「登山は計画で全てが決まる」と言っても過言ではないほど、登山計画を立てることは重要なことです。
何時に出発して何時に目的地につき、下山するのか、どのようなメンバーと行くのか、食事や休憩、トイレはどこにあるのかなど、事前に計画を立てることが安全登山に繋がります。
今回は登山計画の立て方から便利なサービスまでご説明いたします。
「初心者向け」「気軽に登れる」などのワードを見ると、登山初めてだけど大丈夫そう…と思うことはないでしょうか。いざ山を登ってみると思った以上にきつかった、下山が遅くなってしまったということがあります。運が悪ければ遭難やケガをする可能性だってありえるのです。
一般的に低山(2,000m以下)の山は軽視されがちですが、侮ってはいけません。幼児や小学生でも登れる山として人気の高尾山でも遭難事故は発生しています。年間350万人ほどが入山していますが、救助要請は100件に迫る勢いなのです。
高尾山ほど有名な山なら登山情報は溢れていますが、人気のアルプスや八ヶ岳よりも低山は遭難しやすいとも言われています。その理由として下記のようなことが挙げられます。
・登山ルートの情報が少ない
・登山口がわかりにくい所にある
・道が整備されていない
・登山者が少ない
・軽装備になりがち
などなど、低山ならではの特徴や気の緩みなどから遭難する可能性も高くなるのです。「低山だから」と軽視せずにしっかりとした計画を立てることが重要になってきます。
近年のアウトドアブームはシニア世代だけではなく、20〜30代の若者の登山者も増加傾向にあります。ただ、人数が増えれば逆に遭難事故も増え毎年多くの命が山で失われています。
遭難事故を防止するには知識や技術の前に登山計画をしっかり立てることが安全登山への第一歩です。登山計画を書式にまとめたものが「登山計画書」となり、登山口にて登山届けを提出します。
これまで登山届けは本人の任意でしたが、山によっては登山届けの提出が義務づけられていますので、必ず出すようにしましょう。
登山届けに記載する内容は以下になります。
①本人情報(名前、住所、電話番号など個人情報含む)
②メンバー情報(個人情報含む自分以外のメンバー情報)
③登山日程(入山日時から下山予定日時、宿泊する場合はどこで泊まるのか)
④登山ルート(どのルートを通るのか)
⑤装備・持ち物(水や食料、テントなど何を持っているか)
これらの情報を1枚の紙に記載して登山届けの箱に投函します。インターネット上で提出できるサービスもありますので状況に合わせてご利用ください。
登山届けを提出することで何かあったとき、救助のヒントになるので自分の身を守るためにも登山届けの提出を率先して義務づけすることが大切です。
登山計画で重要なポイントは、どのルートを歩き何時ごろに各地のポイントを通過する予定なのかがわかるようになっていることです。
山頂へ続く道は一本ではないので、どのルートを使うのかはとても重要です。傾斜が比較的なだらかなルートもあれば、岩場もあります。最短ルートで行くのか、回り道でも眺望のよい道を選ぶのか、それぞれの選択によって違ってきます。
ルートを決める際にはガイドブックや地図を参考にしてみましょう。水場やトイレの場所、山小屋の有無やどこで休憩するかも予定に組み込んでおくのがベストです。
初心者であればなるべく多くの人が利用するコースがおすすめです。不測の事態が起きた場合でも、人目があれば誰かが対応できるかもしれません。
世間ではソロ活ブームで独りキャンプをする人が増えていますが、安全面を考えれば独り登山、もしくは人目につきにくいルートは避けたいですね。
直近の状況を知るには、ビジターセンターや山小屋のホームページ、登山情報サイトなどを確認してみましょう。
さらにinstagramやTwitterなどのSNSでも情報収集できますので、一つの情報だけではなく、多角的に情報を集めて判断材料にすることをおすすめします。
ルートが決まったら、お目当ての山までの交通手段を調べましょう。高尾山のように駅から歩いて入山できる場所ばかりではありません。登山口までの道がわからず予定時間より遅れてしまった…なんてことは登山あるあるの一つです。
平日と休日では本数や時間も変わるでしょうし、季節や天候、場合によっては道路工事などの影響で臨時ダイヤになっていることも考えられます。
ネット上では古い情報がそのまま載っている場合もあるため、常に最新情報を入手しようという心がけが必要です。
車で登山口まで行く場合は駐車場の有無やどれくらいの広さなのかをチェックしましょう。
狭い駐車場や登山シーズンのときは早く到着しないと停められない可能性もあります。停められなかった場合、別の駐車場を探すにも時間がかかってしまうので、不安な場合は近くの駅にある駐車場に停めてバスで向かう計画を立てた方がより確実です。
登山届けは登山口にあるポストに投函するだけではなく、家族や友人など身近な人にも伝えておくと安心ですよ。
もし遭難してしまった場合、人が多い山道なら誰かが救援を出してくれるかもしれないですが、もし誰もいない山を単独登山かつ連絡ができない状態だった場合、最初に異変に気づくのは身近な人になります。
