日本百名山の一つに数えられる群馬県の赤城山(あかぎやま)は、大沼や小沼などのカルデラ湖を囲む周辺の山の総称です。都心から2時間ほどでアクセスでき、気軽なトレッキングから本格的な登山まで豊富なルートが整備されています。
歩きやすくてバラエティに富んだコースは初心者にもおすすめです。この記事では赤城山のルートや難易度、アクセス、実際に歩いてみた感想を紹介します。
赤城山は群馬県の前橋市、桐生市、みどり市、沼田市、渋川市、利根郡昭和村の5市1村にまたがる広い山域です。榛名山、妙義山とあわせた上毛三山のひとつに数えられ、群馬県民にとって親しみのある山です。
実は「赤城山」という名前のピークは存在せず、標高1,828mの黒檜山を主峰として、大沼(おの)や小沼(この)を囲む外輪山を総称して赤城山と呼んでいます。黒檜山のほかにもアニメ「ヤマノススメ サードシーズン」に登場する地蔵岳など、いくつものピークがあり、豊富なルートがあることが特徴的です。
また、大沼ではボートやワカサギ釣りもでき、周辺にはキャンプ場も。アウトドアアクティビティの楽しみが詰まった玉手箱のような場所です。
赤城山は日本百名山のひとつですが、主峰の黒檜山でも標高差は500mもないので初心者でも登れます。登山道はきれいに整備され、ガレ場にもロープが貼られているので道迷いの心配はありません。
技術レベルは低めですが、黒檜山登山口からはガレ場の急な登りが続くため、ペース配分には気を付けましょう。登り詰めてからの大沼の景色を眺めながらの駒ヶ岳までの稜線歩きは気持ちいいですよ。
また、登り始めからすでに標高1400m以上あるので気温は下界より10度ほど低いです。霧も出やすいので防寒着とレインウェアは必ず持ちましょう。
赤城山登山で一番ポピュラーなコース。赤城山の主峰、黒檜山とその隣の駒ヶ岳を巡り、赤城山ビジターセンターへ戻ります。所要時間は4時間15分。岩場の登山道は険しいですが、黒檜山からの眺望は最高です。
大沼の南西側にある地蔵岳と見晴山を巡る、所要時間2時間45分のコース。地蔵岳からの絶景と、ツツジの群生地やパワースポット旧赤城神社など見ごたえの多いコースです。
「ミニ尾瀬」とも呼ばれる覚満淵の湿原を散策し小沼方面を巡るお手軽なハイキングコース。覚満淵遊歩道から小沼方面へ、八丁峠から第一スキー場に下る周回コースで、所要時間は2時間20分。プラス40分ほどで小沼を一周するのもおすすめです。
赤城山の主峰、黒檜山から駒ヶ岳への縦走コースを実際に歩いてきました。
JR前橋駅からバスで赤城山ビジターセンターへ。平日は直通バスがなく、途中の富士見温泉から赤城山ビジターセンター行きに乗り換える必要があります。
私が訪れたのは11月だったのでバスは冬ダイヤで朝の便は1本だけでした。毎年11月上旬から4月下旬までは冬ダイヤとなるので関越交通バスの時刻表を確認してみてください。
私は「赤城山ビジターセンター」で下車しましたが、黒檜山登山口へは「あかぎ広場前」のほうが近いです。
大沼沿いの車道を黒檜山登山口方面へ歩いていくと、啄木鳥橋(きつつきばし)という赤い橋が見えてきます。その橋を渡った先にあるのは赤城姫が祀られている赤城山神社。特に子宝や安産、縁結びなど女性にご利益があるとのこと。登山前に安全祈願を兼ねてお参りしました。
2021年11月時点で啄木鳥橋は老朽化のため当面の間は通行止めとなっています。参拝する場合は北側から回ってください。
赤城山神社から再び車道に出て進むと、車道の脇に黒檜山登山口があります。ここが登山のスタート地点です。見ての通り、いきなり岩の多い急登が始まるので、息が上がらないようゆっくりと登ります。
ちなみに、黒檜山登山口からのルートは下りの利用が推奨されていません。傾斜がきついので登りに利用したくないと思うかもしれませんが、岩が多くて急峻な道を下るのは危険です。特に初心者は下りに利用するのは避けてください。
15分ほど登ると尾根に出て大沼や地蔵岳方面の景色が開けますが、相変わらず急登は続きます。この辺りから突き出た岩が多くなり、どこに足を置くか迷いながらも慎重に進みました。
尾根に出るとすぐ「猫岩」の標識があります。登山道の脇の切れ落ちた下に猫の顔に見える岸壁があるのですが、残念ながら登山道からは見えません。しかし、この猫岩付近は富士山が望めるスポットでもあります。天候がよければ地蔵岳の左隣に富士山が望めますよ。この日もうっすらとですが富士山の頭が見られました。
駒ヶ岳分岐を黒檜山方面へ。分岐から山頂まではほんの少し歩くだけ。登山開始から1時間30分で黒檜山山頂に到着しました!
