登山を楽しむにあたっては防寒対策が欠かせません。防寒対策が十分でないと、山を楽しめないどころか、時には命にかかわるような事態を招いてしまうことも。でも、心配はいりません。基本をおさえたうえで必要な用具をしっかり揃えていけば、安心して山を楽しむことができます。まずは、「山で感じる寒さ」についてしっかりと理解することから始めていきましょう。
山の麓は暖かかったとしても、山の上は気温がぐっと冷えこみます。一般的に、標高が100m高くなると気温が0.6℃下がると言われていて、1,000m高くなると6℃mo下がることになります(富士山ともなると、夏の日中でも気温は10℃を下回ると言われています)。
最初に苦しい思いをしてしまうと、山のことが嫌いになってしまう可能性もあります。最初は難易度の低い山から登ってみて小さな成功体験を積み重ねていくのが楽しい登山に繋がります。
入門者は標高差が300〜600m、歩行時間が2〜5時間以内の山から始めるのがおすすめです。物足りないくらいかもしれませんが、まずは山歩きに慣れることが重要です。
太陽が射していればまだ良いですが、雲の状況や山の環境によってはなかなか陽射しを浴びることができないこともあります。油断は禁物、しっかりとした備えをしておくことが大切です。
夏でも用心が必要なわけですから、冬の登山に至っては言うまでもありませんね。厳冬期ともなると、氷点下10℃を下回るような時期もあります。十分な対策を行うことが必要です。
初春や秋は待ちでは気候も良く、ポカポカして気持ちいいものですが、登山となると話が変わります。山頂は気温が下がるどころか、山によっては雪が積もっていることもあります。
日が暮れると気温はさらに冷え込みますから「思っていた以上に日の入りが早かった」というようなことにならないよう注意しましょう。
春や秋は天候が不安定な日も多いので、雨にも注意が必要です。山では、にわか雨が急に振り出すことがあります。雨に濡れると体は急速に冷えていきます。「天気予報も晴れだし大丈夫」なんて油断してはいけませんよ。「雨に備える」ということは、防寒対策の基本なのです。
そして、湿度が高くジメジメした天候下では体が湿ってしまうので、山頂付近で風を浴びるようになると、体感気温が下がることもあります。雨だけでなく、霧や湿度にも意識を向けて防寒対策を行うことが重要です。
山を歩いているときは、体を動かしているので暖かく感じて汗もかいてしまいます。しかし、休憩やごはんを食べるために止まると途端に冷えていきます。登山では着たり脱いだりして柔軟に体温をコントロールできるような服装にすることが防寒対策の基本になります。
防寒のメインとなるアウターについても、内側に着こむ薄手の保温着、その上に着る風防性のある防寒着、さらにその上にさらっと羽織れるような防水性のあるレインウェア的な防寒着、というように重ねていくことがコツです。
タウンユースの防寒着の使い回しでは、体を動かしにくかったり、余計な飾りなどに枝などが引っ掛かってケガをしてしまうこともありますし、風を通しやすかったり水分を吸って蒸れてしまうような素材のものもありますから、登山用品店で専門のアウターを揃えることをおすすめします。
体の中で最も冷えや寒さを感じやすいのは「節(ふし)」や「先」。特に、露出しがちな首・顔・頭、そして手(手首)を小物で保護することが大切です。
頭は、汗をかいている時は特に、一番熱を発散してしまう場所なので、帽子をかぶってしっかり保温するようにしましょう。耳までガードしてくれる帽子であれば更に安心です。
手については、手首部分までしっかりと守ってくれるタイプの登山専用手袋を揃えましょう。専用の手袋であれば、手のひらや指まわりが滑りにくく、グリップが効くので安心です。
汗は体を冷やすので、インナーで汗をしっかり処理することも大切です。
汗を吸う素材のインナーを着るだけでは、そのままずっと湿った状態が続いてしまいますので、むしろ体を冷やしてしまうことになります。汗が直接肌に触れないように処理しなければなりません。
最近では、登山専用の高性能なインナー製品が登場してきています。肌に接する最初の一枚目に吸汗速乾性&撥水性がある特殊なインナーを着て、その上に二枚目として吸汗性のあるインナーを着ることで、一枚目が吸った汗を二枚目に吸わせ直し、肌に触れる一枚目のインナーを常にサラサラな状態に保つ、という製品です。
肌に触れるインナーは体温に最も影響を与えます。惜しまずに専用品を揃えましょう。
冬場や春先は、霜や残雪によって登山靴が冷えていきます。また、長時間の山行や路面がぬかるんでいるような状況での登山では、徐々に水が浸みてくることがあります。しっかりとした登山靴やソックスを揃えましょう。
汗による蒸れも足冷えを生みます。最近ではインナー同様、二枚履きすることで汗を肌から引き離してくれる高機能なアンダーソックスも販売されていますので上手に活用しましょう。
靴底やソックスに貼り付けるカイロもありますが、逆に汗が増えて冷えてしまったり低温火傷のおそれもあります。カイロは、脱いだ登山靴に入れて乾燥・脱臭・保温に使用する程度がよいでしょう(なお、カイロは、低温だと動作が鈍るスマホを保温するのにも効果的と言われています)。
冬の山歩きは誰もが寒いと理解できるので防寒対策も自ずとできるものです。登山をしていない人じゃないとわからないのが春や秋の防寒対策。山によっては夏も含まれます。
特に春はこれから夏に向けて温かくなるという認識なので、防寒対策がゆるくなるものです。街はあんなに暖かかったのに、なんでこんなに寒いんだ!と泣き叫びたくなります。
そうなると楽しい登山も「寒かった…」と苦い思い出になってしまいますね。そうならないためにも何故、防寒対策をしなくてはいけないのかを知っておくのが楽しい登山に繋がります。
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▼登山中の防寒に役立つアイテム
防寒対策のサポートしてくれるアイテムをご紹介いたします。保温ボトルは寒い山頂でお湯を沸かす時間を短縮するために、カップ麺用のお湯を入れたり、心温まるスープやミルクティーを入れたりするのもいいですね。
貼るホッカイロは首の付け根やわき下などの血管が太いところに貼っておくと効果的です。
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローすると喜びます。
東京青梅駅から歩いていける長渕丘陵は気軽なハイキングコース。なんだけど、あかぼっこからは奥多摩の山々が見渡せる素敵な場所です。年末年始でくっちゃりねっちゃりして、鈍った体を整えるきっかけになるのでおすすめです。多分1月に行く。 #里山トラベル pic.twitter.com/NyVksMhOA6
— 宮本 将弘 (@masa_yco) December 28, 2019
HIKES編集部です。「歩くを文化に暮らしを楽しむ」をコンセプトに自然の中を歩くことが暮らしの一部になるようなコンテンツを発信していきます。登山やハイキング、ロングトレイルを始め、地元の人しか知らない里山噺など、歩くことを軸にしたWEBメディアです。
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