験豊富な登山者が穂高岳や槍ヶ岳などの高い山で使うものと、低山やハイキング…
トレッキングポールは登山に必要?初心者こそ揃えておきたい理由と選び方
登山の際、トレッキングポールを使うと体への負担を分散させ、歩行時の推進力をアップさせることができるの…
登山で手ぬぐいが好まれるのはなぜ?隠れざる性能と山小屋の手ぬぐい
和食や和紙など、日本古来の文化が世界的にも評価されていますが、手ぬぐいも密かに人気なのはご存知でしょ…
登山の虫除け対策でリスクを回避。季節に合わせた対策と虫除けグッズ
登山をするにあたって、必ずと言っていいほどついて回るのが虫問題です。一般的には虫除けスプレーを身体に…
登山コーデのポイントは?山でも自分らしく着こなすコーデの基本
近年のアウトドア人気の影響から、ファッション誌でも登山やトレッキングのウエアが取り上げられることが多…
登山で使う寝袋(シュラフ)の選び方。対応温度や収納性をチェック!
日帰り登山に慣れてきたら宿泊登山にもチャレンジしてみたくなるものです。寝袋(シュラフ)で寝るなんて想…
熊鈴はうるさい?賛否両論の熊鈴マナー。快適な登山をするために気を付けること
登山において、熊との遭遇は命に関わる危険の一つです。道迷いや滑落は自分である程度は回避できますが、生…
【那須岳(茶臼岳・朝日岳)】火山のダイナミックな光景と紅葉をロープウェイを利用して楽しむ日帰り登山
那須岳(なすだけ)は栃木県北部に位置する那須連山、特に「茶臼岳(ちゃうすだけ)」「朝日岳(あさひだけ…
【岩木山】青森県の最高峰を九合目からお手軽に登頂
津軽平野の南西にそびえる岩木山は、青森県の最高峰で日本百名山に選定されています。その美しい円錐型の山…
【男体山】中禅寺湖を振り返りながら奥日光の霊山を登る日帰り登山
男体山は中禅寺湖の北側にそびえる、美しい円錐形の山です。古来、日光二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ、…
【木曽駒ヶ岳】初心者でもロープウェイで中央アルプス最高峰へ!千畳敷カールの絶景が待つ日帰り登山
中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)は標高3000mに迫る標高がありながら、ロープウェイ…
【大台ヶ原】豊かな自然と見どころ満載の東大台ハイキングコースを歩く
奈良県と三重県の県境に位置する「大台ヶ原(おおだいがはら)」は、日本百名山をはじめ、日本百景、日本の…
【奥多摩・御前山】奥多摩湖から始まる急登の連続!達成感を味わえる日帰り登山
大岳山(おおだけさん、おおたけさん)、三頭山(みとうさん)とともに奥多摩三山に数えられる「御前山(ご…
【塔ノ岳・登山】首都圏近郊の好展望の山!丹沢を代表する人気コース表尾根を歩く
表丹沢の「塔ノ岳(とうのだけ)」は、展望の良さと都心からのアクセスのしやすさで人気の山です。標高は1…
【檜洞丸】西丹沢の秘境を巡る日帰り登山!アクセスと難易度、絶景ポイントを紹介
檜洞丸(ひのきぼらまる)は西丹沢の山深さが感じられる静かな山で、「西丹沢の盟主」とも呼ばれています。…
【袈裟丸山】花見登山を満喫!山肌をピンクに彩るアカヤシオの名山を歩く
栃木・群馬県境の足尾山地に属する袈裟丸山(けさまるやま)は、アカヤシオの名所として名高い山で、シーズ…
【大楠山・登山】三浦半島を横断!海と山の360°パノラマが楽しめる低山ハイキング
神奈川県三浦半島の最高峰、大楠山(おおぐすやま)。海に囲まれた半島に位置するため、東京湾、房総半島、…
【群馬・根本山】自然のアスレチック!低山ながらスリルと登りごたえのある古道歩き
栃木・群馬両県の百名山に選定されている「根本山」は、古くから信仰の山として親しまれています。根本山へ…
【丹沢・不動尻】一面黄色の世界!早春のハイキングで「ミツマタ」を見に行こう!
春が来て登山・ハイキングに最適なシーズンとなりました。春ハイキングの楽しみのひとつに、山で出合うお花…
トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう
トレイルランと登山は、山を「走る」のか「歩く」のかという違いだけで、似たようなものだと思いがちですが…
【積雪期・谷川岳】雪山初心者におすすめ!日帰りで360度白銀の世界へ
「トマの耳」「オキの耳」の双耳峰(そうじほう)からなる「谷川岳(たにがわだけ)」は、日本百名山のひと…
【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山
気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがた…
【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)
皆野アルプスは破風山をはじめとしたいくつかのピークをつなぐ低山縦走コースです。最高峰の大前山でも65…
【三国山・鉄砲木ノ頭】富士山の絶景を満喫するハイキングコース
丹沢山地の西端、山中湖の近くに位置する「三国山(みくにやま)」は、神奈川県、山梨県、静岡県の3県にま…
【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山
関東屈指の人気の山域、丹沢の東側に位置する大山は、ピラミダルな美しい山容が特徴の山です。古くから山岳…
【鳥取・大山】初心者でも安心!自然と歴史満喫の夏山登山道、行者コースを歩く
鳥取県西部に位置する「大山(だいせん)」は、西日本最大級のブナ林や国の特別天然記念物ダイセンキャラボ…
【棒ノ折山・登山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山
奥武蔵エリアにある「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」は、渓流沿いのコースで沢歩き気分が楽しめる山です。ゴ…