山頂はまばらな木に囲まれていますがいい眺めです。ただ、赤城山の標識には「絶景スポット2分」の文字が。せっかくなので視界が開けるポイントまで行ってみます。
山頂から2分で行ける展望台からは大沼、小沼、赤城の山々、遠くに榛名山、浅間山、谷川岳などが見渡せます。紅葉のピークは10月上旬~11月上旬頃なので見頃のピークは過ぎていたものの、まだ少しだけ残った紅葉が見られました。
展望台のある場所は広くて昼食をとるにも最適な場所です。この日は風が強かったので景色を満喫したらすぐ山頂まで戻りました。
山頂で休憩後、次のピーク駒ヶ岳へ向けて出発。駒ヶ岳分岐を駒ヶ岳方面へ向かうとすぐに御黒檜大神の鳥居があります。ここも展望がいい場所です。
ここから大ダルミまでは一気に下りの道となります。整備された木段ですが、まわりの景色を見渡していると転ぶ危険もあるので慎重に下りましょう。
私の今までの経験上、登山道の木段は歩幅に合わないところが多いのですが、駒ヶ岳付近の木段は広すぎず狭すぎず歩幅に合った木段で非常に歩きやすかったです。
大ダルミまで下りきり、登り返しが始まると15分ほどで駒ヶ岳山頂(標高1685m)に到着です。駒ヶ岳山頂以降は小沼方面の眺めが良く、気持ちのいい尾根歩きです。遠くに見える小沼の湖面がキラキラと輝いてキレイでした。
駒ヶ岳山頂空の尾根歩きが終わったら、鉄階段を使って駒ヶ岳登山口へと下ります。手すりのついた階段なので危険ではありませんが、1人分の幅しかないのですれ違うのは大変そうです。鉄階段も木段も雨や雪で濡れると滑りやすいので注意が必要です。
駒ヶ岳から40分ほどで駒ヶ岳登山口に到着しました。ここから車道を大沼方面へ歩けばすぐにあかぎ広場バス停(おのこ駐車場向かい)です。下山時点で帰りのバスの時間まで余裕があったので、反対方向へ歩き「覚満淵(かくまんぶち)」を散策することにしました。
赤城山ビジターセンター近くにある覚満淵は周囲1kmほどの湿原で「小尾瀬」と呼ばれ、観光客にも人気です。湿原を一周できる木道が整備されていて、四季折々の自然の景色が楽しめます。
上記の写真に写っているどっしりとした山が、先ほど下山した駒ヶ岳です。30~40分ほどあれば1周できるので、時間があったらぜひ立ち寄ってみてくださいね。
11月の雪が降る直前の赤城山は、夏場とは違った表情を見せてくれました。本格的な登山道もあれば、気軽なトレッキングコースもあり、季節を問わず誰でも楽しめるのが赤城山の魅力です。
今回は主峰の黒檜山へ登りましたが、今回行けなかった地蔵岳方面や小沼などにも登ってみたいです。都心からもアクセスが良く、多彩な楽しみ方ができる赤城山にぜひ登ってみてくださいね。
山に恋するフリーライター。運動嫌いだったのに、たまたまテレビで見た岩手山に一目惚れして登山を始める。ソロ登山の魅力にハマり、低山ハイキングからテント泊縦走まで自分のスタイルで楽しんでいる。
登山で訪れた土地の郷土料理や地酒、クラフトビールを楽しむのが至福の時間。地方の伝統工芸品や民芸品をアウトドアで使うのが好き。
登山に適したカメラは一眼レフ、ミラーレス?初心者におすすめのカメラと選び方
山の上からの絶景や自然の素敵な景色を見たとき、この感動を写真に切り取ってみたいと思ったことはありませ…
登山靴の種類と選び方。日帰り登山や富士山に最適な登山靴をご紹介!
登山を始めるきっかけは色々ありますが、まわりの様子を見ると「富士山」や「屋久島」から入る方が多いよう…
グループ登山は行動の幅を広げるきっかけに。グループのメリットと注意点
登山を始めたいけど仲間がいない。そんなお悩みありませんか。旅行会社が主催する初心者向けのツアー、ビギ…
美の山(蓑山)ハイキング。梅雨に歩きたいアジサイの名所!聖神社・和銅遺跡を巡る
6~7月にかけての時期は、本格的な夏山シーズンを控えワクワクする時期ですが、梅雨で雨の日が多いためな…
登山で役立つエマージェンシーキット。必要な理由と準備すること
警察庁が発表する『山岳遭難の概況』によると登山中の事故やけがなど、遭難者は年々増えているそうです。遭…
初心者にやさしい関東の日帰り登山ルート。計画立てて山へ行こう!
「体力がないから山に登る自信ない…」「遭難とか怖そう…」など、登山は未経験者からすると距離が遠いイメ…
【武甲山・登山】採掘跡が可哀想な山?歴史を感じながら秩父の名峰を味わう日帰り登山
埼玉県秩父市にある武甲山(ぶこうさん)は奥武蔵の最高峰であり、地元の人々に古くから信仰されてきた山で…
瑞牆山へ1泊2日のテント泊登山。ゴロゴロ巨岩とヒヤリとする絶壁の大展望に感動!
