登山用のヘルメットと聞くと経験豊富な登山者が穂高岳や槍ヶ岳などの高い山で使うものと、低山やハイキングをメインにしてる人にとっては遠い存在ですね。
もちろん高い山では落石や滑落をする可能性も高まりますが、高い山ではなくてもヘルメットが必要な場合もあります。
今回はいざというときに頭部を守ってくれる登山用ヘルメットの必要性や選び方をご紹介いたします。
下山中に足を滑らせて転びそうになったことはありませんか?いくら気をつけていても、急な岩場やぬかるんだ道に足を踏み入れてしまうと滑って転んでしまうケースも少なくありません。
特に秋から冬にかけては登山道に落ち葉が積もっており、滑りやすくなります。転び方によっては、頭を強くうってしまい致命傷を負う可能性もあるのです。
岩場では落石の危険も潜んでいます。2019年8月下旬、多くの登山客が訪れる富士山で落石による死亡事故が起きました。落石防止のネットが張られてない場所だったため、落石の危険は少ないと判断されていたのです。
スタッフが事前にチェックしたはずの登山道でも、落石は十分に起こり得ることを知っておかなければいけません。
登山道での転倒なら頭部を守ってくれますが、高い所からの滑落や落石はヘルメットを被っていれば安心とは言えませんが、ケガが軽くなる可能性はありますので、ヘルメットは登山において必要な装備なのです。
登山中の遭難では、およそ4人に1人は頭部の怪我を負っていると聞きます。そしてその要因は滑落、転落、転倒がほとんどです。
それらが多い地域の自治体では、登山用ヘルメット着用の推奨地域に指定されています。そういった地域では、実際にヘルメットのおかげで助かった登山客の事例もあります。
ヘルメットが推奨されている山域で代表的なのは、日本アルプスの北・中央・南、全ての地域を含む長野県です。
全国第3位の標高を誇る穂高連峰は、日本でも有数の険しい岩場を擁することもあり、多くの地域で着用が推奨されています。ヘルメットを有償でレンタルしている山小屋も少なくありません。
ただし、長野県も自ら喧伝していますが、推奨地域でなければヘルメットが不要という主旨ではないというところは心に留めておきましょう。
有用な登山用ヘルメットですが、その種類は大きく2つに分けられます。ハイブリッドタイプとインモールドタイプです。
まずハイブリッドタイプの方ですが、発泡ポリスチレン、いわゆる発泡スチロールのインナーを強化プラスチックで覆うような作りをしており、丈夫で耐久性に優れ、比較的値段も安い物が多いという特徴があります。
発泡スチロールはよく精密機器等の郵送の際、緩衝材として使われることも多いように、外部からの衝撃を吸収するので、頭へのダメージを軽減する効果が期待できます。
デメリットとしては、耐久性を重視するあまり、できるだけ頑丈なプラスチックで全体を覆うため、どうしても重くなりがちなのと、通気孔が小さく蒸れやすいところでしょうか。
一方のインモールドタイプは、インナーに同じく発泡スチロールを用いていますが、外郭はポリカーボネートという特殊なプラスチックで出来ています。ハイブリッドに比べてヘルメット自体の耐久性は低く、やや高価なところがデメリットです。
ただ、その欠点を補うほどの「軽さ」があります。通気も良いため蒸れにくく、内側が頭に沿った形状をしているのでフィット感は優れています。デザインもカジュアルな物が多く、最近はこちらの方が人気なようです。
ヘルメットには2つの種類があり、形や色もそれぞれに多くの物があります。人によってサイズや頭の形も違うので、実際選ぶとなると事前の試着をおすすめします。
フィット感は人それぞれではありますが、ある程度の基準はあります。ヘルメットのヘッドバンドを調節してもブカブカして動きが固定されなかったり、締付けが弱く感じるものは駄目でしょう。
また、あごひもを全部締めてもグラつきが生じる、作り自体が甘くてすぐ壊れそうなものも良くありません。
