安全で楽しい登山をするためには「天気」は重要なポイントです。一般の天気予報は街の予報であって山の天気とは異なります。山の天気は変わりやすく、悪天候になれば穏やかな山でも牙をむくことさえあります。
今回は、天気図が読めなくても山の天気をチェックする方法やWebやスマホで確認できるサービスをご紹介します。
天気予報では晴れとの予報だったのに、いざ山に登ると雨だったということはよくあることです。新聞やラジオ、お天気お姉さんは平地の天気予報をしているので、山の天気とは異なります。山の天気は平地よりも不安定になりやすく、天気の回復も遅いということを覚えておきましょう。
登山の天気による影響で過去に大きな遭難事故がありました。2009年7月16日北海道トムラウシ山でガイドを含む8名が低体温症で命を落とすという夏山史上最悪の遭難事故です。
「トムラウシ山遭難事故調査報告書」によると
低気圧の通過、その後の寒気流入による悪天が十分予測されていたが、登山計画に反映されなかった。 平野部向けの天気予報を高標高の山岳にも当てはめて出発の判断をした。高山では平野部より天気回復が遅れることを考慮していなかった。
【参考資料】
トムラウシ山遭難事故調査報告書(PDF)
プロのガイドが同行しているとはいえ、天気を読み間違えると大事故に繋がるという私たちにはショッキッングな出来事でした。二度とこのようなことが起こらないよう、一人ひとりが山のリスクについて学んでいかなければなりません。
平地からの風が山の斜面に沿って上り、空で冷えると雲を作り、雨を降らせることがあります。風の向きで天気がガラッと変わってしまうのはそのせいです。
日差しで山の斜面があたためられ、上昇気流が発生し、雷も生じやすくなります。発生しやすいのは気温の上がる午後です。
登山計画や登山願望よりも、そのときの天気状況を優先して引き返す判断も必要になってきます。
山の気温の目安としては「標高が100m上がれば気温は0.6℃下がります。」つまり、1,000mで6℃下がります。
例えば、標高約30mの京都市が25℃の場合、標高約1,000mの金剛山は約19℃、標高2,000m級の山なら13℃、3000m級の山なら7℃ということになります。これに風や雨などの気象条件が加わるとさらに体感温度は下がる可能性があります。
夏山登山だから薄着でも大丈夫、登っていたら暑くなるし、日帰りだし…と安易に考えてしまうのは危険です。夏でも山は寒いのです。高山は真冬並みに寒いです。山によっては雪が残ってるものです。
特に富士山やアルプス系の山に行くなら夏でも防寒具は必須アイテムになります。せっかく楽しみにしていた登山なのに、寒さに耐えられなくて引き返すなんてことがないよう気をつけましょう。
標高以外に温度に影響するのが風です。気温が0℃以上ある場所で風速が1mあたり体感温度は1℃下がり、気温がマイナスの場合風速1mあたり2℃ほど下がると言われています。
山では強い風が吹くことがよくあります。風速の目安としては、風速8~11mで葉のある低い木が揺れはじめる。風速11~14mで大枝が動く、傘はさしにくい。風速14~17mで風に向かって歩きにくい、樹木全体が揺れるといった感じです。
例えば標高0mの平地が30℃の場合、標高3,000mの場所で風速5mの風が吹くと、体感温度は7℃になります。これはあくまで単純計算です。冷え込む夕方や朝方はもっと寒く感じるかもしれませんし、防寒具をきちんと身に着けていればそんなに寒く感じないかもしれません。
汗でウエアが濡れて風に当たると、体温を奪い冷えて体感温度が下がります。汗冷えは下着で上手に対処しましょう。
山の天気予報サービスをいくつかご紹介いたします。平地の予報と同じくあくまでも予報ですので必ず当たるとは限りませんが、登山前のチェックは欠かさずしましょう。
「てんくら」の愛称で多くの登山家から親しまれている「てんきとくらす」は全国2,000以上の山が登録(2019年7月現在)されていて、高度ごとの風の強さと気温が表示されています。特に風の予報はかなりの確率で当たることで定評があります。
初心者にとってうれしいのが「登山指数」が分かりやすく記されている点です。天気予報は変わりやすいですが、日々更新されているも安心ですね。
【リンク】
「てんきとくらす」 日本気象株式会社
「ヤマテン」は「山の気象遭難をゼロにする」という信念のもとに立ち上げられた山の天気予報サイトです。一般登山者向けに毎日発信される全国18山域・59の山の天気を安心・安全・快適な登山のために受診できるサービスがあります。
山岳気象エキスパートによる解説や山岳気象予報士による気象リスクのコメントなどが人気で実績も折り紙付きです。
【リンク】
「山の天気予報」 株式会社ヤマテン
「tenki.jp 登山天気」は日本気象協会公式の登山天気アプリです。山の状態が一目で分かります。日本気象協会独自ロジックで算出された山指数や服装指数をチェックすれば登山準備に役立てることができます。
山の麓・登山口・山頂の天気が詳細に表記されるのでルートの選定に便利です。雨雲の動きや雷危険度が分かるから雨や雷を回避することができます。
【リンク】
「tenki.jp 登山天気」 日本気象協会
山の天気専用ではありませんが、情報量業界ナンバーワンの総合天気アプリです。
雨雲レーダーをリアルタイムでチェックでき、10分ごとの天気予報を知ることができます。レーダーの見方が分からなくても、「解説」ボタンをタップすれば、気象のプロによる詳しい解説コメントを見ることができます。
ユーザーが感じた天気を共有できるので、リアルな天気や気温のコメントはとても役に立ちます。
【リンク】
「ウェザーニュースタッチ」 ウェザーニューズ
山の天気による遭難事故はできる限りなくしたいですね。どういう判断軸を自分に持つかが大事なところで、例えば平地が雨や曇りなら山も高確率で雨、もしくは曇りなので行かない、山の天気サービスで降水確率40〜50%なら行かない…など、少し大袈裟かもしれませんが不安な気持ちで登山をするよりも思いきって計画を変更することも大事なのではないでしょうか。
晴れてる場合でも夏山はとくに急激に雨雲が発達するので、15時までには目的の山小屋に到着するか日帰りなら下山できる登山計画をたてておきましょう。
▼山の天気知識を深める本
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローすると喜びます。
東京青梅駅から歩いていける長渕丘陵は気軽なハイキングコース。なんだけど、あかぼっこからは奥多摩の山々が見渡せる素敵な場所です。年末年始でくっちゃりねっちゃりして、鈍った体を整えるきっかけになるのでおすすめです。多分1月に行く。 #里山トラベル pic.twitter.com/NyVksMhOA6
— 宮本 将弘 (@masa_yco) December 28, 2019
HIKES編集部です。「歩くを文化に暮らしを楽しむ」をコンセプトに自然の中を歩くことが暮らしの一部になるようなコンテンツを発信していきます。登山やハイキング、ロングトレイルを始め、地元の人しか知らない里山噺など、歩くことを軸にしたWEBメディアです。
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