唐松岳(からまつだけ)は北アルプスの後立山連峰にある標高2696mの山です。
ゴンドラとリフトで標高約1800mの地点まで登ることができ、絶景スポットの八方池は観光客でにぎわいます。一方、八方池から先は夏でも雪渓が残る本格的な登山道で、これからアルプスに挑戦したい人の入門の山としてもおすすめです。
この記事では、唐松岳のルートや難易度、アクセス、実際に歩いてみた感想を紹介します。
唐松岳は日本三百名山に選定されています。後立山連峰の白馬岳、五竜岳などと並び立ち、山頂からは迫力のある剣岳や立山、鹿島槍ヶ岳などが望め、360度の大絶景が広がります。
登山客がもっとも多いのは7~9月です。特に八方尾根コースの途中にある八方池は、地元の小中学校で登山遠足の定番コースとなっており大変にぎわいます。
また、この地域にしか分布しない固有植物や貴重な高山植物が多く、花の山としても人気。ユキワリソウやニッコウキスゲ、シモツケソウなど、可憐な花が登山者の目を楽しませてくれます。
唐松岳は長野県北安曇郡白馬村と富山県黒部市にまたがっています。
登山の起点となるのは白馬八方バスターミナル。公共交通機関でアクセスする場合は、JR大糸線白馬駅から路線バス、またはJR北陸新幹線長野駅から特急バスを使い、白馬八方バスターミナルへ向かう方法が一般的です。
東京方面から高速バス利用の場合は、バスタ新宿より「高速バス 新宿 − 安曇野・大町・白馬線」に乗り「白馬八方バスターミナル」で下車。
マイカー利用の場合は、白馬八方バスターミナル近くの白馬八方第2駐車場を利用すると便利です。
唐松岳は2500m超えの高山ではありますが、ゴンドラ、リフトを利用すれば標高770mのゴンドラ駅から標高1830mの八方池山荘まで一気にのぼることができ、唐松岳山頂までは片道4時間ほどで到達します。
北アルプスの中では標高差がそれほど大きくなく、山行時間も短めなので、北アルプスデビューにおすすめの山です。
ルート上に危険な箇所はほとんどありませんが、夏でも4ヶ所ほど雪渓を渡るポイントがあるため、軽アイゼンやチェーンスパイクを持参すると安心です。ただし、これは7~9月の夏山シーズンに限った難易度であり、積雪期の難易度は急激に上がるので、しっかりとした雪山装備と技術が必要です。
また、唐松岳から縦走する場合は、八峰キレットや不帰ノ嶮(かえらずのけん)などの難所ばかりなので上級者向けです。
ゴンドラ、リフトを利用し、八方尾根から唐松岳山頂を目指す王道コースを、1泊2日の小屋泊で歩いてきました。
JR北陸新幹線長野駅から、アルピコ交通特急バス(長野-白馬線)に乗車し、白馬八方バスターミナルにて下車。そこから約10分、徒歩で八方尾根ゴンドラリフト「アダム」八方駅へ向かいます。
唐松岳の登山口となる「八方池山荘」までは、八方ゴンドラリフト「アダム」、アルペンクワッドリフト、グラートクワッドリフトを乗り継ぐので、八方アルペンライン通し券(往復で3,200円)を購入するのがおすすめです。
最初に乗る八方ゴンドラリフト「アダム」は標高差625mを8分でのぼります。ゴンドラが地面からかなり離れているので、きれいな景色と少しのスリルを味わえました。
ゴンドラを降りると、次は「アルペンクワッドリフト」と「グラートクワッドリフト」の2種類のリフトでさらに上へ。リフトはゴンドラと違い、地上から1.5mと低い場所を通るので怖くありません。
また、夏にはリフト駅の手前でニッコウキスゲの群落を見ることができます。
リフトを降りたところが標高1830mの八方池山荘です。ここから登山コースの始まりです。目指す先はガスがかかって真っ白ですが、晴れることを期待して出発します。
ここから1時間30分ほど歩いた所に観光スポットである八方池があるため、登山装備をしていない観光客の姿も多く見られました。
歩きやすく整備された木道を進み、石神井ケルン、第2ケルンを越えて進んでいくと、白馬三山を望む絶景スポットの八方池に到着。
残念ながらこの日はまったく展望が開けず、絶景を見ることは叶いませんでした。それでも登山遠足で来ていた小学生たちがワイワイと楽しそうにお弁当を食べているのを見て元気をもらえました。
八方池から先は登山装備が必要な本格的な登山道となるため、気を引き締めて進みます。
唐松岳頂上山荘までのコースタイムは2時間30分ほど。
尾根の南側を歩きながら進むと、下ノ樺(しものかんば)と呼ばれる場所の付近に大きなダケカンバの林が現れます。これは植生の逆転現象と呼ばれるもので、標高が高いにもかかわらずダケカンバが生育する現象です。八方尾根は、この逆転現象が見られる珍しい場所でもあります。
森林限界を越えたはずなのに林の中を歩くという、不思議な感覚を味わいながら林を抜けると、今度は夏でも雪が残る雪渓地帯に入ります。
私が登った7月中旬は、雪渓が4ヶ所残っていたのでチェーンスパイクを装着しました。
すれ違った登山者の中には、アイゼンやチェーンスパイクなしでは雪渓を登るのが難しく、引き返して来たという方もいたので、雪渓に慣れていない方は夏場でもストックとアイゼンを持参するのがおすすめです。
雪渓を抜ける風は天然のクーラー。夏とは思えないほどひんやりとした、心地いい風を感じられます。
丸山ケルンから唐松岳頂上山荘までの道は傾斜もきつくなり、尾根道は左右が切り立っているので注意しながら進みます。
宿泊地の唐松岳頂上山荘は本館と北館の2棟からなる大きな山小屋です。収容人数は350名で、2段ベッドの寝室があるほか、個室もあります。水洗トイレが完備され、設備がきれいで快適でした。泊まってみたい山小屋のランキングで常に上位に入る、人気の山小屋というのも納得です。
この日は天候が回復しなかったため、頂上へは行かず小屋でゆっくり過ごしました。
2日目の早朝に小屋から唐松岳山頂へ向けて出発。山頂へは20分ほどで到着しました。
この時間も周辺にはガスがかかっていたので、360度の大絶景とはいきませんでしたが、山頂標識の向こうにひときわ存在感を放つ剣岳と立山連峰を見ることができました。
1日目にまったく見られなかった白馬岳方面の山々も少しの間だけ姿を現わしました。手前に不帰ノ嶮、その奥に白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳の白馬三山が続いていて壮観です。
山頂から小屋へ戻ってくると辺りは真っ白。天気は下り坂のようなので朝食後に早めに下山を開始しました。視界の悪い尾根道や雪渓の下りは、急ぎつつも足元を確かめながら進みます。
八方池山荘まで下ったら、行きと同じくリフトとゴンドラで下山。幸い、雷は鳴っていなかったのでリフト、ゴンドラともに運休することなく麓まで下りられました。
唐松岳の八方尾根コースはゴンドラとリフトを使えますが、登山経験としっかりとした装備が必要なことから、これから北アルプスの山々に挑戦するためのステップアップの山としては最適だと感じました。
絶景を楽しめるハイキングとして八方池までの往復もおすすめ。休日は登山渋滞が起こることもある人気の山なので、時間に余裕を持ってチャレンジしてみてくださいね。
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— m.miya(宮本将弘) (@masa_yco) November 6, 2022
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
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