山にゴミを捨てる人はいないと思いますが、登山で出たゴミは家まで持ち帰るのが一般的なマナーです。私たちがこの先もずっと登山を楽しむためには、一人ひとりがゴミのマナーを守っていかなければいけません。
では、ゴミをなるべく出さず、快適に家まで持ち帰るにはどのような工夫ができるのでしょうか。この記事では、山でのゴミのマナーと、出たゴミを持ち帰るための便利なアイテムを紹介します。
街中であれば飲み終わったペットボトルをコンビニや公園のゴミ箱に簡単に捨てられます。しかし、山の中ではゴミを捨てたいと思っても、登山道や山小屋にゴミ箱が設置されていることはほとんどありません。例え山小屋にゴミ箱があったとしても山小屋の外から持ち込んだゴミを捨てるのもマナー違反になります。
車両が入ることができない山ではゴミの回収や清掃をすべて人力に頼るほかなく、集めたゴミを山のふもとまで運ぶにはヘリコプターが必要です。登山者が出したゴミによって膨大な労力と費用がかかってしまうのです。
こうした負担をなくすため、登山者は自分が出したゴミはすべて持ち帰ります。もし登山者が「ちょっとだけなら・・・」とゴミのポイ捨てを続けたなら、山はすぐにゴミだらけになり、植生や生態系に影響を与えます。最悪の場合、入山が規制されることもあり得るのです。
登山で出たゴミはどこか1か所にまとめておかないと、ザックの中を汚してしまうおそれがあります。ゴミが出るたび、ウェアのポケットやザックの外付けのポケットなど、あちこちに入れていてはゴミが散らかるばかりです。
特に小さなアメの袋やティッシュなどは、気づかないうちにポケットから落ちてしまい、「うっかりゴミ」になりかねません。また、食事で出た水気の多いゴミはまとめて密閉しておかないと、液体が漏れてザックの中が濡れたりニオイがついたりすることも。
このように、ゴミをまとめず無造作にザックに入れると、他の道具を汚してしまうおそれがあります。ゴミ袋を用意しておき、出たゴミをどこに入れておくかを事前に決めておくと、下山するまでザックをきれいに使えます。
登山で持ち帰るのに一番困るのは生ゴミです。汁が漏れたらニオイも気になりますし、ダウンジャケットやシュラフなど、濡れては困るものがザックに入っている場合は特に注意しなければいけません。
水気の多い生ゴミを持ち帰るには、密封性の高いゴミ袋の利用がおすすめです。ジップロックのようにチャックが付いて液体がもれないポリ袋を何枚か用意しておき、一食ごとに出たゴミをジップロックで密閉してしまえば水もれの心配なく生ゴミを持ち帰れます。
また、アウトドア用の防水ケースを利用する方法もあります。二重チャックで防水性が高く、しかもケース自体の素材がしっかりしていて防臭性も高い商品もありますので、生ゴミのニオイが気になる方は活用してみてください。
使用済みのティッシュやお菓子の包装など、水気のないゴミなら密閉しなくてもいいので色々な袋をゴミ袋として使えます。
100円ショップでも売っている携帯ゴミ袋は、小さいサイズのビニール袋が10~20枚ほど収納されており、ちょっとしたゴミが出たときに便利です。
食材や行動食はあらかじめパッケージを外し、ジップロックに移し替えて持っていけば、余計なゴミを減らせますし、軽量化にもなります。そして食べ終わったあとのジップロックをゴミ袋にすればゴミも減らせて一石二鳥です。
ゴミ袋はサブバッグやサコッシュの中、ザックの外付けポケットなど、すぐに取り出せる場所に準備しておいて、必要になったときにサッと取り出せるようにしましょう。
ゴミ袋を最終的に1か所にまとめるとき、ガベッジバッグがあればスマートに持ち運べます。ガベッジバッグとは、生ゴミや携帯トイレなどのゴミを持ち帰るための専用バッグのことです。
使い捨てのビニール袋やジップロックに比べると高価ですが、大容量で防水性と機密性があり洗って何度も使えます。透明ではないため一見ゴミ袋には見えず、ザックに外付けしても見苦しい印象を与えません。ポリ袋のようにカシャカシャと音がしないので山小屋の中でも音を気にせずゴミをまとめられます。
