夏は富士山を代表として、多くの高山が開放される時期です。最も登山に適した季節ともいえますが、服装選びが意外な悩みどころではないでしょうか。
夏は大量の汗をかき、脱水症状や熱中症などのリスクも潜んでいます。さらに、ハチやアブなどの虫対策、日焼け対策など夏ならではの工夫が必要ですので、今回は登山の夏服についてご紹介いたします。
登山服の考え方の一つとして、登る山の標高は指針になります。初心者でも登りやすく、登山客が多い東京の高尾山は600m未満、日本のシンボルでもある富士山は3,000mを越えます。
100m標高が高くなるにつれて0.6℃気温が下がりますので、平地と富士山頂上の温度差は約20℃も違ってくるのです。夏と冬の気温差に匹敵することになります。
そのため高尾山と富士山では準備する装備や服装も全然違ってくるのです。
標高以外では、気候の変化も考慮に入れましょう。どんなに地上が晴れて穏やかな天気であっても、突然の雨にふられることも山では珍しくありません。
場合によっては強く冷たい風が吹いて、一気に体温が奪われることもあります。雨具は必需品ですが、その時々に応じた服装の準備も必要になります。
近年の猛暑は災害とも言われるほど気温が上昇しています。暑い夏の日差しの中、登山をすれば体感温度はさらに上昇します。思わずTシャツ一枚だけで登りたくなりますよね。ですが、それはおすすめできません。
登山は標高が高い所で活動するため太陽により近づくことになり、紫外線を浴びやすい状況下にあります。肌を露出しすぎてしまうと肌にも悪く、日焼けしてしまいます。肌の弱い方は特に長袖を着るなどして対策をしましょう。
また、夏の山は虫が活発に活動する時期でもあります。街ではあまりみかけないブヨは、肌をむしるよう吸血してくる危険な虫なので注意が必要です。長袖を着用し、露出はできるだけ避けるようにしましょう 。
登山での服装の基本は3レイヤーといい、いわゆる3種類の異なる機能の服を重ね着することを表します。まず肌着、その上から中間着、そして外着を重ね着していきます。
簡単にそれぞれの機能を説明しますと、肌着は主に汗を吸収して拡散し、中間着は保温、外着は防風防寒、それと雨具としての効果を持ちます。
夏山でも3レイヤーの考えに従いますが、低山の場合、外着は雨天時に使用するレインウェアになります。普段は外着はしまっておき、肌着と中間着だけで大丈夫でしょう。
それでも、「夏にあまり重ね着するのは・・・」と気後れしてしまうかもしれませんが、夏用に作られた登山服はたくさんあり、それらをうまく重ね着していけば、非常に快適な環境で夏山に臨むことができるはずです。
蒸し暑い夏にロングパンツを着るのは抵抗がある方もいるでしょう。ですが、夏は蜂やブヨやなど危険な虫が多く、また日差しも強いので日焼けの心配がついて回ります。肌の露出は極力避けるのが賢明です。
そこで、ハーフまたはショートパンツにサポートタイツを合わせるのがおすすめです。夏用は、腰回りからふともも、ふくらはぎまで脚全体を保護してくれるだけでなく、メッシュが入ってるため通気性が良い上、フィット感も良好で身体の動きを妨げません。
加えて無駄な筋肉の収縮を抑えてくれるので、翌日の筋肉痛軽減にも効果が見込めます。
外着としてレインウェアを使う場合、レインウェアは高価なものが多いです。ですので薄手のウィンドブレーカーを替わりに持っていくのもおすすめですね。
真夏の登山ではとにかく汗をかきます。直接肌に触れる肌着には、柔らかく手触りが快適な綿の素材が良さそうに思えますが、おすすめはできません。汗をすぐに吸い込んでしまい速乾性に乏しいので、濡れたままの不快感と共に、体温もどんどん奪われていきます。
肌着には化学繊維を用いるものがいいでしょう。吸湿速乾性に優れていますので、こまめな水分補給で滝のように出てくる汗も溜め込まず、乾きが早いです。中には消臭効果があるものや、紫外線カット等のオプションが付いてくるものもあります。