レインウェア等、フード付きのジャケットと併用できるのかもポイントです。最近の登山用フード付きウェアは大体対応していますが、手持ちの物に合わせるのでしたら、一緒に試着してみましょう。
重要ながら盲点になりやすい要素が規格マークです。その有無によって、登山に関する国際安全基準にクリアしているかが分かります。
実は日本では登山ヘルメットの規制は特に存在せず、規格マークがなくても登山用として販売も可能なのですが、当然、それは国際安全基準のテストに合格していない商品ということになります。
ないよりはマシというレベルなので、規格がついてないものはできるだけ避けたいところです。なかには落石の可能性がある登山では不向きとされる超軽量タイプ等もあるので、気をつけましょう。
存在するのは2つのマークだけです。欧州規格の安全テストにパスした「EN12492」と、国際山岳連盟の「UIAA」です。こちらの両方か、もしくは片方が表示されているものを選ぶと良いでしょう。
登山用ヘルメットは万が一のときに頭を守ってくれる大事な装備です。ちょっとしたハイキングには必要ありませんが、北アルプス、南アルプスなどに行く際は持って行った方がいいかもしれません。
種類も豊富にあるので軽さを選ぶか頑丈さを選ぶかによって好みは分かれてくると思います。購入する場合は一度手にとって自分の頭にフィットするヘルメットを選ぶことをおすすめします。
▼登山用ヘルメットのご紹介
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローされると喜びます。
東京青梅駅から歩いていける長渕丘陵は気軽なハイキングコース。なんだけど、あかぼっこからは奥多摩の山々が見渡せる素敵な場所です。年末年始でくっちゃりねっちゃりして、鈍った体を整えるきっかけになるのでおすすめです。多分1月に行く。 #里山トラベル pic.twitter.com/NyVksMhOA6
— 宮本 将弘 (@masa_yco) December 28, 2019
ひとりでハイキングに行くのが不安。安全にハイキングを楽しむための基礎知識
豊かな森のなかを気軽に楽しむことができるハイキング。たまにはふらっとリフレッシュに行きたいものですが…
登山初心者はまず何からやるべき?揃えておきたい装備と歩きやすい山
「登山を始めたいけど何から始めたらいいのかな?」と誰もがはじめに抱く悩みですね。登山は街の環境とは異…
登山の虫除け対策でリスクを回避。季節に合わせた対策と虫除けグッズ
登山をするにあたって、必ずと言っていいほどついて回るのが虫問題です。一般的には虫除けスプレーを身体に…
登山装備を準備しよう!基本的な装備や持ち物と初期費用を抑えるコツ
一昔前なら登山装備と聞くと高価で専門的なイメージでしたが、技術が発達した近年では機能的かつ軽量、安価…
夏山登山の服装をチェック!山にあわせた快適な服選びと基礎知識
夏は富士山を代表として、多くの高山が開放される時期です。最も登山に適した季節ともいえますが、服装選び…
趣味の一つに「登山」という選択。登山の魅力や気になる費用
人それぞれ好みはあるけれど、趣味の一つの選択に「登山」を入れるのはいかがでしょうか?というお話です。…
登山ブランドの定番は?人気アウトドアメーカー9選
ザックやウェアを揃えるときどの登山ブランドにしようかと悩みますよね。登山を快適にする装備選びはとても…
登山で使う双眼鏡の倍率は?双眼鏡の選び方と山ならではの楽しみ方
登山は山を登ることを目的としますが、道中での自然観察も楽しみの一つですね。普段見慣れない草花や生き物…
トレッキングポールは登山に必要?初心者こそ揃えておきたい理由と選び方
登山の際、トレッキングポールを使うと体への負担を分散させ、歩行時の推進力をアップさせることができるの…
登山の持ち物リストをチェック。基本的な装備や道具とパッキングのコツ
登山やってみたいけど荷物が多そうでトライしにくいなぁと悩む人も多いですね。確かに、本格的な登山をする…
