山の食事は登山の楽しみの一つですよね。中でも、おにぎりは簡単に作れてすぐに食べられ、エネルギー補給ができる定番の山ごはんです。ただし、気温の高い夏場はおにぎりが腐りやすいため、注意しないと食中毒を起こす危険もあります。
この記事では、夏場の登山でも腐りにくいおにぎりの作り方や持ち歩き方、さらにおすすめの具材も紹介します。
おにぎりに限らず、夏場に食べ物が腐りやすいのには気温と湿度が関係しています。
・気温30℃以上
・湿度が高い(水分が多い)
・菌の栄養分(具や海苔)がある
この3つの条件にあてはまると、食中毒の原因となる菌が活発に繁殖します。中でもでんぷんと水分が多いおにぎりは、食中毒の原因となる「黄色ブドウ球菌」が発生しやすい食べ物です。持ち歩きには便利ですが、夏場に持っていく場合は腐らせない工夫が必要です。
傷んだおにぎりを知らずに食べると食中毒を起こす危険があります。以下のような変化に気付いたら、食べるのはやめて持ち帰り、廃棄しましょう。
【におい】
・酸っぱいにおいがする
・発酵したような臭みがある
【見た目】
・表面がネバネバしている
・米の粒同士が糸を引く
・米がべチャッとしている
・黄色っぽく変色している
・カビが生えている
【味】
・酸っぱい
・おいしくない、気持ち悪い味がする
・粘りを感じる
気温と湿度が高い場所でおにぎりを腐りにくくするポイントは、「おにぎりの握り方」と「中に入れる具材」です。以下で詳しく説明します。
お酢や梅干し、生姜には殺菌作用があるため、ごはんに混ぜておくと傷みにくくなります。量の目安は、おにぎり1個分のごはんに対して、お酢であれば小さじ1杯、梅干しなら1個、生姜ならスライス3枚くらいです。
ごはんに味が付いたりにおいが強くなったりしそうだと感じるかもしれませんが、少量なのでそこまで味やにおいは付きません。お酢はごはんを炊く前の水に加えることも可能です。
しっかりと手を洗ったつもりでも、うっかり触ったところから手に雑菌が付いてしまっているかもしれません。その状態で素手でおにぎりを握ると、おにぎりに雑菌が移ってしまう可能性があります。そのため、おにぎりはラップやビニール手袋で握り、素手で食材に触れないようにしましょう。
おにぎりの中に具を入れるときも、箸やスプーンを使うのがおすすめです。包むときは同じラップに数個まとめて包むと傷みやすくなるので、面倒でも一つずつ個別に包んでくださいね。
ごはんが熱いうちにラップなどに包んでしまうと、ごはんから出た湯気が水滴になり、そこから雑菌が繁殖する危険があります。おにぎりにする場合は粗熱を取ってから握るようにしましょう。
おにぎりを海苔で包むと海苔が水分を吸い、おにぎりの内部がずっと蒸れた状態になります。さらに海苔が雑菌の栄養分となって繁殖させてしまう危険もあります。海苔で包みたい場合は、コンビニのおにぎりのように食べる直前に包んで、パリパリの状態で食べましょう。
夏場に持っていくおにぎりの具として、腐りにくいおすすめのものと、夏場に向かない、腐りやすいものに分類しました。
・塩・ゴマ
・梅干し
・大葉
・ゆかり
・こんぶの佃煮
・焼鮭(塩鮭)
おにぎりの定番具材の梅干しは、夏におすすめの具材No.1です。ただし、梅干しを選ぶ際は、はちみつ梅などの甘い梅ではなく塩分が多いものを選びましょう。また、殺菌作用のある梅は真ん中に入れるより、ごはん全体に混ぜるほうがより傷みにくくなります。さらに、海苔の代わりに大葉で包めば、傷みにくい最強の組み合わせになりますよ。
また、水分が少なく味付けが濃いこんぶの佃煮や焼鮭も傷みにくい具材です。登山では汗をたくさんかくので、おにぎりの塩を通常より多めにして味を濃くすると、塩分補給もでき、傷みにくくもなるのでおすすめです。
・ツナマヨ
・明太子
・しらす
・おかか
・炊き込みごはん(混ぜごはん)
・チーズ
明太子やしらすのような生の具材、卵でできたマヨネーズ、乳製品のチーズは腐りやすい食材です。
また、水分が多いと雑菌が繁殖しやすくなり、傷みも早くなります。その意味で、炊き込みごはんは、ごはん自体の水分に他の具材の水分も加わっているため、意外と傷みやすいのです。。混ぜごはんやチャーハンも、同様の理由で夏場におにぎりにするのは避けましょう。
ここからは、登山中におにぎりやお弁当が腐るのを防ぐ持ち歩き方を紹介します。ポイントは、雑菌が繁殖しにくい温度と湿度をなるべく保つことです。
おにぎりの握り方や具材に気を配っても、暑いところにずっと置いておけば傷んでしまうものです。気温が高くなりそうな日には保冷剤と保冷バッグを活用し、涼しい状態をキープしましょう。
ザックの中に入れるときも、直射日光に当たらないように、なるべく奥のほうに入れるのがおすすめです。また、登山口まで車移動する場合は、気温が高くなる車内に置きっぱなしにせず、クーラーボックスに入れておきましょう。
保冷剤だと食事の後は荷物になってしまいますが、水を凍らせたペットボトルを保冷バッグに入れておけば、保冷剤代わりになります。氷が解けたあとは冷たい水も飲めて、荷物も軽くなるので一石二鳥です。
手作りではなく、コンビニのおにぎりを買って持っていくという人も多いでしょう。コンビニのおにぎりは衛生管理された工場で作られており、雑菌を繁殖させにくくする保存料が使われているので、手作りのおにぎりよりは傷みにくいです。
ただし、前述したような傷みやすい具を選んだり、暑い場所に放置したりすれば食中毒の危険は十分にあります。コンビニのおにぎりを持っていく場合も保冷剤や保冷バッグを活用し、涼しい状態をキープするように心がけましょう。
夏場の登山でも腐りにくいおにぎりの作り方や持ち歩き方、おすすめの具材を紹介しました。せっかく作ったおにぎりが傷んでしまって食べられなくなることがないよう、作り方や持ち歩き方に気を配りたいですね。
おにぎりに限らず、夏の登山では気温が高くなり、食材が傷みやすくなります。もし長時間の登山になるようなら、調理の手間はかかりますが、バーナーなどを持参し、ラーメンやパスタなどの乾麺、フリーズドライ食品、缶詰などの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
紹介したポイントをもとに、夏の登山で楽しいランチタイムを過ごしてくださいね。
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今日の午前は長野県大町市にある鷹狩山を歩いてきました。標高1164mの山頂からは大町市とドーンと聳える北アルプスの絶景が。朝食に米粉パンのホットサンド、帰りに十割そばをいただきました。まだ早いけど良き一日でした☀#里山トラベル pic.twitter.com/POodfBDfT0
— m.miya(宮本将弘) (@masa_yco) May 29, 2022
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
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