速乾性があるといっても、大量の汗が乾き切ることはありません。標高の高いところで濡れた肌に冷たい風を受けると、予想以上の寒さを感じます。上下レインウェアか、ウィンドブレーカーを防寒対策として持っておきたいですね。
登山用の服を取り扱っているのは、専門店はもちろんですが、スポーツ用品店やカジュアル衣料品店、その他、総合スーパーでも置いてあります。
アルペンやスポーツデポ、ゼビオ等の大型のスポーツ用品店ではアウトドアのカテゴリーで登山グッズが見つかります。広い店内に、有名な登山用品ブランドを豊富に取り揃えていますので、専門店に見劣りはしないでしょう。
カジュアル衣料品店のユニクロでは、代表的な「エアリズム」が機能性衣料として人気です。繊維大手の東レの技術によって、吸湿性を高めているので、夏の登山でも十分に効果を発揮するでしょう。
総合スーパー最大手のイオンでも機能性衣料があり、専門店に比べると安価なのが魅力的です。ただ、これらの機能性衣料はいずれも、登山用に作られたわけではありませんのでメインとして使うのはおすすめできません。
夏の登山での服装は速乾性のあることはもちろん、日焼け、虫よけ対策として肌を露出しないことがポイントになります。
長袖のインナーの上にTシャツを着ればお洒落を楽しみつつ機能的にも万全ですね。服以外にも帽子やサングラス、水は多目に持って行くなど暑い日差しに負けないように準備を整えて夏山登山に挑みましょう!
▼登山でバテないための体作りに役立つ本
▼今すぐトレーニングを始めるための服装
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローされると喜びます。
昨日は埼玉県比企郡にある堂平山と小川町を散策。いつもなら登山のあとすぐ帰ってしまうけど、今回は山とその地域を楽しむプラン。堂平山頂上には役目を終えた天文台があり、今は宿泊できる施設になっています。星がきれいに見えそう。サイクリングする人が多かった。#里山トラベル pic.twitter.com/wpAaOQd0qJ
— 宮本 将弘🏡 (@masa_yco) August 17, 2019
HIKES編集部です。「歩くを文化に暮らしを楽しむ」をコンセプトに自然の中を歩くことが暮らしの一部になるようなコンテンツを発信していきます。登山やハイキング、ロングトレイルを始め、地元の人しか知らない里山噺など、歩くことを軸にしたWEBメディアです。
寒さに負けない登山の防寒対策。ウェアや小物選びから効果的な防寒対策
登山を楽しむにあたっては防寒対策が欠かせません。防寒対策が十分でないと、山を楽しめないどころか、時に…
登山でサコッシュが重宝される理由。便利な持ち物とおすすめブランド
サコッシュとは小型のショルダーバッグのことです。元々は自転車のロードレースなどで使用されていましたが…
雨の日の登山は中止にすべき?雨の日登山の危険性と雨対策
山に行く計画を山仲間と立てたのに明日の天気が雨、もしくは曇り雨などはっきりしない場合みなさんはそれで…
登山装備を準備しよう!基本的な装備や持ち物と初期費用を抑えるコツ
一昔前なら登山装備と聞くと高価で専門的なイメージでしたが、技術が発達した近年では機能的かつ軽量、安価…
登山の防寒着は何にしよう?防寒着の素材と用途に合わせた選び方
秋冬シーズンだけではなく、真夏であっても高い山は気温が低くなります。一年を通して登山に防寒着は欠かせ…
趣味の一つに「登山」という選択。登山の魅力や気になる費用
人それぞれ好みはあるけれど、趣味の一つの選択に「登山」を入れるのはいかがでしょうか?というお話です。…
UL(ウルトラライト)スタイルの登山とは?特徴や人気メーカーをご紹介
手ぶらでバーベキューや、手ぶらで釣りなど、巷には手ぶらで○○が溢れてきてます。重い荷物を持たずに楽し…
登山で使う寝袋(シュラフ)の選び方。対応温度や収納性をチェック!