東京から電車やバスでアクセスできる日帰り登山。山の選び方と持ち物の目安
大自然の中できれいな景色や植物に癒やされ、軽く汗をかいたあとは温泉と食事で元気をチャージ!日帰り登山…
登山の防寒着は何にしよう?防寒着の素材と用途に合わせた選び方
秋冬シーズンだけではなく、真夏であっても高い山は気温が低くなります。一年を通して登山に防寒着は欠かせ…
登山でサコッシュが重宝される理由。便利な持ち物とおすすめブランド
サコッシュとは小型のショルダーバッグのことです。元々は自転車のロードレースなどで使用されていましたが…
トレッキングポールは登山に必要?初心者こそ揃えておきたい理由と選び方
登山の際、トレッキングポールを使うと体への負担を分散させ、歩行時の推進力をアップさせることができるの…
登山向けクッカーの選び方。素材の特徴とおすすめクッカー
みなさんはクッカーについて何かこだわりを持っていますでしょうか。特にこだわりなく、ただの鍋だと認識し…
登山のもしもに備える非常食。行動食との違いや適切な食料とは
登山やハイキングの食料は、みなさんはどのくらい持っていきますか? 「その日食べたい分を持っていく」と…
登山しながら御朱印巡り。苦労してまで欲しい霊山の御朱印
みなさんは趣味の一つとして、御朱印集めが密かに流行っているのをご存じでしょうか?御朱印集めにハマる女…
ひとり登山の魅力とは。リスクを知りつつ、安全登山を心掛けよう
山雑誌では、毎年必ず単独行の特集が組まれるほど、ひとり登山の人気は高まっています。ひとり登山は、グル…
里山活動は未来の街作り。活動の目的やwithコロナの里山暮らし
2020年4月7日コロナの感染拡大防止のため日本でも緊急事態宣言が発令されました。それによって外出自…
登山者の年齢層はどれくらい?遭難事故の傾向や若い世代の特徴
登山と言えばかつては大学や社会人の山岳部や山岳会をイメージされていましたが、1990年代には中高年の…
夏山登山の服装をチェック!山にあわせた快適な服選びと基礎知識
夏は富士山を代表として、多くの高山が開放される時期です。最も登山に適した季節ともいえますが、服装選び…
登山で使う寝袋(シュラフ)の選び方。対応温度や収納性をチェック!
日帰り登山に慣れてきたら宿泊登山にもチャレンジしてみたくなるものです。寝袋(シュラフ)で寝るなんて想…
登山にヘッドライトは持参すべき?活用ポイントとヘッドライトの選び方
「日帰り登山だからヘッドライトは必要ない」と考える方もいらっしゃいますが、ヘッドライトは必需品です。…
登山の虫除け対策でリスクを回避。季節に合わせた対策と虫除けグッズ
登山をするにあたって、必ずと言っていいほどついて回るのが虫問題です。一般的には虫除けスプレーを身体に…
泊まり登山で山小屋を利用しよう。山小屋の重要性や基本的なマナー
日帰り登山に慣れてきたら泊り登山にチャレンジしたいと考える方は少なくありません。「山小屋」を利用すれ…
登山前日にやっておきたいこと。食事や睡眠にも気を配ろう!
登山を楽しく安全に行うには、事前の準備がとても重要です。特に前日の行動において注意しておきたいことが…
登山の緊急時に役立つホイッスル。使い方や種類を知って備えておこう!
登山でいざというときに役立つのが「ホイッスル」です。滑落や遭難、ケガで動けなくなったときに救助を呼ぶ…
初心者にやさしい関東の日帰り登山ルート。計画立てて山へ行こう!
「体力がないから山に登る自信ない…」「遭難とか怖そう…」など、登山は未経験者からすると距離が遠いイメ…
登山用ヘルメットの必要性。ヘルメットの種類と選ぶポイント
登山用のヘルメットと聞くと経験豊富な登山者が穂高岳や槍ヶ岳などの高い山で使うものと、低山やハイキング…
春から登山を始めてみたい!春山の魅力と都内にある初心者におすすめの山
長い冬が終わり春の暖かい気候に恵まれると、途端に登山心がうずくものですね!春から登山を初めてみたいと…