登山は多くのエネルギーを消費するため、食事だけでなく「行動食」が欠かせません。そのため行動食を持参する必要があります。
行動食はエネルギーを補給することを念頭に置きながら、食べやすさも重視したいものです。今回は行動食の重要性や選ぶポイント、食べるのが楽しみになる行動食のアレンジ法をご紹介したいと思います。
登山は有酸素運動の代表格であり、たくさんのカロリーを消費します。しかも、ジョギングとは違って「重量を背負った状態で行う有酸素運動」なのでその消費量はかなりのものです。行動食が必要な理由を計算式から考えてみましょう。
2006年に厚生労働省が策定したMETS(運動強度)を利用した消費カロリーの計算法をご紹介します。
カロリー消費量(Kcal)=1.05×体重(kg)×METS係数×運動時間
登山におけるMETS係数は2種類に分けられます。
①METS係数7 ➝14.1kg以下の荷物を背負っての登山
②METS係数8 ➝14.1kg以上の荷物を背負っての登山
例えば60kgの男性が10kgのザックを背負って6時間かけて山に登るとすると…
1.05×60(kg)×METS係数7×6(時間)=2,646Kcal
吉野家の牛丼の並盛なら約4杯分、マクドナルドビッグマックなら約5つ分のエネルギーが消費される計算です。これに基礎代謝を含めるとさらに消費カロリーは増えることになります。
「シャリバテ」という言葉をご存じですか?登山用語としては、シャリ(飯)が足りなくてバテることを指します。医学的には血糖値が下がって力が入らなくなることを指します。山頂でのお昼ご飯を楽しみなあまりに、空腹を我慢しながら上り続けるような場合に発症しやすいです。
シャリバテになると動けなくなり、一人で下山できなくなるほど危険です。体力に自信のある人でも必ず行動食は持っていきましょう。
シャリバテにならないためにこまめな栄養補給をしましょう。できれば30分ごとに何か口に放り込んでおくのがいいですね。水分補給と同時に行動食を少し食べるのも食べ忘れ防止にいいかもしれません。行動食は火を通さずに簡単に食べられるものがいいですね。
登山は多くのエネルギーを消費するので、「カロリーを補給する」ことを念頭に置いて行動食を選ぶことができます。つまり、糖質、脂質、たんぱく質を含む高カロリーな食べ物です。言い換えればノンカロリーのダイエット向きの食べ物は登山には不向きです。
チョコレートやキャンディーなどの糖質は熱量を有し、脳や神経を動かすエネルギー源になります。アーモンドやカシューナッツなどの脂質は糖質よりも高い熱量を有しています。
行動食に最適なおやつ
軽くて持ち運びやすく高エネルギーのミックスナッツは総合的に行動食にピッタリです!ピーナッツやアーモンド、ドライフルーツなど混ぜて自分好みにアレンジしましょう。
柿の種の糖質とピーナッツの脂質の素晴らしいマッチング。
脂質が多く高カロリーで、価格もお手頃なのが人気です。
行動食はできるだけ水分を含むものを用意しましょう。疲れている時は水分が多いものの方が食べやすいものです。登山中に水を飲み切ってしまうと死活問題になるので無駄に水分補給をしなくてすむような水分を含む食品を選ぶのがよいですよ。
パサパサした食品、塩分の多いもの、甘すぎるものはかえって喉が渇いてしまいますのでご注意を。ゼリー状飲料やしっとりとしたソーセージ、ようかんなどが食べやすいです。
登山上級者に人気なのが以外にも「生の野菜に塩」です。つぶれないように気を付けながら持って行かなければいけませんが、暑い時に食べるきゅうりやトマトに塩を付けて食べるだけで激ウマです。お菓子に飽きた人におすすめです。
バナナは高カロリーでしかもお手軽に持って行けますが、オレンジなどの酸味も疲れた身体に染みわたる美味しさです。果物の缶詰は重量がありますが、汁まで飲み干せるのでバテた体には格別です。
夏の暑いときは生ものは傷みやすいので季節に合わせたものを選ぶのもコツです。
行動食の目的はエネルギー補給なのですが、美味しくて食べるのが楽しみになるものだと嬉しいですね。小分けにして色々な種類の行動食を持っていけば食べ比べができますし、飽きずに食べきることができます。
小分けにした行動食はジップロックなど中身が濡れない保存袋にまとめて入れるのがおすすめです。少し大きくなりますが、中身が押しつぶされたくない場合はタッパーに入れるのも良いですよ。
小さな飴やラムネならポッケに入れることで、ザックを下ろさなくても食べ歩くこともできます。
密かにブームになっているのが「ポテトチップス」です。袋がかさばったり、気圧の影響で袋がパンパンになったりしますが、軽くて、高カロリーなので日帰り登山なら最強の行動食になるかもしれません。
普段太るのを懸念してお菓子を食べることを我慢している人も、ここぞとばかりにあれもこれもとたくさん持って行かないよう、必要な量を見極め選んで持って行きましょう。
お湯があればメニューの幅が広がります。ガスとコッヘルがあればお湯を沸かすことができますし、保温容器にお湯を入れて持って行けば火を使わずに温かいものを取り入れることができます。
フリーズドライのおしるこ、卵スープ、春雨スープ、みそ汁などは美味で腹持ちがいいので温かい行動食として打ってつけです。最近ではカレーやシチュー、牛丼、中華丼、親子丼まで登場しています。
粉末のインスタントコーヒー、ココア、コーンスープも体を温め、気もちもホッとさせてくれる飲み物です。
カップラーメンは高カロリーで塩分もあり、しかも山で食べると格別に美味しいです。山で残り汁を捨てることはNGなので、最後はおにぎりを投入し雑炊にすることもできてしまいます。
日帰り登山なら気にせずに食べたいものを選んで持って行くと、食べる楽しみにも繋がります。1泊する登山なら計画的な行動食が必要です。荷物を少しでも減らしたいので、小さくて軽いものを選びコンパクトに袋に入れておきましょう。
遭難したときの非常食代わりにもなるのと、山仲間の誰かがエネルギー切れしたときに分けることもできるので、余裕があれば少し多目に持ってくのも良いですね。
疲れたときに一口食べるだけでも体が回復する行動食は、登山をする上で必要不可欠なものなのです。
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— 宮本 将弘 (@masa_yco) December 28, 2019
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