日帰り登山に慣れてきたら宿泊登山にもチャレンジしてみたくなるものです。寝袋(シュラフ)で寝るなんて想…
春から登山を始めてみたい!春山の魅力と都内にある初心者におすすめの山
長い冬が終わり春の暖かい気候に恵まれると、途端に登山心がうずくものですね!春から登山を初めてみたいと…
登山の持ち物リストをチェック。基本的な装備や道具とパッキングのコツ
登山やってみたいけど荷物が多そうでトライしにくいなぁと悩む人も多いですね。確かに、本格的な登山をする…
【那須岳(茶臼岳・朝日岳)】火山のダイナミックな光景と紅葉をロープウェイを利用して楽しむ日帰り登山
那須岳(なすだけ)は栃木県北部に位置する那須連山、特に「茶臼岳(ちゃうすだけ)」「朝日岳(あさひだけ…
【岩木山】青森県の最高峰を九合目からお手軽に登頂
津軽平野の南西にそびえる岩木山は、青森県の最高峰で日本百名山に選定されています。その美しい円錐型の山…
【男体山】中禅寺湖を振り返りながら奥日光の霊山を登る日帰り登山
男体山は中禅寺湖の北側にそびえる、美しい円錐形の山です。古来、日光二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ、…
【木曽駒ヶ岳】初心者でもロープウェイで中央アルプス最高峰へ!千畳敷カールの絶景が待つ日帰り登山
中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)は標高3000mに迫る標高がありながら、ロープウェイ…
【大台ヶ原】豊かな自然と見どころ満載の東大台ハイキングコースを歩く
奈良県と三重県の県境に位置する「大台ヶ原(おおだいがはら)」は、日本百名山をはじめ、日本百景、日本の…
【奥多摩・御前山】奥多摩湖から始まる急登の連続!達成感を味わえる日帰り登山
大岳山(おおだけさん、おおたけさん)、三頭山(みとうさん)とともに奥多摩三山に数えられる「御前山(ご…
【塔ノ岳・登山】首都圏近郊の好展望の山!丹沢を代表する人気コース表尾根を歩く
表丹沢の「塔ノ岳(とうのだけ)」は、展望の良さと都心からのアクセスのしやすさで人気の山です。標高は1…
【檜洞丸】西丹沢の秘境を巡る日帰り登山!アクセスと難易度、絶景ポイントを紹介
檜洞丸(ひのきぼらまる)は西丹沢の山深さが感じられる静かな山で、「西丹沢の盟主」とも呼ばれています。…
【袈裟丸山】花見登山を満喫!山肌をピンクに彩るアカヤシオの名山を歩く
栃木・群馬県境の足尾山地に属する袈裟丸山(けさまるやま)は、アカヤシオの名所として名高い山で、シーズ…
【大楠山・登山】三浦半島を横断!海と山の360°パノラマが楽しめる低山ハイキング
神奈川県三浦半島の最高峰、大楠山(おおぐすやま)。海に囲まれた半島に位置するため、東京湾、房総半島、…
【群馬・根本山】自然のアスレチック!低山ながらスリルと登りごたえのある古道歩き
栃木・群馬両県の百名山に選定されている「根本山」は、古くから信仰の山として親しまれています。根本山へ…
【丹沢・不動尻】一面黄色の世界!早春のハイキングで「ミツマタ」を見に行こう!
春が来て登山・ハイキングに最適なシーズンとなりました。春ハイキングの楽しみのひとつに、山で出合うお花…
トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう
トレイルランと登山は、山を「走る」のか「歩く」のかという違いだけで、似たようなものだと思いがちですが…
【積雪期・谷川岳】雪山初心者におすすめ!日帰りで360度白銀の世界へ
「トマの耳」「オキの耳」の双耳峰(そうじほう)からなる「谷川岳(たにがわだけ)」は、日本百名山のひと…
【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山
気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがた…
【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)
皆野アルプスは破風山をはじめとしたいくつかのピークをつなぐ低山縦走コースです。最高峰の大前山でも65…
【三国山・鉄砲木ノ頭】富士山の絶景を満喫するハイキングコース
丹沢山地の西端、山中湖の近くに位置する「三国山(みくにやま)」は、神奈川県、山梨県、静岡県の3県にま…
【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山
関東屈指の人気の山域、丹沢の東側に位置する大山は、ピラミダルな美しい山容が特徴の山です。古くから山岳…
【鳥取・大山】初心者でも安心!自然と歴史満喫の夏山登山道、行者コースを歩く
鳥取県西部に位置する「大山(だいせん)」は、西日本最大級のブナ林や国の特別天然記念物ダイセンキャラボ…
【棒ノ折山・登山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山
奥武蔵エリアにある「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」は、渓流沿いのコースで沢歩き気分が楽しめる山です。ゴ…