神奈川県三浦半島の最高峰、大楠山(おおぐすやま)。海に囲まれた半島に位置するため、東京湾、房総半島、横浜市街地、富士山、箱根連山、伊豆半島などが見渡せる360度の大パノラマが魅力の山です!
この記事では、絶景を楽しめる大楠山ハイキングの魅力や難易度、アクセス方法や5つのハイキングコース、実際に歩いてみた感想を紹介します。
大楠山(標高241.3m)は神奈川県の三浦半島を南北に連なる「三浦丘陵」の最高峰です。
標高はあまり高くありませんが、頂上からは360度の大パノラマが広がり、「かながわの景勝50選」や「関東百名山」の一つにも数えられます。
逗子市や横須賀市の市街地からほど近い場所にありながら、自然が保護されており、桜や梅など季節の花々を楽しめます。
大楠山への主要な登山口は5ヶ所あり、それぞれの登山口へは電車とバスを利用してアクセスできます。
一例として、この記事で紹介している前田橋コースの場合、京急逗子線「逗子・葉山駅」もしくはJR横須賀線・湘南新宿ライン「逗子駅」から京浜急行バス「横須賀市民病院行き」、「長井行き」、「佐島マリーナ行き」のいずれかに乗車し、「前田橋バス停」で下車します。前田橋バス停までの所要時間は30分ほどです。
車でアクセスする場合は、各登山口付近にある県営の無料駐車場やコインパーキングが利用できます。
大楠山は標高差200mほどで、登山道もよく整備されているため、気軽なハイキングが楽しめます。ファミリーや登山初心者でも無理なく登れるでしょう。
ただし夏場は日差しが強く、山頂付近でも気温が高いので、熱中症対策が必要です。帽子や多めの水分補給などの対策を忘れないようにしましょう。
ここからは、大楠山ハイキングの主要な5つのコースを紹介します。
前田橋バス停からスタートし、川沿いの前田川遊歩道を進んで大楠山山頂を目指すコースで、大楠山山頂までの所要時間は約70分です。次に紹介する衣笠コースと合流してその先の衣笠山公園までつなぐこともできます。
JR衣笠駅から衣笠山公園を経由し、大楠山山頂へ向かうロングルートで、JR衣笠駅から大楠山山頂までの所要時間は約135分です。衣笠山公園は2000本の桜が見られる神奈川県屈指のお花見スポットでもあります。
大楠芦名口バス停から大楠山山頂を目指すコースで、所要時間は約60分です。車の通れる林道がコース途中まで続き、遊歩道歩きがメインのやさしいコースで、体力に自信がない方や子どもにもおすすめです。登山口周辺にコンビニエンスストアがあるので、現地で食料などの調達もできます。
「かながわの景勝50選」の一つ「塚山公園」や歴史スポットを散策しながら大楠山山頂を目指すコースで、歩くのはアップダウンのある舗装路がメインです。
京浜急行電鉄本線「安針塚駅」を出発し、最初に目指す塚山公園にあるのは、三浦按針夫妻の供養塔「安針塚」。歴史好きならぜひ立ち寄ってほしいスポットです。安針塚駅から大楠山山頂までの所要時間は約130分です。
5コース中、大楠山山頂までの距離がもっとも短いコースで、湘南国際村センター前バス停(逗子駅から京急バス「湘南国際村センター前行き」で約30分)から山頂までの所要時間は約40分です。
登山口の標高が高いため、標高差がもっとも少ないコースでもあります。自然豊かなハイキングコースを進むと、急傾斜の階段がいきなり現れます。階段を上りきった後も上り坂が続くので、短いとはいえ登りごたえのあるコースです。
前田橋コースと衣笠コース(上記で紹介したコースのうち1番目と2番目)をつないだロングコースを実際に歩きました。
JR横須賀線逗子駅から京浜急行バスで約30分、「前田橋バス停」で下車します。バスを降りたら交差点を左へ入り、200mほど歩くと遊歩道の起点「お国橋」があります。ここから階段を下りて前田川遊歩道へ入ります。
前田川遊歩道は、大楠山登山口へ続く川沿いのハイキングコース。階段や飛び石、平均台のような木橋があり、アスレチック気分で楽しく歩けます。