使い方はバッグ内にゴミをまとめて入れ、開口部分をクルクルと折り返してバックルで留めるだけ。家に帰ってからゴミを処分するときもガベッジバッグにゴミを集約しておけば分別も楽にできます。
ゴミ袋といえば透明なポリ袋や、コンビニのレジ袋のようなものを想像しますが、ゴミ袋も登山をするうえで欠かせないアイテムのひとつ。せっかくなら、お洒落なものを選んでみてはいかがでしょうか。
透明や白のゴミ袋だけでは味気ないですが、お洒落な柄のゴミ袋を使えば気分も上がります。チャック付きポリ袋にもかわいいデザインのものが選べますし、2020年7月からのレジ袋有料化によって、軽くてコンパクトなエコバッグの市場も拡大しています。
山でゴミをすべて持ち帰るのは登山者が守らなければいけないマナーです。最初からゴミになるものを極力持っていかないこと、ゴミを家まで持ち帰るためのゴミ袋選びを工夫することで、快適に登山を楽しみましょう。
登山では行動食や山ごはんなどでどうしてもゴミが出てしまいます。これは仕方のないことでもありますが、できるか限り増やさない努力も必要です、例えば、行動食は一つ一つ袋に入れずにまとめて入れたり、山ごはんでは汁が多くならないよう水を少なめにするなど、少しだけ意識することでゴミを減らすことができるのです。
自然やそこに住む動物たちのことを考え、豊かな山を汚さないように登山を楽しみましょう。
こちらの4コママンガでは山のゴミ問題について書いてますのでチェックください。
【こちらもチェック!】
【登山マンガ】登山のゴミ問題。私たちにできること
▼ゴミのことを考えるきかっけになる本
▼登山で使えるゴミ袋
▼HIKES編集長の里山トラベル
HIKES編集長の山歩きをTwitterでも発信しています。山歩きをしながら地域の歴史を巡る里山トラベル活動をしています。フォローされると喜びます。
おはようございます、昨日は約一年ぶりぐらいの登山、棒ノ嶺へ行って来ました。リハビリぐらいに考えてたけど、思った以上に体力が落ちててぐったりでした。山歩きの回数増やしていく。 pic.twitter.com/VKNMpE4yXX
— 宮本将弘 | masahiro miyamoto (@masa_yco) July 18, 2021
HIKES編集部です。「歩くを文化に暮らしを楽しむ」をコンセプトに自然の中を歩くことが暮らしの一部になるようなコンテンツを発信していきます。登山やハイキング、ロングトレイルを始め、地元の人しか知らない里山噺など、歩くことを軸にしたWEBメディアです。
登山で疲れないためのコツは?歩き方や回復方法、疲れない体作るをご紹介
登山は楽しい!でも帰ってからの疲れが中々とれないということはよくありますね。疲れるから登山に行きたく…
登山に適したカメラは一眼レフ、ミラーレス?初心者におすすめのカメラと選び方
山の上からの絶景や自然の素敵な景色を見たとき、この感動を写真に切り取ってみたいと思ったことはありませ…
登山で役立つエマージェンシーキット。必要な理由と準備すること
警察庁が発表する『山岳遭難の概況』によると登山中の事故やけがなど、遭難者は年々増えているそうです。遭…
【赤城山(黒檜山)】大沼を眼下にバラエティ豊かなコースを歩く、初心者におすすめの百名山
日本百名山の一つに数えられる群馬県の赤城山(あかぎやま)は、大沼や小沼などのカルデラ湖を囲む周辺の山…
雨の日の登山は中止にすべき?雨の日登山の危険性と雨対策
山に行く計画を山仲間と立てたのに明日の天気が雨、もしくは曇り雨などはっきりしない場合みなさんはそれで…
登山初心者はまず何からやるべき?揃えておきたい装備と歩きやすい山
「登山を始めたいけど何から始めたらいいのかな?」と誰もがはじめに抱く悩みですね。登山は街の環境とは異…
【弘法山公園】手軽さNo.1の駅チカ低山ハイキング!富士山の眺望と温泉を楽しむ日帰り登山
弘法山公園は、丹沢山塊の南側にある標高235mの弘法山とその周辺の低山の総称です。 関東圏から日帰り…
登山におけるコロナ対策はマスクだけじゃない!コロナ禍の登山に持っていくべきアイテムとは?