秩父山系の西側に位置する瑞牆山(みずがきやま)は、何十もの岩が組み合わさる不思議な形をした山です。山…
【明神ヶ岳登山】結構キツいは本当?富士山を眺めながら清々しい笹の稜線を歩く縦走登山
明神ヶ岳は箱根の外輪山のひとつで、富士山、大涌谷、相模湾を望む絶景が楽しめる山です。明神ヶ岳の隣に位…
登山用ガスバーナーどう選ぶ?バーナーの種類と選ぶポイント
登山に慣れてくるとやってみたくなる「山ごはん」。山でお湯を沸かしたり、調理したりするにはガスバーナー…
【那須岳(茶臼岳・朝日岳)】火山のダイナミックな光景と紅葉をロープウェイを利用して楽しむ日帰り登山
那須岳(なすだけ)は栃木県北部に位置する那須連山、特に「茶臼岳(ちゃうすだけ)」「朝日岳(あさひだけ…
【岩木山】青森県の最高峰を九合目からお手軽に登頂
津軽平野の南西にそびえる岩木山は、青森県の最高峰で日本百名山に選定されています。その美しい円錐型の山…
【男体山】中禅寺湖を振り返りながら奥日光の霊山を登る日帰り登山
男体山は中禅寺湖の北側にそびえる、美しい円錐形の山です。古来、日光二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ、…
【木曽駒ヶ岳】初心者でもロープウェイで中央アルプス最高峰へ!千畳敷カールの絶景が待つ日帰り登山
中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)は標高3000mに迫る標高がありながら、ロープウェイ…
【大台ヶ原】豊かな自然と見どころ満載の東大台ハイキングコースを歩く
奈良県と三重県の県境に位置する「大台ヶ原(おおだいがはら)」は、日本百名山をはじめ、日本百景、日本の…
【奥多摩・御前山】奥多摩湖から始まる急登の連続!達成感を味わえる日帰り登山
大岳山(おおだけさん、おおたけさん)、三頭山(みとうさん)とともに奥多摩三山に数えられる「御前山(ご…
【塔ノ岳・登山】首都圏近郊の好展望の山!丹沢を代表する人気コース表尾根を歩く
表丹沢の「塔ノ岳(とうのだけ)」は、展望の良さと都心からのアクセスのしやすさで人気の山です。標高は1…
【檜洞丸】西丹沢の秘境を巡る日帰り登山!アクセスと難易度、絶景ポイントを紹介
檜洞丸(ひのきぼらまる)は西丹沢の山深さが感じられる静かな山で、「西丹沢の盟主」とも呼ばれています。…
【袈裟丸山】花見登山を満喫!山肌をピンクに彩るアカヤシオの名山を歩く
栃木・群馬県境の足尾山地に属する袈裟丸山(けさまるやま)は、アカヤシオの名所として名高い山で、シーズ…
【大楠山・登山】三浦半島を横断!海と山の360°パノラマが楽しめる低山ハイキング
神奈川県三浦半島の最高峰、大楠山(おおぐすやま)。海に囲まれた半島に位置するため、東京湾、房総半島、…
【群馬・根本山】自然のアスレチック!低山ながらスリルと登りごたえのある古道歩き
栃木・群馬両県の百名山に選定されている「根本山」は、古くから信仰の山として親しまれています。根本山へ…
【丹沢・不動尻】一面黄色の世界!早春のハイキングで「ミツマタ」を見に行こう!
春が来て登山・ハイキングに最適なシーズンとなりました。春ハイキングの楽しみのひとつに、山で出合うお花…
トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう
トレイルランと登山は、山を「走る」のか「歩く」のかという違いだけで、似たようなものだと思いがちですが…
【積雪期・谷川岳】雪山初心者におすすめ!日帰りで360度白銀の世界へ
「トマの耳」「オキの耳」の双耳峰(そうじほう)からなる「谷川岳(たにがわだけ)」は、日本百名山のひと…
【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山
気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがた…
【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)
皆野アルプスは破風山をはじめとしたいくつかのピークをつなぐ低山縦走コースです。最高峰の大前山でも65…
【三国山・鉄砲木ノ頭】富士山の絶景を満喫するハイキングコース
丹沢山地の西端、山中湖の近くに位置する「三国山(みくにやま)」は、神奈川県、山梨県、静岡県の3県にま…
【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山
関東屈指の人気の山域、丹沢の東側に位置する大山は、ピラミダルな美しい山容が特徴の山です。古くから山岳…
【鳥取・大山】初心者でも安心!自然と歴史満喫の夏山登山道、行者コースを歩く
鳥取県西部に位置する「大山(だいせん)」は、西日本最大級のブナ林や国の特別天然記念物ダイセンキャラボ…
【棒ノ折山・登山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山
奥武蔵エリアにある「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」は、渓流沿いのコースで沢歩き気分が楽しめる山です。ゴ…