前田川は大楠山から流れてきた湧き水が集まってできた清流で、自然環境が残る美しい川です。アユやサワガニなど、水辺の生物が姿を見せることもあります。
前田川遊歩道から大楠山ハイキングコースへ入り、ここから大楠山山頂までなだらかな登り道が50分ほど続きます。登山道はきれいに整備されていて歩きやすく、途中に案内標識があるので迷わず山頂まで向かうことができました。
道の先に白い塔が見えてきたら、山頂まであと少しです。
白い塔は大楠山レーダ雨量観測所で、隣には展望台もあります。大楠山山頂にあるらせん階段状の展望塔は現在閉鎖されているため、景色を楽しむならこちらの展望台がおすすめです。
また、山頂のトイレも閉鎖されているので、この展望台の隣に設置されている大楠平トイレを利用しましょう。このトイレは清潔で、トイレットペーパーも設置されていました。
大楠平から階段を上れば大楠山の頂上です。頂上は広場になっていて、ベンチも多数あり、のんびり休憩や食事ができます。
山頂の周りには遮るものがなく、東側には東京湾とその向こうに房総半島、西側には相模湾、その先に箱根連山や富士山が見えることも。山頂の大楠山ビューハウスの展望塔は残念ながら閉鎖されていましたが、下からでも十分に美しい景色を見ることができました。
大楠山を下山し、続いて衣笠山公園を目指します。急な下りの階段が200段以上続いたあと、ゴルフ場の脇の道を一気に下ります。途中に立っている「衣笠城址・衣笠山公園」の標識を頼りに進みましょう。
登山道が終わり、車道に出ます。ここの真新しい大きな建物は、横須賀ごみ処理施設「エコミル」です。エコミルの前にはハイカー用の公衆トイレとベンチ、自動販売機があるので休憩場所にピッタリです。一気に下って疲れたら、ここで休憩していきましょう。
エコミルの前の車道を少し進むと、再び山道へ。途中、横浜横須賀道路を横断する歩道橋を渡りますが、歩道橋は幅が広く、車道とは完全に分離されているので、安全に渡ることができます。
歩道橋を渡ったあと、平坦な山道を衣笠城址方面へ進みます。大善寺を過ぎ、いったん国道26号線に出たあと、衣笠山公園へ向かう登山口から再び山道に入ります。登山口は畑の脇にあり、分かりにくいので標識を見逃さないようにしましょう。
衣笠山山頂(標高134m)までは15分ほどで到着。山頂の展望台からは東京湾方面が見渡せます。この衣笠山公園は、日露戦争の戦死者を慰霊するための記念碑が建てられ、さらに桜が植えられたのち、明治40年に開園した公園です。
今では2000本以上の桜が咲き誇る桜の名所として知られており、全国の「さくらの名所100選」にも選ばれています。私が訪れた時季は新緑の季節でしたが、3月下旬から4月初旬に訪れるとお花見トレッキングができますよ。
衣笠神社方面へ下り、衣笠商店街のアーケードを抜けるとゴールのJR衣笠駅です。
衣笠は2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも活躍した三浦一族ゆかりの地。時間に余裕があれば鎌倉時代の史跡やお寺巡りをしてみてはいかがでしょうか。
三浦半島最高峰の大楠山は、東京や横浜からアクセスしやすく、登山初心者やファミリーにおすすめの山です。
この記事で紹介した前田橋コースと衣笠コースをつなぐロングコースは、三浦半島を日帰りで横断しつつ、2つのピークからの景色も楽しめ、三浦丘陵の魅力を気軽に味わえます。三浦半島の自然や歴史に触れながら、のんびりとハイキングを楽しんでみてくださいね。
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— m.miya | toritoke.inc (@masa_yco) September 28, 2019
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
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