コロナ禍で普段の生活様式が変化しましたが、登山においても以前と変わったことが多いのではないでしょうか…
登山用ガスバーナーどう選ぶ?バーナーの種類と選ぶポイント
登山に慣れてくるとやってみたくなる「山ごはん」。山でお湯を沸かしたり、調理したりするにはガスバーナー…
趣味の一つに「登山」という選択。登山の魅力や気になる費用
人それぞれ好みはあるけれど、趣味の一つの選択に「登山」を入れるのはいかがでしょうか?というお話です。…
【那須岳(茶臼岳・朝日岳)】火山のダイナミックな光景と紅葉をロープウェイを利用して楽しむ日帰り登山
那須岳(なすだけ)は栃木県北部に位置する那須連山、特に「茶臼岳(ちゃうすだけ)」「朝日岳(あさひだけ…
【岩木山】青森県の最高峰を九合目からお手軽に登頂
津軽平野の南西にそびえる岩木山は、青森県の最高峰で日本百名山に選定されています。その美しい円錐型の山…
【男体山】中禅寺湖を振り返りながら奥日光の霊山を登る日帰り登山
男体山は中禅寺湖の北側にそびえる、美しい円錐形の山です。古来、日光二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ、…
【木曽駒ヶ岳】初心者でもロープウェイで中央アルプス最高峰へ!千畳敷カールの絶景が待つ日帰り登山
中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)は標高3000mに迫る標高がありながら、ロープウェイ…
【大台ヶ原】豊かな自然と見どころ満載の東大台ハイキングコースを歩く
奈良県と三重県の県境に位置する「大台ヶ原(おおだいがはら)」は、日本百名山をはじめ、日本百景、日本の…
【奥多摩・御前山】奥多摩湖から始まる急登の連続!達成感を味わえる日帰り登山
大岳山(おおだけさん、おおたけさん)、三頭山(みとうさん)とともに奥多摩三山に数えられる「御前山(ご…
【塔ノ岳・登山】首都圏近郊の好展望の山!丹沢を代表する人気コース表尾根を歩く
表丹沢の「塔ノ岳(とうのだけ)」は、展望の良さと都心からのアクセスのしやすさで人気の山です。標高は1…
【檜洞丸】西丹沢の秘境を巡る日帰り登山!アクセスと難易度、絶景ポイントを紹介
檜洞丸(ひのきぼらまる)は西丹沢の山深さが感じられる静かな山で、「西丹沢の盟主」とも呼ばれています。…
【袈裟丸山】花見登山を満喫!山肌をピンクに彩るアカヤシオの名山を歩く
栃木・群馬県境の足尾山地に属する袈裟丸山(けさまるやま)は、アカヤシオの名所として名高い山で、シーズ…
【大楠山・登山】三浦半島を横断!海と山の360°パノラマが楽しめる低山ハイキング
神奈川県三浦半島の最高峰、大楠山(おおぐすやま)。海に囲まれた半島に位置するため、東京湾、房総半島、…
【群馬・根本山】自然のアスレチック!低山ながらスリルと登りごたえのある古道歩き
栃木・群馬両県の百名山に選定されている「根本山」は、古くから信仰の山として親しまれています。根本山へ…
【丹沢・不動尻】一面黄色の世界!早春のハイキングで「ミツマタ」を見に行こう!
春が来て登山・ハイキングに最適なシーズンとなりました。春ハイキングの楽しみのひとつに、山で出合うお花…
トレイルランと登山の違いを解説!自分に合った山のスタイルを見つけよう
トレイルランと登山は、山を「走る」のか「歩く」のかという違いだけで、似たようなものだと思いがちですが…
【積雪期・谷川岳】雪山初心者におすすめ!日帰りで360度白銀の世界へ
「トマの耳」「オキの耳」の双耳峰(そうじほう)からなる「谷川岳(たにがわだけ)」は、日本百名山のひと…
【伊豆ヶ岳】奥武蔵屈指の人気コースを歩く日帰り縦走登山
気軽にハイキングが楽しめる低山の多い奥武蔵エリア。その中でも一番人気といわれるのが伊豆ヶ岳(いずがた…
【皆野アルプス】身近な里山のアルプスを縦走する日帰り登山(破風山・前原山・大前山・天狗山)
皆野アルプスは破風山をはじめとしたいくつかのピークをつなぐ低山縦走コースです。最高峰の大前山でも65…
【三国山・鉄砲木ノ頭】富士山の絶景を満喫するハイキングコース
丹沢山地の西端、山中湖の近くに位置する「三国山(みくにやま)」は、神奈川県、山梨県、静岡県の3県にま…
【丹沢・大山】都心からアクセス抜群!大山阿夫利神社と紅葉スポットを散策する日帰り登山
関東屈指の人気の山域、丹沢の東側に位置する大山は、ピラミダルな美しい山容が特徴の山です。古くから山岳…
【鳥取・大山】初心者でも安心!自然と歴史満喫の夏山登山道、行者コースを歩く
鳥取県西部に位置する「大山(だいせん)」は、西日本最大級のブナ林や国の特別天然記念物ダイセンキャラボ…
【棒ノ折山・登山】「鎌倉殿の13人」畠山重忠ゆかりの山!渓谷を沢登り気分で楽しむ日帰り登山
奥武蔵エリアにある「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」は、渓流沿いのコースで沢歩き気分が楽しめる山です。ゴ…