登山の防寒着といえば、ダウンとフリースの2つが思い浮かびますよね。ミドルレイヤーをダウンにするかフリースにするか、両方持っていくとするならどう使い分けるのかは悩みどころです。
この記事では、ダウンとフリースそれぞれの特徴とそれに応じたシーン別の使い分け方を解説します。実際に私がミドルレイヤーをどのように組み合わせているかも紹介しますので、組み合わせの参考になれば幸いです。
まずは、ダウンとフリースそれぞれの特徴と登山におけるメリット・デメリットを紹介します。
ダウンは保温性に優れており、軽くてコンパクトに持ち運べるのが最大のメリットです。
ダウンの反発力(膨らむ力)はフィルパワー(FP)で表され、登山で使われるダウンは700〜800FPほどが一般的。フリースに比べてもかなり圧縮されてコンパクトになり、保温力も高めです。
ダウンは汗を外に発散する性能が低く、伸縮性が高くありません。そのため、ダウンを着たまま行動して汗をかいた場合は汗冷えしてしまうこともあります。また、天然のダウン(羽毛)は水に弱いので、一度濡れてしまうと保温力がなくなってしまい、なかなか乾きづらいので水には注意ください。
フリースはダウンほど保温性は高くないものの、多少汗をかいても発散するので行動中の着用に適しています。また、伸縮性があり肌触りも良いので、着ていてストレスになりません。
デリケートなダウンに比べ、汚れたらガンガン洗えてメンテナンスの手間がかからないところもうれしいポイントです。
フリースは保温性と軽さ、コンパクトさではダウンに敵いません。圧縮袋を使ったとしてもかなりかさばるので、ザックに荷物の入る余裕がないときは持っていくのをためらってしまいがちです。
行動中にずっと着ているのなら問題ありませんが、着たり脱いだりを繰り返すのは面倒に感じるかもしれません。
ダウン(薄手) | ダウン(厚手) | フリース(薄手) | フリース(厚手) | |
---|---|---|---|---|
保温性 | 〇 | ◎ | △ | 〇 |
防風性 | 〇 | ◎ | △ | △ |
通気性 | △ | △ | ◎ | ◎ |
濡れ耐性 | △ | △ | ◎ | ◎ |
軽さ | ◎ | ◎ | △ | △ |
コンパクトさ | ◎ | 〇 | △ | △ |
ストレッチ性 | △ | △ | ◎ | ◎ |
価格 | △ | △ | ◎ | ◎ |
手入れのしやすさ | △ | △ | ◎ | ◎ |
表でまとめてみると、ダウンとフリースの性能はどちらも一長一短です。それぞれの性能を理解して、適したシチュエーションで使い分ける必要があります。
ダウンとフリースはどちらも「中間着」に位置づけられますが、活躍するシーンが異なります。
汗をかく行動中は通気性のあるフリースのほうが適していますが、テントや山小屋で過ごすときはダウンのほうが温かく過ごせるでしょう。
そのため、同じ中間着であってもダウンとフリースは両方持っていくのがおすすめです。
ここからはダウンとフリースの使い分け方法をシーン別に分けて解説します。
行動中の汗冷えは避けたいので、通気性のあるフリースを行動着にするのがおすすめです。
私の場合、冬の低山を歩くときは薄手のフリースの着用が多いです。歩き始めは少し寒いかもしれないと思いましたが、10分も歩くと汗をかいてくるので通気性のあるフリースが正解でした。
寒いからと保温性のあるダウンを着てもすぐに汗をかいて脱ぐ結果になるので、行動中はフリース一択です。
「保温着」であるダウンは、休憩中や夜を過ごすときに向いています。シーンとしては秋〜春の登山の休憩中、テント泊や山小屋泊で夜を過ごすときの防寒用として使うのに最適です。
また、少しでもザックの重量を少なくしたい縦走やロングトレイルには軽くてコンパクトなダウンが向いています。
夏の日帰り登山であれば保温着は不要と思われるかもしれませんが、2,000m級の山であれば夏でも保温着は必要です。標高が高くなるほど気温は下がりますし、汗をかいた状態で風のある場所にいるとかなり冷えます。
ちょっと肌寒く感じたときにあると便利なのが、軽くてかさばらない薄手のダウンジャケットやダウンベストです。登る山の標高と気温を調べておき、保温着を使いそうなシーンをイメージして準備しましょう。
私はダウンとフリースそれぞれ薄手と厚手のタイプを持っていますが、一番よく使う組み合わせは「薄手フリース&中厚手ダウン」です。
私は行動中にすぐ暑くなり、かなり汗をかくほうです。そのため、厚手のフリースよりも適度に温かい薄手のフリースのほうが快適に感じます。薄手のフリースならザックに入れてもそれほどかさばらないので気軽に持っていけるところもメリットです。
行動中とは逆で、テント泊などでじっとしている場合はかなりの寒がり&冷え性なので保温力の高いダウンは欠かせません。
以前、夏に3,000m級の山でテント泊をしたとき、夏なのに薄手のダウンでは寒くてなかなか寝られませんでした。その経験を踏まえ、1泊以上の登山ではフィルパワーの値が高い中厚手のダウンを必ず持っていくようにしています。
薄手フリース&中厚手ダウンの組み合わせは、重ね着にも便利です。冷え込んだときは、薄手フリース→中厚手ダウン→アウター(レインジャケット)の順番で重ね着をすればかなり温かくなります。
登山を始めたばかりだと「登山の持ち物リストに入っているから」を理由にダウンとフリースをとりあえず両方用意する人も多いと思います。私も特性の違いをあまり気にもせず、コンパクトだからとダウンだけを持っていったときもありました。
中間着に限らず、登山ウェアを選ぶときは山域や標高、気温、コースタイムなどと自分の構想パターンに合わせるのが大切です。ダウンとフリースはどちらも優れた中間着なので、特徴を理解して使い分けてみてくださいね。
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
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