レスキュー隊は救援要請があってから動き始めますので、連絡がない場合は遭難しているかどうか気づくことができません。
例えば日帰り登山で何時までに連絡がなかったら救援を出すようにと伝えておくことで最悪の事態から逃れられるかもしれませんね。
万が一を考慮して登山届けのコピーを身近な人にも渡しておくことは、大事な人に心配をかけさせないマナーかもしれません。
また、登山届けの提出先は、登山口のポスト以外にも管轄の警察や登山口近くの交番でも受付てくれます。中にはインターネット上で受付してくれるところもあります。管轄によって届け方法が異なるのでご注意ください。
【参考】
登山計画書・登山届の提出先
登山計画書は日本山岳協会のホームページにもテンプレートがありますが、特に決まった書式はありません。とはいえ、登山者の命運を握る重要なものなので、ある程度書式は合わせた方がいいですね。
テンプレートをダウンロードして印刷して記入するのもいいですが、登山計画書を作成し、そのまま登山届けを提出できる「コンパス 山と自然ネットワーク」というサービスもありますので利用するのもいいでしょう。
万全に準備することはもちろん大事なのですが、一番は安全に下山することですね。遭難のリスクをできる限り減らすにはWEBやアプリサービスを使うことをおすすめします。
「YAMAP」「山レコ」などGPS機能付きのサービスを使うことで道迷い防止もできますし、コミュニティに参加していれば、その中で登山することを伝えておくことで予防線をはることができます。
Twitterでリアルタイムで登山状況を投稿するのも、ある意味その人の無事を確認できるツールとして役立っているのではないでしょうか。
【こちらも合わせて】
登山で使うGPSアプリは何がいい?GPSアプリの選び方と使い方
テクノロジーの発達とともに遭難事故を減らすためのサービスはどんどん新しいものに進化しています。
従来のやり方だけに捕われず、良いサービスは使っていくように心がけることも安全登山への道につながります。
登山計画を立てて書式にまとめるコツはただ一つ、自分で考え自分で作ってみることです。それを何回も繰り返すことで確実に上手になり、知識も自然についてきます。
複数人で登山する場合、登山計画書を作るのは恐らくリーダーになるのですが、自分がリーダーでなくても自分で作るクセをつけておくのが良いですね。受け身のままではなかなか上達できないものです。
もし計画通りにいかない場合、無理せず引き返すという判断もできるので、登山計画はその登山を無事に完了させるための重要な指針になります。登安全登山は自分で作ると心がけて山を楽しみましょう。
▼登山計画を立てるのに役立つ本
▼パッキングに関する本
・IT・Web・ゲーム業界のエンジニア転職なら【Tech Stars Agent】
・NHKほかメディアで話題殺到! 女性が選ぶ婚活サイト「キャリ婚」
・マンツーマンでお金のトレーニング「bookee」
・富士山吉田登山口からすぐ!登山用品レンタルならそらのした
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローすると喜びます。
東京青梅駅から歩いていける長渕丘陵は気軽なハイキングコース。なんだけど、あかぼっこからは奥多摩の山々が見渡せる素敵な場所です。年末年始でくっちゃりねっちゃりして、鈍った体を整えるきっかけになるのでおすすめです。多分1月に行く。 #里山トラベル pic.twitter.com/NyVksMhOA6
— 宮本 将弘 (@masa_yco) December 28, 2019
HIKES編集部です。「歩くを文化に暮らしを楽しむ」をコンセプトに自然の中を歩くことが暮らしの一部になるようなコンテンツを発信していきます。登山やハイキング、ロングトレイルを始め、地元の人しか知らない里山噺など、歩くことを軸にしたWEBメディアです。
登山で役立つエマージェンシーキット。必要な理由と準備すること
警察庁が発表する『山岳遭難の概況』によると登山中の事故やけがなど、遭難者は年々増えているそうです。遭…
登山で疲れないためのコツは?歩き方や回復方法、疲れない体作るをご紹介
登山は楽しい!でも帰ってからの疲れが中々とれないということはよくありますね。疲れるから登山に行きたく…
登山に適したカメラは一眼レフ、ミラーレス?初心者におすすめのカメラと選び方
山の上からの絶景や自然の素敵な景色を見たとき、この感動を写真に切り取ってみたいと思ったことはありませ…
登山の持ち物リストをチェック。基本的な装備や道具とパッキングのコツ
登山やってみたいけど荷物が多そうでトライしにくいなぁと悩む人も多いですね。確かに、本格的な登山をする…
登山は体力がないとできない?体力が必要な理由とトレーニング方法
登山するために体力があるに越したことはありませんが、「体力に自信ができてから」「筋肉をつけてから」と…
登山靴の種類と選び方。日帰り登山や富士山に最適な登山靴をご紹介!
登山を始めるきっかけは色々ありますが、まわりの様子を見ると「富士山」や「屋久島」から入る方が多いよう…
登山初心者はまず何からやるべき?揃えておきたい装備と歩きやすい山
「登山を始めたいけど何から始めたらいいのかな?」と誰もがはじめに抱く悩みですね。登山は街の環境とは異…
冬の登山にはアイゼンが必要不可欠。アイゼンの種類と選び方
どこまでも澄み渡る青い空と白銀の世界。冬山の景色は息を飲むほど美しいものです。夏山と違って虫もいなけ…
登山の天気チェックはどうしてる?山の天気の特徴と天気予報サービス
安全で楽しい登山をするためには「天気」は重要なポイントです。一般の天気予報は街の予報であって山の天気…
登山やトレッキングに欠かせない「行動食」のおすすめは?
登山やトレッキングに欠かせないのが「行動食」。登山は重たい荷物を背負い登ったり、下ったりとカロリーを…
【那須岳(茶臼岳・朝日岳)】火山のダイナミックな光景と紅葉をロープウェイを利用して楽しむ日帰り登山
那須岳(なすだけ)は栃木県北部に位置する那須連山、特に「茶臼岳(ちゃうすだけ)」「朝日岳(あさひだけ…
【岩木山】青森県の最高峰を九合目からお手軽に登頂
津軽平野の南西にそびえる岩木山は、青森県の最高峰で日本百名山に選定されています。その美しい円錐型の山…
【男体山】中禅寺湖を振り返りながら奥日光の霊山を登る日帰り登山
男体山は中禅寺湖の北側にそびえる、美しい円錐形の山です。古来、日光二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ、…
【木曽駒ヶ岳】初心者でもロープウェイで中央アルプス最高峰へ!千畳敷カールの絶景が待つ日帰り登山
中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)は標高3000mに迫る標高がありながら、ロープウェイ…
【大台ヶ原】豊かな自然と見どころ満載の東大台ハイキングコースを歩く
奈良県と三重県の県境に位置する「大台ヶ原(おおだいがはら)」は、日本百名山をはじめ、日本百景、日本の…
【奥多摩・御前山】奥多摩湖から始まる急登の連続!達成感を味わえる日帰り登山
大岳山(おおだけさん、おおたけさん)、三頭山(みとうさん)とともに奥多摩三山に数えられる「御前山(ご…
【塔ノ岳・登山】首都圏近郊の好展望の山!丹沢を代表する人気コース表尾根を歩く
表丹沢の「塔ノ岳(とうのだけ)」は、展望の良さと都心からのアクセスのしやすさで人気の山です。標高は1…
【檜洞丸】西丹沢の秘境を巡る日帰り登山!アクセスと難易度、絶景ポイントを紹介
檜洞丸(ひのきぼらまる)は西丹沢の山深さが感じられる静かな山で、「西丹沢の盟主」とも呼ばれています。…
【袈裟丸山】花見登山を満喫!山肌をピンクに彩るアカヤシオの名山を歩く
栃木・群馬県境の足尾山地に属する袈裟丸山(けさまるやま)は、アカヤシオの名所として名高い山で、シーズ…
【大楠山・登山】三浦半島を横断!海と山の360°パノラマが楽しめる低山ハイキング
神奈川県三浦半島の最高峰、大楠山(おおぐすやま)。海に囲まれた半島に位置するため、東京湾、房総半島、…
【群馬・根本山】自然のアスレチック!低山ながらスリルと登りごたえのある古道歩き
栃木・群馬両県の百名山に選定されている「根本山」は、古くから信仰の山として親しまれています。根本山へ…
【丹沢・不動尻】一面黄色の世界!早春のハイキングで「ミツマタ」を見に行こう!
春が来て登山・ハイキングに最適なシーズンとなりました。春ハイキングの楽しみのひとつに、山で出合うお花…
トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう
トレイルランと登山は、山を「走る」のか「歩く」のかという違いだけで、似たようなものだと思いがちですが…
【積雪期・谷川岳】雪山初心者におすすめ!日帰りで360度白銀の世界へ
「トマの耳」「オキの耳」の双耳峰(そうじほう)からなる「谷川岳(たにがわだけ)」は、日本百名山のひと…
【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山
気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがた…
【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)
皆野アルプスは破風山をはじめとしたいくつかのピークをつなぐ低山縦走コースです。最高峰の大前山でも65…
【三国山・鉄砲木ノ頭】富士山の絶景を満喫するハイキングコース
丹沢山地の西端、山中湖の近くに位置する「三国山(みくにやま)」は、神奈川県、山梨県、静岡県の3県にま…
【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山
関東屈指の人気の山域、丹沢の東側に位置する大山は、ピラミダルな美しい山容が特徴の山です。古くから山岳…
【鳥取・大山】初心者でも安心!自然と歴史満喫の夏山登山道、行者コースを歩く
鳥取県西部に位置する「大山(だいせん)」は、西日本最大級のブナ林や国の特別天然記念物ダイセンキャラボ…
【棒ノ折山・登山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山
奥武蔵エリアにある「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」は、渓流沿いのコースで沢歩き気分が楽しめる山です。ゴ…